中学受験の向き不向きが分かる「具体→抽象」思考
こんにちは。中学受験生を10年以上教えているまりかです。
前回「中学受験ってしたほうがいいの?」でも触れましたが、中学受験という特殊な世界はみんなに向いてる訳ではありません。
向いていないのに無理に中学受験の世界(魔界)に飛び込んでしまうと、飛び込まなかったら平和に暮らせていたのに親子関係やら自尊心やら色んなものが失われてしまいます。なんとか私立中学に入れたとしてもそこからの生活がみんなと合わなくて苦しい毎日になってしまうかも知れません。
今回は中学受験に向いているかどうかの指標の一つでドラゴン桜でも出てきた考えを、私の指導経験を元にお話したいと思います。
1.直感→具体→論理(抽象)
ドラゴン桜の9巻ではある有名な心理学者(ピアジェ)の実験例の説明があります。
人間は子供の頃直感的思考→具体的思考→論理的思考と思考が成長していきます。
(個人的には「論理」より「抽象」の言い方のほうが好きです)
直感=見た目の通りに考える
具体=具体物をもって考える
論理=抽象的に考える
という感じでしょうか。
大体7~11歳ぐらいの子が真ん中の「具体的思考」にいるそうです。
(私は心理学のプロではないので正確な説明は割愛。)
これは歩けるようになる年齢や言葉を喋れるようになる年齢が子供によってバラバラなのと同じように個人差が大きいです。
10歳前後の子供では同じ学年でも直感と具体、具体と論理と事なる場合があります。
子供に実験をする。
同形同大の2つのコップに同じだけの液体を入れたものを子どもに見せ
「どちらのコップにたくさんの液体が入ってる?それとも同じ?」
と尋ねる。次に片方の液体を細くて背の高いコップに移し、さっきと同様に
「どちらのコップにたくさんの液体が入ってる?それとも同じ?」と聞く。
この実験では直感的思考の子供は「違う」と答え、具体的思考の子供は「同じ」と答えるそうです。
それは頭がいいとか悪いとかではなく、たまたまその年齢の時に比較した時にどの階段の位置にいるか、の違いなだけなのです。
2.抽象的に考えるということ
私は主に小学5~6年生の中学受験生を教えています。
10~12歳の子供では具体的思考あるいは論理的思考(教えてる身としては抽象的、の方がしっくりくる)段階にいることになります。
具体的な算数の問題を出して比較してみましょう。
・具体的思考で解く問題
家から学校まで1200mあります。兄は分速60m、弟はある速さで同時に家を出発すると兄の方が20分早く着きました。弟の速さは分速何mですか。
・抽象的(論理的)思考で解く問題
家から学校まで往復するのに兄は20分、弟は30分かかります。
(1)兄と弟の速さの比を求めなさい。
(2)兄が家から弟が学校から同時に向かいあって出発すると何分後に出会いますか。
具体的な問題では実際の道のりや速さが出ているのでその数字をかけ算したり割り算したりすればいいことになります。
ただ、抽象的な問題ではかかった時間のみあるものの、それ以外の数値は全く出てきません。
具体的な距離や速さが分からないままに問題を解かなくてはなりません。
つまり目の前に存在していない、手触りのないものを「頭の中で仮に存在するとして定義して」進める必要があります。
3.中学受験は論理的思考を問うルール
中学受験というのは先程の直感→具体→論理という流れの中で論理的思考を問われる問題が多く出されます。
子どもの発達は一人一人違います。
でも中学受験は「6年生の冬」にしか受けられないんです。つまりその段階に論理的思考を身につけている子、が対象になっているわけです。
速さ、比など抽象的概念のオンパレードです。
ドラゴン桜の編集をされた佐渡島さんも以下動画で受験をさせない理由について語っています。(確かその後お子さんが自分から中学受験をしたい、と申し出て挑戦されてはいるような。)
手を変え品を変え説明しても比の概念が入ってくるとさっぱりわからなくなる生徒さんが一定います。
それはその生徒さんがまだそれを理解できる段階にいないだけ、なんですがどうしても中学受験の世界に入ってしまうと「できない」ということがどうしても可視化されてしまい、親からするとどうしてできないの!という怒りにかわり…本人はどんどん自信がなくなってしまいます。
本来幸せになってもらうための一つの選択肢にすぎなかった「中学受験」のせいで本人に劣等感を与えてしまったり、自信を失わせてしまうのは本末転倒です。
それに自分に合ってない勉強をさせてしまうと勉強自体が嫌いになってしまいます。中学受験をしなくても高校受験や大学受験などいろんな方法はあるのに。
ぜひお子様は今どこにいるんだろう?を見極めてほしいなと思います。
それではまた明日。
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