いちごのないショートケーキ。
私は、果物が苦手だ。どれがと言われれば、全部と答えるぐらい、果物全般が苦手。
アレルギーとかではないので、食べれないことはないのだけれど、味や食感、香りなどがあまり得意ではない。
大人になれば食べられると思っていたけれど、結局好きにはなれず。人生損してるって何回言われたことか。
そんなこんなで、先日あった夫の誕生日に作ったのは、チョコレートケーキ。私と違って好き嫌いのない夫は喜んで食べてくれた。
でも実家にいた頃は、家族の誕生日ケーキはずっと自分で作っていたので、いずれ息子が大きくなったら、フルーツののったケーキも作ってあげたい。
そんな話を夫にしたら、「じゃあ、実家の時の誕生日はいつもチョコケーキとかチーズケーキだったの?」と質問が返ってきた。
はて。そう聞かれて、はたと気づいた。そういえば、実家の時に作っていたケーキって、いつもショートケーキだったな。
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そう、我が家の誕生日ケーキはいつも、いちご抜きのショートケーキだった。なぜか姉妹揃って果物が苦手だったので、スポンジに白い生クリームを塗って、いちごの代わりにチョコやクッキーでデコレーションしていた。今思い返すと、なんと味気のないの誕生日ケーキだろう。
それでも毎年、誕生日になると当たり前のように、年4回(クリスマスも含めて5回)このケーキを家族みんなで食べていた。
父と母は果物が好きだったけれど、いつも喜んでこのケーキを食べてくれた。
「あら、美味しい。また腕上げたんじゃない?」「そうだな。店で売っているケーキより断然美味しい。」いつもそう言ってケーキを頬張りながら褒めてくれた。
だから、私も妹も嬉しくて、いつも誕生日になると張り切ってこのケーキを作っていた。多分、小学生ぐらいから実家を出るまで、20年ぐらい作り続けてたんじゃないだろうか。
きっと、父と母は果物のたくさんのったケーキが食べたかったに違いない。それでも、私たちの作る果物抜きのケーキをずっと食べてくれていた。だから私も妹も、新しい家庭を持った今でも誕生日には手作りのケーキを作り続けている。
あれって、愛だったんだな。子どもを持った今、振り返ってやっと気づいた。
いちごのないショートケーキは、自分たちの食べたいものよりも、子どもの喜ぶ顔を見たいと思った父と母の、私たちへの紛れもない愛情だった。
そして今度は私が、息子のために自分の苦手な果物のったケーキを作ろうとしている。息子の笑顔が見れるなら、苦手な果物だって喜んで食べよう。不思議だけど、自然とそう思っている自分がいる。
いつの時も、親って子どものことを一番に考えてるんだなぁ。そんなことを夫とケーキを頬張りながらそんなことを考えた。
さて、来年はどんなケーキを作ろうか。私の頭の中は、すでに息子の誕生日ケーキのことでいっぱいだ。