留依蒔世さんへの思い

私のヅカオタ歴は約15年。人生の半分である。
就職や出産などで一時期見れないことがあったけれど、それでも細々と見ていた宝塚。

特に8年程前からは宙組が好きでよく観劇していたけど、こんなにもどハマりしたのはこの1年程のことで、正直ご贔屓を追いかけるのに必死で他の人を認識したのは最近のことである。
今回の宙組公演は人生で1番ハマって何回か見に行った。語り出したらキリがないので小分けに語りたいと思う。
特に大きく心が震えたのが、今回惜しまれつつも退団される留依蒔世さんの存在。
彼女のことは贔屓が主演のカルトワインで初めてちゃんと認識した。いやそれまでも存在はもちろん知っていた。オーシャンズ11のときのマイクパフォーマンスは気持ちがよかったし、デリシューのときの歌声には圧倒された。でもカルトワインで、「なに…この迫力は…こわい、でも見てしまう…」と、とてつもない存在感となんだか憎めない彼女の魅力に夢中になってしまった。
ツイッターでファンの方のツイートを読むのが好き。みんな彼女を心から愛していて、優しさで溢れているから。あつくるしいとか、うるさいとか言われているけど、その言葉ひとつひとつに我が子への愛情みたいな優しさが感じられて癒される。やんちゃな子供を見守る保護者のようで、あたたかい。

今回のハイローでは苦邪組という敵対チームのボス、リン役をやってらした。これまたすごい迫力。美少年メイナンツーくんをはべらせていて、華奢なメイナンツーくんがいるからリンの筋張った手や大きな肩がさらに引き立つ。
すごい修羅場を生きてきたであろう背景が見えるリンさん。カルトワインのチャポさんが小悪党で、悪いことはするけど一線は越えずに自分の利益をちゃっかり守る軽やかなタイプだったのに対して、リンさんはなんていうかもうめちゃくちゃに狂ってる。普通に頭がおかしい。商売人的な軽さがなくて、破天荒な職人系。自分の描く理想に対してとことん執着してて、それ以外はどうでもいい感じ。歌だけじゃなくダンスもうますぎて反社ダンスのときメイナンツーくんを見ててもいつの間にかリンさんを見てしまっている。圧がすごい。
悪役をやるの、楽しいのね。すごくイキイキしてる。
いやちがう、彼女はいつだって、どんな役だって楽しそうにしている。だから心が揺さぶられる。魂がこもってる。純度の高い情熱がある。
人によく見られたいとか、こうしたらカッコ悪いんじゃないかとか、そういう思いがなさそうで気持ちいい。舞台が好きで、表現することが好きで、必死で努力してここまで歩いてきた自分の人生に誇りを持ってる。

ショーのとき、客席を見つめる彼女の瞳はキラキラしてる。眩しそうに、愛おしそうに見つめてる。
私が好きなのはナポリのところ。ツイッターでも書いたからそのままコピペする。

ナポリのとこ風色くんとかは本気になったらマジで負けほんま遊ばれて終わるんで…みたいな感じで最高やけど、ルイマキセは「俺はお前を!大事にする!」感が強くてよかった。情熱的でめちゃくちゃ大事にしてくれそう。その上空気も読めそうな感じがよい。情熱的やけど空回りはしなさそうな。いい塩梅〜

これ、留依蒔世さんそのものって感じがする。情熱的で勢いがあるけど、根が真面目そうで、人に対して悪意を持たなそうな感じ。つまりいい人そうってことなんやけど、なんていうかもっと深みがある。
私自身が自意識過剰でうじうじとしたタイプなので、留依蒔世さんのカラッとした情熱は見ていてとても気持ちがいいし、浄化される。

私は彼女のことをよく知らない。もちろん舞台の上の彼女しか知らないし、ずっと追いかけてきたというわけではない。だからこういうことを書くのは気が引けたけど、あんなにすごいエトワールを聞いたらいてもたってもいられなくなった。
彼女の歌声は、宝塚がくれる美しさそのものだと思った。私たちは宝塚を見に行って、明日からも頑張ろうと思う。美しい感情で胸をいっぱいにして帰路につく。
彼女たちは人生をかけて頑張っている。少女の頃から努力し続けて限りある時間の中であの舞台に立っている。その人生に、誇りを持って生きている。
そんな彼女たちを私は尊敬している。
男役の仕草にときめいたり、萌えたりしているが、大前提としてタカラジェンヌのど根性を愛している。
留依蒔世がくれる歌声、エネルギーはそんな尊い感情をぎゅって凝縮したものだと思った。
感動して、いろんな気持ちが溢れて、熱い涙が出てきて、すごく心が揺さぶられた。
うまく言えないけど、それに加えて、努力の上に成り立つ素晴らしい表現力、全部自分の力で手に入れてきた誇り、そしてその上にある、私たちへの愛情。
その全てがキラキラして、美しくて、ありがたい。
私たちはタカラジェンヌを愛している。それと同じくらい、きっと彼女たちも我々のことを愛してくれている。

私たちは夢を見に宝塚へ行ってる。
現実社会ではみんなそれぞれのステージで一生懸命頑張ってる。トゲトゲした気持ちになるときもある。
でも宝塚に行くそのひととき、美しくて優しい気持ちをもらう。自分で自分を立て直せる。
あの空間には幸せがいっぱいある。
今回、私は留依蒔世さんにいっぱい幸せをもらった。退団されるのは寂しいけど、彼女なら第二の人生もきっと情熱的に、でもさっぱりと、健やかに過ごされることと思う。
たくさんのパッションと幸せをありがとう。
退団されるその日まで、途切れることなく舞台が完走できることを祈っています。