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いちばんに愛されたかったよね

あの子の視線がふっとそれて、心は小さく、傷を受ける

ああ、今日も私はいちばんではなかった
あの子にとってのいちばんは、私ではなかった

いちばんに、なりたかった
誰かにとってのいちばんに

ねえ、気がついてる?
いったい、それなら、あなたにとってのいちばんは誰なの?
いちばんなんか挙げられないくせに
自分だけいちばんになりたいなんて都合のよい文句を秘めながら
今日も私、もがいています

その人が心をはこぶ場所に、私以外の誰かがいるとわかると
すこし、背筋が伸びる
私は、あなたに寄りかかったりしないから
そしてすこしだけ強がって、素敵だね、なんて笑ってみせる

いちばんに愛する覚悟もないくせに
いちばんに愛されることを求めています


それは、ある一瞬のはなし
あの子の中での私の存在に価値がないなんて思ってはいない
あの子が私に向けてくれる好意だってわかっている
あの子の中にそんなくだらない順位なんて存在していないことも
私がたしかに、愛されていることも
ぜんぶわかっているんです
それなのにときどき、その一瞬、傷がついていることに気がつくのは
欲ばりですね
我儘ですね


あの子の笑顔を願ったひとときと
あの人のことを思ってさしのべた手
どちらにも間違いなく愛がつまっていて
優劣とか、どちらが先とか、そんなもの私だってもってはいない
愛はいちばんを競うためのものじゃないもの
たくさんではなくても、同時にいくつももっているのが愛だもの

愛の出し惜しみなんかしないで
それぞれがそれぞれの愛をちゃんと手渡して、受けとって
それだけでいいと思うのに
いちばんかどうかなんて入りこむ隙がなくなったとき
それがきっと愛の美しさなんです


でもどうして、いちばんに愛されたかったよね



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