「俺の家の話」の話

久しぶりの宮藤さんの連ドラ。
「いだてん」ありましたけどね、あれはもう連ドラではないから。
しかも、長瀬智也さんの最後の作品ということで、ただの視聴者であるわたしも感慨はひとしお。
だって、くんく(と普段呼んでるのでここからはそう呼びます☺︎)初の長編ドラマである「池袋ウエストゲートパーク(IWGP)」の主人公が長瀬智也さんだったから。
あまりにも楽しみだったので、事前にはほとんど何も調べなかった。
プロレスラーと介護という設定だけは知ってたけど、長瀬さん以外誰が出るとかほぼ知らないまま初回の放送日になりました。

初回の感想は「ドタバタしてない!」でしたw
あれれ?しっとり始まってしっとり終わったな、と。
いつものくんくのドラマなら、初回ははちゃめちゃ。
何の説明もなく、怒涛のように人が出てきては一切の説明なく「みんなも知ってるでしょ?」みたいによくわからないまま、あっちこっち行ったり来たりしながら物語が進むから、割と馴れてるわたしも「え⁈ああ、あれよね!知ってる知ってる…けど、えーっとこれは誰のことダッケ…」みたいな微妙な感じで終わったはず。

はずなのに!
え?とにかくわかりやすい!
出てくる人の関係整理がしやすいよ!(全部寿一が説明してくれるから特に!)
時間軸が行ったり来たりしないよ!(子ども時代の寿一と今の寿一だから、全然混乱しない!)
どどどどうしたの⁈くんく、何があったの⁈

余談だけど、別にくんくが年老いてわかりやすいドラマしか書けなくなったわけではないと思う。
だって、演劇最新作の「もうがまんできない」は、不条理と言っていいほどの訳のわからなさだったもん。
くんくの舞台は本当に彼が描きたいものを描いていて、わかりやすさのカケラもないものが多い。
それより、面白いと笑って欲しいという、その思いしか見えない。大袈裟だけどあながち間違いではないと思う。
かたやドラマは、たぶん後でも書くけど、ちゃんと込められた思いがあって、めちゃくちゃわかりやすい。
はちゃめちゃで、ノリだけで進めてると思われがちだけどメッセージがある。
このバランスが宮藤官九郎なんだと思う。
(あ、もっと余談でいうと、グループ魂もね、あれもやりたいことしかやってないw)

それなので、この大人しい感じが2話以降どう転がっていくのか、わたしは本当に楽しみにしているのです☺︎
このままいくのか、ここからエンジンかかってくるのか、それはどちらだとしても、観山家のどうしようもない家族の話がちゃんとリアルにそこに在るのだと思っている。

さて、1話。
長瀬さんという人は、宮藤脚本の間合いを本当に完璧に理解して演じられる人だなとしみじみ思った。
(阿部サダヲか長瀬智也かだと思う。すごい能力)
寿三郎の介護をすることになった寿一が呟く、「何で俺なんだよ」という言葉。
寿三郎のお風呂介助ができなかった寿一の涙。
ここで寿一の戸惑いが描かれてる。
ちょっとだけノスタルジックな気持ちになって、家を継ぐと決めて引退までしたのに、いきなり出鼻を挫かれてしまった。
だけど、寿一はその育ちのせいで戸惑いを表現できない。
「はぁ?」と思っても、言葉として表出することができないから、だからその思いがあの呟きと涙に表れたんだな。

だけど、その後に目の当たりにした父親の老いと、それを突きつけられて呆然とする父親本人の姿。
それから、自分の息子の発達障害に由来する残酷さがその事実を更に浮き彫りにしてしまうことになったことに対する、親としての思い。
そういうものがない交ぜになって、きっとそこで腹を括ったんだと思う。
「別にいいだろ。あんた八百屋じゃないんだから」
この言葉で、寿三郎はちょっと救われたはずなんだ、きっと。
自分のおむつも替えてもらったことがないお父さんの介護をすると決めた寿一の「そういうもんだから」という一言で、この親子が25年間抱えてきた荷物が少しだけ軽くなったんじゃないかな。

そうか。
この静かだけど怒涛の物語のプロローグを語るには、このしっとりさが必要だったんだな。
くんく曰く、今まで思ってたこと全部喋ってきた長瀬くんに心の声を与えたことで、見た目のドタバタがなくなったんだな。
きっとここから先、トーンはこの調子で、どんどんいろんな感情が行ったり来たりしてくるんだ。
時間軸が行ったり来たりするんじゃなくて、感情が行ったり来たりすることになるんだな。

なぜならそれは、「家族」を描いているからだと思う。
「家族」なんていうのは、美しいものでも感動するものでも何でもない。
その人達が積み上げてきた、どうしようもなく人間くさくて、他人には絶対に知られたくない、恥ずかしいことだらけの歴史。それが「家族」だ。
そこをちゃんとわかっているから、くんくの描く「家族」はどうしようもなく哀しくて、どうしようもなく可笑しくて、どうしようもなく泣ける。
だってさ、まこっちゃんの母ちゃんも、ぶっさんの父ちゃんも、アキちゃんのママも、まりぶの父ちゃんも、みんなみんなどうしようもなかったよね。
そういえば、「流星の絆」の兄妹も、「11人もいる!」の家族も、「吾輩は主婦である」の夫婦も、「僕の魔法使い」のみったんとるみたんも、みんなとんでもなくヘンテコだったよ。
だけど、それでもみんな、家族なんです〜♫(ここ、源ちゃんの歌声で)

「クドカンが描く家族」なんて、どこかのネットニュースで読んだけど、悪いけどくんくはこれまでドラマで家族のことをいっぱい描いてるのです。
何なら毎度どこかに家族の物語がありましたよ。
それはなぜかというと、「家族があるから自分がいる」から。
「家族」なくしては、「その人」は語れないんだもん。

今回の「俺の家の話」はその家族の要として、西田敏行さんがいることが素晴らしい。
長瀬さんも素晴らしいけど、西田さんがいるからこそのあの雰囲気、あのリアルさなんだって思う。
さぁ、本当に楽しみなドラマが始まりました!
来週も乞うご期待です☺︎

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