トリノ戦のマッチレビュー ( SerieA 19/20シーズン 第5節 )
はじめに
前節インテルとのダービーに敗れ、早くも今シーズン2敗目をきっしたミラン。ミッドウィークにアウェイでトリノと対戦することになる。ここから代表ウィークに突入するまで、トリノ、ヴィオラ、ジェノアと楽ではない相手との戦いが続き、これまでの2勝も昇格チームから。ここで勝ち、いい雰囲気をチームにもたらしたかったところだが。
スタメン
ミラン
・テオが初スタメン。ベナセル、レオンもスタメン
・スタートから4-3-3
トリノ
・スタートは3-4-1-2、途中から4-4-2に変化
ミランの基本布陣
要約
攻撃
左右にオーバーロードを作り出し、薄くなった逆サイドを活用
スソとチェルハノールの擬似トップ下(?)
後半は、縦に速い攻撃も大いに活用
守備
前半は、ブロックを敷きを引くことが多かった
後半はハイプレス。それを起点に長短のカウンターを繰り出す
ミランの攻撃の基本形
ミランの攻撃はこの試合多彩であった。
・サイドでのオーバーロードとサイドチェンジの活用
・サイドチェンジを囮(?)にした縦に速い攻撃
・ハイプレスからのカウンター
これらを簡潔に紹介していきたい。
オーバーロードの基本形
まずは左右でのオーバーロード時にどのような配置になっているかを簡単に確認したい。
右オーバーロード
右サイドのIH,WG,SBの3選手(ケシエ、スソ、カラブリア)は基本的に流動的に動くが、他のポジションの選手はこの3人をサポートしながらも、基本的には位置は固定である。
・CFであるピョンテクは、中央に構える。
・右IHのチャルハノールは、ピョンテクの下の位置に構える
・アンカーのベナセルは中央よりは右により左IHのチャルハノールよりは位置が下であることが多い。
・左CBのロマニョーリは中央付近、右CBのムサッキオは右HSの位置辺りにポジションをとる。
・左SBのテオは、左HSからセンター辺りの位置で、アンカーのベナセルと大体同じくらいの高さにいる
・左WGのレオンは、前線からその少し下の位置くらいで、HSからセンター辺りの位置にいる。
もちろん、状況によりどこかに多少のズレはかならず存在するが、抽象化すると基本的にこのような位置取りになるように思う。
左オーバーロード
基本的に、右サイドでのオーバーロードとミラーである。
少し付け加えると、以前のレビューでも指摘したがこのオーバーロードは、もしかしたら7レーンでやっているのかもしれない。流動的に動く同一サイドのWG, IH, SBとアンカーやCBはポジショナルプレーの原則の1つである。直前直後の同一ライン上で同じにならないを通常片側2レーンを3レーンに区切るときっちりと守っているように一見見えるからである。ただ、断定するには全く十分ではないので、あくまで1つの仮説に過ぎないが。
それはさておき、前節のインテル戦でも片側サイドにオーバーロードし、逆サイドにWGなりがアイソレーションな状態で残っているカタチ自体はあった。うまくそれを攻撃に繋げることはできていなかったが。前節のマッチビューで触れているので興味のある方はご一読ください。
オーバーロードからのサイドチェンジを活用した攻撃
この試合で最も典型的であったのは、前述したオーバーロードの状態からのサイドチェンジである。
右オーバーロードから左への展開
左オーバーロードから右への展開
基本的に、左右のサイドチェンジにおいて中心的な役割を果たすのは中央に位置する逆サイドのIHである。選手の縦の幅の中ごろでかつ、ピッチの中央のラインに位置する逆サイドのIHを経由して、逆サイドの高い位置に位置するWGや高い位置から降りてくるWG、もしくはワイドの高い位置に走ろうとしているSBに向けてボールが出る。
ただ、必ずしもこの場合に限らず、右→左のサイドチェンジにおいてはカラブリア-ケシエが高い位置を取り、降りてきてボールを保持している状態のスソから左のテオに一気にボールが展開することも多かった。
この場合には、レオンがワイドに向けて降りてきて、レオンが開けたスペースにチェルハノールが侵入するという多く見られた。そして、開けたポジションにチャルハノールは入るというカタチは3節にレビッチとのプレーでも頻出していた。
もちろんこれ以外にも、こぼれたボールをロマニョーリがカラブリアまで一気に逆サイド展開したり、IHの役割をベナセルが行ったり、その場の一瞬の配置関係でイレギュラーに行われていた場合も多々あることは言及しておきたい。
サイドチェンジ後の攻撃
それでは、次にサイドチェンジ後に作り出した優位な局面で攻撃するかだが、この試合はその帰結をクロスで終えることが多かった。右サイドでは、空いた広大なスペースを活かしてカラブリアやスソが侵入しクロスをあげる。左サイドでも同じようなパターンが多かった。
ただ、これはまだ連携の浅さからくる単調さのように思う。サイドからのクロスに頼らない攻撃も増えてくるだろう。その証左として、幾つかあった中央からの突破を次に紹介したい。
スソ/チャルハノールの擬似トップ下(?)
画像は、オーバーロード状態の右サイドからのパスを、中央の高い位置で受けるチャルハノール。目前にスペースが空いていたので、侵入しミドルシュートを放った。
この試合では、中央の高い位置にしたから上がってきたチャルハノール、横からスライドしてきたスソがピョンテクが本来位置しているだろう場所の手前のスペースを活用して攻撃している。今後もしかしたら、レオンやケシエがその位置を使い攻撃する可能性は充分に考えられる。
また、サイドチェンジ後にうまく崩しまでできなかった場合には、そのサイドに選手が集結しサイドオーバーロード状態になり、そこからまた、逆のサイドでアイソレーションの状態が作られが繰り返されることになる。
縦に速い攻撃
サイドチェンジの他に、サイドでのオーバーロードからサイドチェンジと同じような雰囲気のはじまりでもサイドチェンジせずに中央で縦に早く攻撃するパターンが、後半に複数回プレーされていた。
前節のミラノダービーでもサイドチェンジのようなタイミングでビリアが縦パスを入れている(なおこの試合ではサイドチェンジの経由はビリアを通す場合が特に多かった)
トリノ戦からもう1つ。
ドリブルで持ち上がっていく。これはビリアには見られなさそうなプレイ。
ハイプレスからのカウンター
後半に入りミランは守備が積極的になり、高い位置からプレスをかけるように変化した。それにともない、ボール奪取後はシンプルにカウンターをする機会が増えた。前目の位置で無い場合のポジトラでもシンプルにカウンターを仕掛けることが多かった。
ミランの守備の基本形
前半は4-3-3
後半に入るとハイプレス
ボール奪取からのカウンターは後半の攻撃のカタチとしてもとても多かった。
トリノの基本布陣
トリノの攻撃
前半トリノはサイドからの崩しを試みることが多かったが、特段うまくいくシーンは少なかった
トリノの守備
前からハイプレス
ところどころパスが引っかかり危なくなりそうなシーンはあったものの、結局ショートカウンターから失点することはなかった。
試合の展開
前半
この試合、序盤からミランが主導権を握り試合を進めることができていた。トリノの前線からのプレスを特に問題とせず、サイドチェンジを主軸に優位な局面を築いていくことで、クロスが多かったもののチャンスを量産していった。対してトリノも前半サイドを活用した攻撃を仕掛けようとしてきたものの、前節のインテルに比べると策も迫力も物足りずあまり怖いシーンを作られることはなかった。終了間際のシーンのようにカウンターから何度か危なさを感じるシーンもあったが。
先制点もオフサイドのリスタートからSBにボールが渡り、カラブリアが一気にスソをターゲットに右ワイドの高い位置に入れたボールをスソが収め、ピョンテクがワイドにランし、アーリー気味にクロスをあげた。そこに2対1とトリノ側に数的優位があったにもかかわらずレオンが倒されPKを獲得、ラッキーなカタチで獲得したPKをピョンテクが沈め優位なゲーム展開を得ることになる。
この後もよく攻め続けるものの、決定力に欠け前半を1点リードで折り返す。
後半
おまけ
上に挙げた以外に細かい気づきもあったので一応紹介だけしていきたい
・スローイン時の動き出し
左サイドで見られたカタチであるが、スローイン時にレオンとチャルハノールが入れ替わり、その交差ポイントにピョンテクが降りてくるというもの。少なくとも3度やっていたので準備しているカタチだろう。
総評
この試合、惜しくも負けてしまったし本来であれば勝てていたであろう試合だった。落としてしまったのは本当にもったい無い。内容としては、連携の低さを感じる場面や決定力のなさを感じる場面はあったが、全体的な内容としては非常に良かったように思う。スタートから4-3-3を採用し、ここにきて本格的にジャンパオロ式4-3-3が始まった感がある。そのためか、様々な戦術的な仕掛けを目にすることができ、非常に楽しかった。今後、試行錯誤を重ねる中でどのような個別な戦術がなくなり、そして生き残っていくのか。毎試合変化していく今まさに成長していく戦術を見ていくのが楽しみで仕方ない。あ、次は勝ちましょう!勝てるはずです!
----------------------------------------------------------------
試合結果
SerieA 第4節
トリノ 2-1 ACミラン
スタディオ・オリンピコ・グランデ・トリノ
2019年9月27日 4:00 KO(JST)
< 得点者 >
トリノ : ベロッティ 72' , 76'
ミラン : ピョンテク 18' (PK)
主審 : グイダ
----------------------------------------------
gif画像のサイズや再生の荒さがまちまちなのは10Mまでしかアップ容量がなくてそれを満たすために色々やった結果なので大目に見てねハート