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優しさのバトンを繋いで。

最近の息子は、日中の活動量が一段と増えた。朝一で近くの支援センターに遊びに行き、お昼を食べて短いお昼寝をした息子は、午後も元気いっぱいで暇を持て余していた。

買いたいものもあるし、久しぶりにショッピングセンターに行ってみよう。そう思い、午後から車で2人でお出かけした。色々歩き回り、欲しいものを買い終わる頃には、ベビーカーに乗ったままの息子は、飽きたのか声を上げていた。

ちょっと休憩しようかな。そう思い、近くのドーナツ屋さんに立ち寄った。今までは、息子と2人で外で食べる勇気がなくて、そのまま帰っていたが、今日はお店で食べてみようと思った。

気になっていたドーナツを一つ頼み席に座る。息子には、さっき買ったばかりの赤ちゃんクッキーを渡した。朝から動きっぱなしで疲れていた私は放心状態でドーナツを頬張りながら、んんー、と次々とおやつを欲しがる息子に無心でクッキーをあげていた。

最近、息子の寝ている時間は確実に短くなり、家事や遊びのリズムが転換期を迎えていた。私の方がまだ慣れずに、体が追いつかない。早く慣れなくては、と頭の中で考える。

その時だった。急に息子が火がついたように泣き出した。何事かと思い見ると、クッキーを頬張り過ぎて少し喉に詰まってしまったようだった。ちゃんと確認しなかった私のミスだ。慌てて口から出して抱っこで落ち着かせる。

すると、奥から店員が様子を見にきてくれて、すぐにビニール袋とペーパータオルを持ってきてくれた。申し訳なくて、すみませんとワタワタしながら頭を下げると、笑顔で「大丈夫だからね〜、落ち着いてね。」と声をかけてくれた。

隣で本を読んでいたお姉さんとも目が合い、うるさかっただろうな、とまた頭を下げようとすると「可愛いね〜」とニコニコとこちらに笑顔を向けてくれた。

驚いた。嫌な顔をされても仕方ないような状況だったのに、周りの方々がこんなにも優しく関わってくれるなんて。なんて心の広い人たちなんだろう。

申し訳なさでいっぱいだった私の心に、温かい気持ちがじんわりと広がった。息子にもそれが伝わったのか、私の胸で落ち着いてくれた。そして何度もお礼を言い、その場を後にした。

帰り道、私は一連の出来事を振り返り、改めて感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。この世界はたくさんの優しさで溢れていて、その優しさが集まって、世界が形作られているんじゃないか。そんなふうに思える出来事だった。

私が逆の立場だったら、こんなふうに優しく声をかけたり、必要なものを瞬時に考えて渡すことができただろうか。もしかすると、難しかったかもしれない。

でも、今回助けてもらったこの経験を活かして、もし今度同じように困ってる人がいたら、しっかり手を差し伸べようと心に誓った。

迷惑をかけてしまったけれど、たくさんの優しさを受け取った、息子と2人での外食デビューだった。この受け取った優しさのバトンを、次は私が別の誰かに繋いでいきたいと思う。