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2022年9月22日(木)蝉のいない秋の夜

暗くて静かなリビング。グズっている長男を抱っこすると、少し落ち着いたのかおとなしくなった。泣きつかれたからだが熱い。
「まど」と指をさす。窓際に連れて行くと、長男はじっとしばらく外を見てから「へび(⤴)」 と呟いた。

「へび?…ゆび?」
『おはなしゆびさん』の歌が大好きで、最近いつも「へび(ゆび)」とリクエストされるので、それかな。

「♪この指パパ、ふとっちょパパ……」
歌い始めると、首を振って強い口調で「へび(⤴)!」と言う。どうやら指ではないらしい。わからずに固まっていたら、息子は窓の外を指さして言った。
「へび(⤴)、いない」

「……せみ(蝉)?」
「せみ、いない」

驚いた。蝉と言い直した長男の顔を思わず見てしまった。

同じように泣いていた夏の夜、抱っこして窓の外を見せながらわたしが「夜は静かだね、蝉の声がきこえるね。どこにいるのかな」と話しかけていたのを覚えていたんだ。
あの頃はまだほとんど喋らなかったのに、聞いていたんだ。

「せみ、どこ、いっちゃった?」と呟く息子。
「どこいっちゃったのかな?」と質問を返すと、すぐに「おおきいはっぱ」と答える。

「大きい葉っぱに隠れちゃったのかな?」
「うん」真剣な表情で頷く。
「蝉、たくさん鳴いて、生きて、大きい葉っぱの裏にいっちゃったんだね」
「うん」
「保育園で、蝉を見た?」
「つんつん」
「蝉の抜け殻だね。〇〇も触ったって、先生から聞いたよ。また来年、夏になるとせみがなくよ」
「せみ、なく」

来年は虫取り網を用意しよう。
いっしょに近くで蝉を見せてあげたい。

9/25 追記
近くの神社でも「へび(⤴)、いない」と言った。夏のあいだにわたしが、「ここなら蝉を捕まえられるかな?」と言って連れてきたからだと思う。


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