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62.海をあげる

2021年、ノンフィクション部門で本屋大賞を取っており読みたいな〜とぼんやり思っていたけど、ようやく読んだ。

沖縄在住の社会学者である上間陽子さんのエッセイ本。沖縄で未成年の少女たちの支援・調査に携わっているためエッセイの中には何度も若年出産した女の子たちのインタビューも載せている。

私は第1章の『美味しいごはん』でぼろぼろ泣いてしまった。悲しいことがあって、そのときうまく音楽や言葉が響かなかったり食べれなかったりするときがあると思うけど、その時にこの『美味しいごはん』を読むといいんじゃないかな。少なくとも私は救われたな。悲しみをこんなに優しい文章で紡げるのがすごいな。いや、怒りも悲しみもしっかり伝わるのに何か優しさみたいなものを感じる。帯やSNSで『海をあげる』を紹介する際に『みずみずしい文章』『透き通った文体』と評されてる理由がわかる。本当にすっと染み込むように入ってくる。文字が。これは、私の悲しみだと思わされる。


恥ずかしい話だけど、沖縄で起きていた事件やひろゆきや揶揄した事件も全然我関せずだった。恥ずかしい。沖縄は綺麗でいいところだと思っていたけど、貧富の差は激しいことはうっすらSNSを眺めていても流れてきたので知っていた。

その事象に近い人は口を噤む。語らない。

2012年から沖縄の若い女性たちの調査をはじめたけれど、調査で出会った女性たちもまた、隣接する基地や米兵について語らない。

海をあげる p235

東北の人が震災のことを語ることも、虐待を受けた人が虐待のことを語るのも難しい。やはり、どんなに傲慢と言われても遠く離れた人が、知って話すしかないよな。知ることは大事よね。当事者の人が語るときまで、わたしらが話すことは大事だと思う。多分

あと、最後の『海をあげる』がすごい。読み終えたあとにしっかりと悲しみや苦しみや沖縄の絶望をもらった。

本当、今年は遅ればせながら、良いエッセイ本・ノンフィクションものを読めている。

本屋大賞のときのインタビューが掲載されている。これも必読。

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