コロナ時代のVRエンタメ〜Tokyo XR Meetup #33 オンラインに参加した大学生の感想

 先日、所属する青山学院大学総合文化政策学部の通称「青学VRラボ」にて、宮田先生から「このイベントに参加してみませんか?」ということでご紹介いただいたのが、Tokyo XR Meetup #33 オンライン 「withコロナ時代のVRビジネスの可能性ーエンターテインメント編」というイベントでした。VRラボに属している以上新しいエンタメ、あるいはアート、文化になることを目指すVRという技術に興味はありながらも、あまり知識を集められていなかった私にとって、とても勉強になる講演でした。一般オタク女子大生的な目線から軽いレポと感想を記して共有しておきます。お手柔らかにお願いします。

1.広がるVRビジネス

 最初に登壇された、『VR法人HIKKY』のCEOである舟越靖さんは、プレゼンテーションの中で「クリエイターの価値を上げる場を作りたい」ということを語っていました。HIKKYが手掛ける世界最大のバーチャルイベント「バーチャルマーケット」(以下Vket)では、最新のVket4において1100のブース、数千のアバターが集まり、一般のクリエイター達はもちろん、多くの企業のプロモーションの場にもなった。舟越さんが、そのようにクリエイターが作る場を評価しバックアップしてくれる企業がいることに感激したと語っていたこと、また一般参加してくれた人たちの中から次のVketに運営側として参加してくれる仲間が増えていくという状況を「エモい」と表現していたことが印象的でした。
 所謂オタクである私にとって、一般ユーザーやクリエイターが界隈を大きくしていく世界というのは割と身近なものです。今のVR界隈は、インターネット黎明期のようなワクワク感が席巻しているような感じなのかなと思います(私自身はインターネット黎明期の頃には赤ん坊なので実際に見ているわけではないのですが)。そういったものが様々な企業の共感を得ているということを考えると、クリエイターたちにとってこの上なく嬉しいことだと思います。特にコロナ情勢下ということで、現実にできなかったイベントをVR空間上で、それもVRならではの方法で行えた(Audiの試乗など)という実例は、今後様々な企業がVRに興味を持つ一つの契機になるのではないかと思います。Vketはより様々な人がアクセスしやすい環境整備を進めているそうで、今後ますますVRクリエイターたちの活躍が多くの人の目に留まると考えるとワクワクします。

 続いて今回のイベントの会場にもなったバーチャルSNS『cluster』を運営する加藤直人さんのお話では、今のコロナ情勢下において広がるVRイベントビジネスの状況について知ることができました。実際の会場でのイベントが難しい今、VR空間に目を付ける企業はやはり増加しており、BtoB事業からBtoC事業、大きなコンサートイベントから小さな非公開型イベントまで多岐に渡って需要が増えているようです。
 コロナ情勢下において、VR空間での催事は企業や個人にとって新たな選択肢の一つとして認識されるようになりつつあるのかな、と思います。後の質疑の時間に「コロナ明けのVRはどうなるか」ということについて加藤さんが語っていたのは、特需は減少するものの、普通時間のかかる「人の感性」のアップデートがこの情勢下で強制的に進んでいる、ということでした。Clusterを利用してもらう機会ができたことで、今まで知らなかったVR空間のメリットに気がつく人が増加し、コロナ収束後にもVRが自然な選択肢の一つとして残っていくことが可能になるのではないかと思います。

 VRの存在は知っていても、VRで具体的にどんなことができるのかよくわからない、なんて人が多くいると思います。(実際私も最近までよく知りませんでした・・・) そういう人や企業が、実際の体験を通してVRの活用の可能性について考える機会がここ最近、特にコロナ情勢下という制約された日常の中で増えているということが御二方のお話から実感できました。企業からの需要というだけでなく、クリエイター側の仲間も増えていくことで、技術も更に発展し、更にできることが増えて・・・という未来を想像すると楽しくなってきました。自分が今まさに生きている時代にそういう変化が起こっている事実、すごくないですか?私はインターネット黎明期のそういう頃にはちゃんと立ち会えなかった世代なので・・・。

2.VRエンタメのさらなる可能性

 イベント参加後にラボ生同士で感想を共有した際、大半の人が印象的だったと語っていたのが『MyDearest』CEO、VRミステリーアドベンチャーゲーム『東京クロノス』のプロデューサーである岸上健人さんのお話についてでした。まず熱量がすごい。私自身もコンシューマーゲーム、特に長編RPGが好きなので興味津々で聞いていました。長編VRというブルーオーシャン(未開拓市場)、マルチメディア展開による収益化、マルチプラットフォームの重要性、黎明期にしか生まれないオリジナルIPへの挑戦、HDMユーザーを集めるためのクラウドファウンディング、発売までの毎月のイベント開催・・・などなど、『東京クロノス』発売までの道筋のお話、とても面白かったです。特に「長時間プレイでなければキャラ愛は生まれない」という点については、オタクとして思わず「それな!」と言いたくなりました。
 VRゲーム市場の現在ということで言えば、Oculus Questが一周年を迎えストア売上は既に100億円を突破し、売上本数100万本タイトルは3つ、売上一億円タイトルは100本を超え、ここ数年でものすごい勢いで拡大しているとのこと。岸上さんは、スマホゲームの2009年ぐらいの市場が現在のVR市場のようだと語っていました。今後ますます広がるVR市場の中で、ユーザーの無意識の欲求は『新しい作品を体験し、新しい時代に乗り、自分を変えたい』ということにあり、だからこそ新しい体験としてオリジナルタイトルを出していくべきだというのです。コンテンツということに関して私も大学で少しずつ学んでいるのですが、「新しさ」というのはそれ自体が期待を集め、市場が活性化していくことはよくわかります。そしてそれに伴う実績、長編VRではまさに『東京クロノス』がその実績を作り出したわけですが、それによって投資も増え、岸上さんが熱く語る「VRゲーム時代にドラクエやFFのような作品を作る」という願いが成就される日がきっと来るのではないかと思います。まさに長編RPGのオタクである私にとっても興味をそそられる話です。新作の『Altdeus』の成功もお祈りしております。私もVRデバイスを購入した暁にはプレイしますので・・・!!頑張って貯金します。

 最後に『ソニー・インタラクティブエンタテイメント』インディーズ イニシアチブ代表の吉田修平さんが登壇され、PSVRについてや、現在ソニー社内で開発が進んでいるプロジェクトについてお話がありました。今や累計実売500万台を突破したPSVRでは現在販売しているタイトルから日本上陸予定のタイトルまで魅力的なものばかりでたまらないです。PSVR・・・欲しいな・・・・暫し財布と相談します。継続的に売れるタイトルが発売され、VRオリジナルタイトルも増え続けているようです。中でもゲーム制作プラットフォームである『Dreams Universe』は私も動画サイトで見たことがあったのですが、それもVR対応が間近だと聞いてとてもワクワクしました。前項のVketもそうですが、ユーザーがクリエイターとなる世界では驚くほど作り込まれたものから、不思議でニッチなものまで様々なものが誕生するので面白くて好きです。
 さて、現在ソニーでは、各部署からVR好きな人を集め、「テクノロジー×コンテンツ×クリエイター」をテーマに掲げたXRプロジェクト『Project Lindbergh』を進めているそうです。RPG好きな私は確かキングダムハーツの主題歌とこのプロジェクトが絡んでいたのを思い出してピンときました。VRのためにライブを撮影し新たな臨場感をもたらす試みや、アイドルを超至近距離で見られるコンテンツなど、「やってみたい」と思うことをPSチームの技術で実行する、ソニーならではのプロジェクトです。また、多数のカメラで撮影した実写映像をリアルタイムでポリゴン化し3DCGにする『ボリューメトリックキャプチャ』についても紹介があったのですが、映像を見てこんなところまで技術が進んでいるのかと驚きました。この記事を書いてる数日後にもPS5の情報が公開される予定ですが、ソニーはいつも私たちの想像を遥かに上回るエンターテイメントをもたらしてくれるとつくづく思います。

 今もまさにリアルタイムで新しいものが生まれ続けているわけですが、VRエンターテイメントはまだまだ多くの可能性を秘めていると希望が持てます。新しいものを切り開いていくことは一筋縄では行きませんが、作り手側の楽しさは他の何者にも代え難いだろうと想像しています。受け手の側としても、毎日カルチャーショックの連続であり、こんなに刺激のある世界をなぜ今までもっと見てこなかった・・・!なんて思います。発展中の市場に触れるある意味期間限定の体験を享受するためにも、新しいものに触れたい無意識の欲求を持つ一人としてアンテナを張っていきたいです。

3.今後の課題と希望

 四人の登壇者の方々のプレゼンテーションが終わり、最後にQ &Aの時間が設けられていましたが、その中でいくつか今後の課題についての話題も上がりました。一番このコロナの時代において大変そうだと私が共感したのは、吉田さんがお話していた「VRを体験したことがない人へのプロモーション」という課題でした。通常ならロケーションベースで体験してもらうことができるが、今は実際の場に人が来ることが難しい、という問題です。一方で舟越さんは、リアルに制限がある今だからこそ、現実と仮想を組み合わせて「パラリアル」な空間の可能性、例えば半分ずつの人がリアルとバーチャルで同じ空間に存在できるような、そういったものへの需要もあるだろうと語っていました。また、Vket内でのバーチャルコマースの取り組みでは、今までVRのターゲットからは若干外れていた若い世代のアルバイターによるVR接客の機会があったようで、その感触は良かったと言います。そうした機会こそあれば、より幅広い世代がVR界隈に入ってくるのではないか、という希望もあるということです。withコロナ状態がどれほど続くのかは誰にもわからないことですが、この逆境の中だからこそ生まれる新たなプロモーションのアイデアについては、まだまだ考える余地があるように思えました。

 VRには未だ技術的な課題も多くあるようですが、どの登壇者の方からも、VRを「文化」としてコロナ後にも残していきたいという思いが伝わってきました。一般人である私にとってできることといえばこのように記事を書いてみたりすることくらいなのですが、VRエンタメを応援したい!と思えるような熱い講演会でした。私自身のことに絡めて言えば、将来はクリエイター側の人たちのことも理解しながらビジネスをやっていけるような立場になることへの憧れもあり、VR界隈は今後も目の付け所・・・なんて思います。VRの発展と共に、このコロナ時代を乗り切って、私も学生として成長していきたいです。



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