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鳥たちのダンス。


最近、実は少し気が重かった。だんだん結婚を意識する年齢に差し掛かり、何か始めなければと焦る気持ちが生まれてきた。

しかも妹に彼氏ができたものだから、ますますその気持ちが大きくなる。普段は家にいるのが大好きなんだけれど、何となく家にいるのもちょっと嫌になっていた。

早く仕事行きたいなぁ。思わずそんなことが頭をよぎる。まさか仕事に行く方がほっとする日が来るなんて。

職場に着いて、ほうきとちりとりを持って外へ出た。青空がまぶしくて、景色を眺めてるだけで、ほっとする。

やれやれ。これでひとまず色恋沙汰とはおさらばだ。そう思っていると、頭の上から鳥の鳴き声が鳴り響いた。ちゅんちゅん、ちゅんちゅんとその鳴き声は普段より大きく聞こえる。

どうしたんだろう。そう思って電線を見上げると、2羽のスズメがまるで鬼ごっこでもしているように、飛び回っている。はじめは遊んでいるのかと思ってみていたけれど、何となくオスがメスを追っかけているような気がしてきた。

そうか、鳥たちは恋の季節なのか。そう気づくと、なんだかその鬼ごっこも恨めしい気持ちで見てしまう。

ポポッ。今度は足元から別の鳥の声が聞こえた。山鳩だ。こちらは2羽が何とも言えない距離感で佇んでいた。オスがメスのほうにそれとなく歩み寄っていくように見える。

その近くの茂みでは、チョウチョまでもが、2羽でくるくるとダンスを踊っているではないか。なんとも楽しそうに。

まさか、ここまで来て動物たちの恋模様を眺めることになるとは。何とも言えない気持ちになってそこを後にした。

結婚とか恋愛とかそういうのを考えるといつも疲れてしまう。そう思っていたけれど、でも楽しそうに、時にいじらしく仲を深めていく鳥たちを見ていると、なんだか恋も悪くないかもなんて思えてきた。

鳥たちだって、頑張って恋を実らせようとしているのだ。そのけなげな姿を見ていると、私も一歩を踏み出さないと、なんて最後はそんな気持ちにまでなってきた。

事務室に入ると、換気のために開け放たれた窓から、今度は別の鳥の鳴き声が聞こえてきた。窓の向こうでは、ヒヨドリが2羽で仲良く木の上を歩いている。その上では、ツバメたちが巣の周りをぐるぐると回っていた。

なんだか今日は、鳥たちの恋する姿を過剰供給すぎるぐらい見せつけられてしまったなぁ。さあ、次はあなたの番だよ。どうするの?そう言われているように思えた。

私も鳥たちに負けないように、恋、頑張ってみようかな。