贔屓にときめく

ハマりにハマったヅカロー。
私は平凡な主婦なので観劇は一公演につき一回が普通。関西に住んでるから遠くはないけど、やっぱり仕事とか子供のこととか考えるとそんなには見に行けない。
でも今回は5回見に行けた。
こんなに大好きな人に出会えるのはヅカオタ歴15年の間でまだ2回目だったから、すごく貴重なこととわかっていたので、家族に協力してもらって全部見に行くことができた。
独身の頃は気ままに何回も見に行っていたから、こんなに見に行けたのは久しぶりで本当に嬉しかった。

この5回、色んな席に座ったけど贔屓と目が合わなかったことは一度もなかった(気がする)。
彼女はなんかすごい能力を持っていて、劇場全ての人と目を合わせることができる。
しかも「いま、私だけを見てくれた!?私になにかメッセージを送ってくれた!?」と思い込ませる天才なので、ものすごくドキドキするし虜になってしまう。無邪気に見えて意味深で危険なタイプ。

マイ楽ではSS席に座ることができた。本当に幸運なことだと思う。
オペラなしでスモーキーが目の前に現れたとき、号泣してしまった。こんなに美しい人が目の前にいる。歌っている。ダボダボの服を着て、ふわふわの髪の毛が、そこにある。遠くからじゃよくわからなかった細かいところまで、完璧な美しさでそこに立っている。尊くてありがたくて、本当に泣いてしまった。他の人も大好きだから全員見たかったのに、桜木さんに釘付けになってしまった。真ん中でみんなが歌い踊ってるのに端っこで立ってる桜木さんを涙を流しながら見つめ続けていた。
さっきも書いたが彼女は全員と目を合わせる天才なので、この時すごく目を合わせてくれた。もちろんスモーキーはファンサしてくれないので見たままだったのだけれど、一度も目を逸らすことなく、しっかりと目を見てくれた。
黒目がちに見えるし、三白眼にも見える、あの不思議な美しい目。こわくなるくらい大好きだと思った。彼女と同じ時代に生まれたことに感謝した。

ショーの時、チョンパ前に銀橋に並ぶ方々を見ることができた。うっすらオーケストラボックスの光があるので、わずかに見えた。桜木さんは上手から歩いてきて、下手から0番に歩いてきた芹香さんと目が合うとお互いにっこり笑い合ってから定位置についていた。めちゃくちゃいいものを見せてもらった。かわいかった。

パッと光がついたとき、ふわふわセンター分けがかっこよくて、もう桜木さんしか目に入らなかった。

ずんずんタイムの前、下手にいる桜木さんが私をはっきりと見た。そしてこの時、「わかってるよ。私のことが好きなんでしょ」とでも言うようにパチっと指さしウインクをしてくれた。
冗談ではなく、本当に心臓が跳ねた。びっくりした。こんなにはっきりと狙いを定めてウインクしてもらったことは生まれて初めてだった。
一瞬のことだったし、すぐずんずんし始めたし、ぽーっとしたまま、なにがなんだかわからないまま、それでも次々現れる最高のシーンをしっかりとこの目に焼き付けた。

ツイッターにも書いたけど、中学1年のとき体育祭の借り物競走で「3年生の男子」を引いたことがある。部活も女子だけだったし3年男子の知り合いなんて1人もいなくてどうしよう…と思ってたら3年生で1番ヤンチャなグループのイケメンの先輩が真っ先に出てきてくれた。そして手を繋いで、ゴールまで走ってくれた。私は運動神経が悪いので、体育祭で一位になったのはこれが最初で最後だった。
この時のときめきを、私は一生忘れないと思う。別に好きになったわけではないけど、困ってる私を迷いなく助けてくれた優しさ、躊躇なく手を繋いでくれた潔さ、自分がかっこいいって分かってて、それをさらっとしてくれるサービス精神。人生のハイライトに入るくらいいい日になった。

今回桜木さんがくれた指さしウインクは、この中学の借り物競走を越えるくらいのインパクトだった。ていうか同じ種類に思えるのがすごい。
テレビに出てるアイドルを応援しててもこうなるのかな。宝塚はいい意味でスターとファンとの距離が近い。相互通行のファンサをしてもらった感じ。普通に考えて近づくことなんでできないんだけど、中学の先輩くらいの心理的距離感でこちらにサービスしてくれる。目線を落としてくれる。だから普通に恋してしまう。
舞台写真を買ったりチケット入手のためにあの手この手で頑張ったり、やってることは普通に宝塚ファンなのに、なぜかすごく彼女たちと知り合いのような気分になるときがある。親近感が湧く。本当に中学1年生が中学3年生に憧れる、あの感覚。第二ボタンをもらいにいけそうな、そんな不思議な優しさがある。

そういう思春期のリアルに近いときめきを頂いてしまった。二児の母になって、こんな素晴らしいことがあるなんて。いやもちろん夫のことは大好きで愛してるし、ときめいたりもする。
でも、もっと純粋な、その先に何もないってわかりきってるときめきって大人になったらそうない気がする。デートをしたときのときめきじゃなくて、第二ボタンをもらいに行った時のときめき。
本当に幸せな気持ちになった。
桜木さんと同じ時代に生まれたことを両親に感謝しながら見ていたけど、まさか人生最大のときめきを越える出来事がこの年になって起こるとは思わなかった。

冒頭に書いたけどヅカオタしてても贔屓と呼べるほど大好きな人に出会えることってそうない。
心身健康で何回も劇場に足を運ぶ余裕があるときにそれほど大好きな人に出会えるなんて、私はなんて幸運なんだろうと思う。
それだけで幸せなのに、こんなにもありがたいものを頂いてしまった。本当に感謝。
家に帰ってもしばらくぱやぱやして、あの体育祭の日のように何度も思い出してはあったかい気持ちになった。
第二ボタンはもらいに行けないけど、お手紙を書いて、また劇場に行って、オペラグラスでたくさん彼女を見たい。嬉しかった。桜木さんがいつも幸せでありますように。美味しいものを食べて、ずっと健やかでいてくれますように。