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記憶の記録-手術日-

声帯結節の手術

朝、音楽ばかり聴いてた。
音が止まると一気になんだか無理になる。
スタブリ聴いて、音域狭まらないように取り戻すんだって
目標確認するかのように。

オペについてくれる先生方、全員が挨拶に来られた。
丁寧すぎて驚く。


毎度先生が聞いてくれる。


「不安なことありますか」


緊張もライブほどじゃないでしょーって笑かせてくれるけど、
緊張のジャンルが違う。
大丈夫だと信じつつ、先生方が去った後、もう我慢限界。


涙、次にきた看護師さんに見られちゃった。

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手術室まで歩いて行く。


手術代のベッドに自分で寝転がる


髪のキャップ

弾性ストッキング(エコノミー症候群予防みたい)


心電図


右腕血圧


左腕点滴手の甲から
痛いところらしい。

さほどだった。
看護師さんが上手なんだろうな。



「点滴にも眠くなる薬入っていきますー」って
麻酔科医の先生が。


酸素マスクみたいな麻酔もかけられて、いよいよだって感じ。

真上に見てるオペ室の照明。


照明の数が数えられるほどに意識がある。


ふわふわしている。瞼は重くならない。


足に重しつけられて動けない。
あ、拘束具つけるってこのこと。。

・・・・・

・・・・・


次、はまださーんって女性の声?


次に、はまださーんって先生の声。


うっすら開けれた目に先生が映った。


つい声で返事した気がする。


一瞬だけの目覚め。かえってきた。

オペ室だったのか、どこだったのか。


目が開けられない。


音だけガチャガチャ聞こえる。



ストレッチャーにいつしか乗ってた。


エレベーターに乗る瞬間と、病室の前に着いた瞬間だけわかった。


ナースステーションに「二人ほど手を貸してください」って看護師さんの声。


おそらくストレッチャーからベッドに移動用だと考える意識があった。


TVでしか見たことない、1.2.3の掛け声でベッドに。


また朦朧とする感覚。


起きてたいなんて意識が湧くスペースすら与えられないほどに。



声帯の写真見せてくれた気がする、
先生も来てくれてたのかもしれない。


「こちらとしても会心の出来です」って。


いち作品かって思って面白かった。


嫌な気分にはならない。


作品に並べてもらったと、なんだか嬉しい言葉だった。


でも何されているのかわからない。
忙しそうな音だけ聞こえる。ザッザッって。

次、ドアのノック音、意識が戻るのも一瞬。 


あれ、また落ちてたんだ…先生たちいつ帰ったんだっけ?


おかえりわたし。


心電図、酸素マスク、酸素検査機、点滴、ついてるのはそれぐらいかな。


わかんないけど、とりあえず体を動かすことを諦めさせられてる重み。


「○○しますねー」
何を言われたのか覚えていない。
とりあえず顔を縦に振ってみる。伝わっているのか…。

「痛みありますか?」といわれて初めて痛みを感じた。
喉が痛い。風邪とかの痛みではなく声帯だと感じる。
手も動かしていいのかわからずジェスチャーもできない。
とりあえず顔を何度か縦に振ってみる。


「使っていい痛み止めあるか聞いてきますねー」


あ、伝わった。


寒い。


手術着に下半身だけ掛けられたタオルケット。


寒い。どーやって伝えたらいいのかわからない。


意識がしっかりとしない。寒い感覚よりも先に意識が薄れる。
また今度。

きっと次もドアのノック音、
意識、おかえりわたし。


この後の流れの説明だったかな。


起き上がって歩く練習するよ説明


水飲めるかテストするよ説明


なんだこれ人間の機能なんてそんなもんか。


とか思いつつ、薄れる意識に逆らえず、
また今度。


何かで覚めたのか、おかえりわたし。


一人だった。


誰か来ることを察知してたかのようにタイミングよくドアのノック音。


「失礼しますーいかがですかー?」


なんとか首だけでも起こして、
赤べこのように会釈しようと頑張るわたし。


「大丈夫です」ってどう表現したらいいんだろう。


ジェスチャーもできず、とりあえず笑顔にしてみる。


表情で言葉や思いって伝わるんだろうか。



ただ、意識に逆らえず、薄れてるふわふわしたまま話を聞く。


内容は覚えてない。


人が話してるときに寝ちゃいけない、
そんなことだけ考えてた気がする。


少しずつ自分の体と意識が一つになってきた。
トイレに行きたい。
ただこれをどう伝えよう。
相変わらず瞼は重い。
表情も作れないと、何かを伝えたいという意思さえも伝えることができない。
あぁ、看護師さん帰っちゃう。
だめだ、また意識に逆らえない。
また今度。

やっぱりトイレに行きたい。
その意識で目覚めた。おかえりわたし。
左手に何かを握らされていた。
点滴が付いているため、それが何なのか目で確認はできず、
触る、手のひらの感触。
あ、これがナースコールというもの!?
握らされたその物を、ひたすら握ってみる。力が出ない。
一箇所、ポチって感覚。
あ、、押せた。
すぐさま「伺いまーす」の声。スピーカーあるんだ。

「どうされましたー?」
看護師さんが来てくれた。またもや、伝えられない。
要件があることは伝わっている。此処からどうするか。
筆談具・・・どこ?
でも、左手は点滴、右手もなんか色々。
看護師さんが筆談具持って来てくれて、右手のいろんなもの介抱してくれて
なんとか書けた「WC」の二文字。
たったこれだけの文字に、ここまでしてもらってごめんなさい・・
って気持ちと。
その申し訳なさから、まだ我慢できたんじゃないの自分?と
つい自分を責めて、申し訳なさ倍増。
たった二文字伝えるだけでこんなに時間を要する。

その後も、ベッドから一人で起き上がれない、
いろんな配線に気を配りながら、いろんなものに繋がれたまま。
立てば立ちくらみがし、真っ直ぐ歩けてる気がしない。
ありがたいことに部屋にトイレが付いていたので、距離的には4・5歩。
これがなかなか進んでくれない。
とりあえず扉を閉めることができた。
でも左手点滴、右手もなんかメーター持たされてる。
あ、両手塞がってる。服も下着もどーやって脱ぐ?
下着おろしてくださいってまた伝えるのも、筆談具まで戻るのも、もう面倒。
どーにか使えそうな数本の指で服の処理して、やっとこさ目的達成。

またベッドまで帰る。4・5歩の距離が遠い。

立ちくらみがした。頭を自分で支えられてない感覚。情けな。

スタミナある方だと思ってるんだけどなーとか思いつつ。

ベッドに寝転がりスタミナ切れ。

酸素マスクとかつけてもらいながらの、また今度。


酸素マスクの決められた時間が終わったらしい。

どのくらい時間経過したのかも知らないけど、色々と機器が外れた。

立ち上がりと歩く練習。ベッドの背もたれを上げてもらう。ベッドの高さを立ち上がりやすいように調整してもらう。ゆっくり立ち上がり、病室の入り口まで点滴のポール押しながら歩く。背筋が伸びない。少し前屈み、点滴のポールに体を少し預けて。立ち止まった瞬間に立ちくらみがあったけど、大丈夫なレベル。

「大丈夫そうですか?」看護師さんが聞いてくれる。

細かく説明もできないので、とりあえずOKサイン。

次に水飲めるかのテスト。少量のお水を一杯、ちょっと緊張した。手術後初めて声帯に水が通る(多分)。ゆっくり少しずつ飲み込んだ。

飲めた。

「これでもう点滴以外は自由に過ごしていただいて大丈夫です!」

わーい、とは思っても、歩く練習だけでHP0。ベッドに座り、起こした背もたれを平に戻す余裕もなく、また今度。

自由な時間がきっと数時間あったんだと思う。

何度か体温と血圧測られてた気がする。

看護師さんが変わるたびに、「血圧低いですね、いつもこれくらいですか?」って言われる。

普段血圧測らないし、どれくらいなんですかわたし?、一般的にはどれくらいなんですか?、と思いつつ分からないので、とりあえず毎回首をかしげる。

あぁ、やばいHP0。

体温計すら脇に挟めない。弱っ。また今度。

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あれ?? おかえりわたし。

目が覚めた。一人だった。

ぼーっとはしつつも、回復感がある。起きていられる感覚。

喉が渇いた。

とにかく喉が渇いてた。

朝7時から飲み物禁止で、さっきの水飲めるかテストの一杯だけしか水分とっていないんだと思う(多分)。

時計を見たら18時。ペットボトルのお水買っておいてよかった。。

勢いよくはやっぱり飲めなかった。グフってなる。声帯ごめんよ。

ゆっくり飲みました。

こんなに時間経ってたかと驚く。

ようやくスマホも手にとれて、しばらくすると夕飯が運ばれてきた。

美味しそうな香り。

麻酔と口内に金属器具入ってたから味覚障害あるかもって言われたけど、食べたらなんてことなかった。味違ったのかもしれないけど、、そんなことよりも24時間ぶりのご飯と、食べて体にパワー入っていく感じが、回復していってる感覚があって、ただただ夢中。音楽もTVもなしにご飯とだけ向き合ってた。

そこからはだいぶ楽に。

点滴が落ち切るまでの時間、薬剤師さんの説明聞いて薬飲んだり、吸入器タイムだったり。筆談具に慣れようと遊んでみたり。

点滴全部終えて、ようやく手術着から着替えることができて、自由に。でも21時の就寝時間まであと1時間しかなくて、急いでお風呂入って、

この一日を終えた。


っていう、記憶の記録。

9月28日。長い日。

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