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飯田泰之先生と投資入門③後半ー今ってバブル?/基本用語PER・ESPとは


第3回前編の続きです。さっそくどうぞ!

今ってバブル?? PERから考えてみる

飯田先生:一方で、この日経平均の上がり方を見てると「バブルなんじゃないの?」という人がいるんです。

いがらし:実際私もバブルなのか気になります。

飯田先生:これは、実際バブルを経験している人に説教してもらいたいですね。この程度でバブルなんて言ってるんじゃないよと。(笑)

いがらし:こんな程度じゃなかったんですね?

飯田先生:そうですね。これをよく表してくれるのが、典型的な株価指標である PER 指標です。

いがらし:「PER」とは。

EPSとは

飯田先生:まず会社って営業活動すると利益が出るじゃないですか。その利益を1株当たり利益に直したもの 、これを「EPS」(Earnings Per Share) と呼びます。
つまり、その会社全体の利益を発行株式数で割る、すると一株当たりいくら利益をあげてるか分かりますよね。これがEPSです。この利益のうち、一部は配当され株主に渡されます。もちろん配当狙って投資するというのも長期投資の一つの方法ですね。
ただ会社はそれだけではなくて、その自分が稼いだ額をもう1回投資に回すこともあります。つまりは株主に返しちゃうよりも、投資運用した方が良いというわけです。

その例えば飯田工業という会社が1億儲けました、とする。そのうち2,000万円くらいは配当しますが、残りの8,000万円は株主の皆さんに返すより、飯田工業に運用させてもらえませんか、と。新しい工場や営業拠点を作って、もっと儲けて返しますよと。これを内部留保と呼びます。

いがらし:内部留保って、株主に配当として還元する以外に投資をするってことなんですか?つまりただお金を溜め込んでるわけではないってこと?

飯田先生:そうなんですよ。いいパスをありがとうございます。笑
内部留保というのは、会社が上げた利益のうち、株主に配当しなかった分のことをいいます。なぜ配当しないかといったら、会社に任せていただいた方がもっと増やして返しますよということなんです。ただ企業の金庫に札束積んでるってことではないんですよ。

いがらし:現金積んでるイメージが強かったです。日本は大企業の内部留保の割合が高いからどうのこうのみたいなニュースを聞いたことがあって、なのでなんとなくあんまりいいことじゃないのかなと思ってました。
日本では高齢者の方々が貯金ばっかりしちゃってる、みたいなのと同じ感じで、大きい企業が保守的になりすぎて現金で溜め込んでるってイメージをしてたんですけど、決してそうではないということでしょうか。

飯田先生:確かに日本の大企業は保守的になりすぎているんじゃないかっていわれてますけどね。事業拡大ではなく債券や預金をもっているような内部留保はだめでしょう。
ウォーレン・バフェットという投資をしたことある人なら皆知っている「投資の神様」、彼は「配当するような企業に投資するんじゃない」と繰り返し言っています。
どういうことかというと、配当するということは株主に返しちゃうということですよね。
一方、内部留保で再投資するということは、返すよりももっとあとあと儲かる方法を我が社は持っていますという自信の表れであると。

いがらし:なるほどーーーー。

飯田先生: なのでバフェットは、配当を盛んにするような企業には投資するなと言っているんです。そういう会社はもう投資対象を見つけられない会社なんだと。結果的に萎んでいく企業なんだということですね。だから必ず長期で買うときは配当しすぎない企業を選びなさいという風にに言っています。
まぁバフェットが言っているからといって正しいかはわかりませんが、一理あります。

いがらし:そういう風に捉える人もいるんですね。

飯田先生:この1株当たり利益(EPS)っていうのは、だから配当されればすぐ株主のものに、内部留保されたとしてもいずれかの時点で株主のものになるわけです。

PERとは

飯田先生:その1株当たり利益の何年分が今の株価になってるかっていうのを表しているのが、「PER(株価収益率)」(Price Earings Ratio)です。
どういうことかというと、例えば一株あたりの利益10万円で、一方で株価が100万円だとしたら、ようは利益10年分の値段になってる(10倍の値がついている)状態、PER10ということになります。PER10ということは、利益自体が動くかも知れませんが、もし同じ水準であれば10年間その株を持っていれば購入価格分のリターンを得られてしまう、11年目からただ配当をもらえるだけになる。PERが20だったら20年分の利益と等しい値段で買ってるわけだから、20年目までは配当等を受け取って21年目からはただ受け取るようになる。つまり投資の回収期間みたいなものを表していると。

いがらし:ということはPERは少ない方がいいんですか?そんな単純じゃない?

飯田先生:そうなんです、単純です。それを低PER投資、少ないPERの株を狙った投資といいます。
ただ、あくまで低PERになっている株というのは今の利益は高いけど、将来仮に今の利益がずーっと同じだったならば何年間で資金回収できるかなので、結構低PER株ってこれから利益が落ちてくるだろうなと思われてる株も結構含まれてるので要注意です。

株の利回り=1/PER

このPERというのは、何年間で最初の購入価格がペイするかじゃないですか。またちょっとめんどくさい概念として、PERの逆数=1/PERというのが株の利回りになります。

たとえば、今の株価が100万円、毎年10万円のリターン(配当だけじゃなくて後々先送りされる部分も含めて)があるということは、これはPER10で、その逆数の1/10、つまり10%は1年間の利回りってことになります。
100万円で買って毎年10万円もらえる、利回り10%ですよね。なので1/PERが株の利回りなんです。
PER が20だったら1/20だから5%が利回り、何度か同じことを繰り返しますが、5%が利回りってことは20年で元が取れるってこと、20年で元が取れるのはPER20と。ここは同じ現象の裏と表みたいなものです。
さて、このPER 、今の日経平均についてはだいたい23から25くらいの間にあります。
そうすると日経平均全体の平均値としては、だいたい株の利回りが4〜4.5%の間ぐらい、1/23とだとすると、4%台前半、、まぁ4%以上利回りがあれば悪くはないかな。

いがらし:そうですね 〜

飯田先生:だって定期預金の金利なんて、まぁゼロって思っておけばいいやっていうくらいですよね。
定期預金ゼロの金利に対して、4%くらい高まっている状態なので、これは常識的な範囲の株高だと思われます。

ちなみにバブルの時のPERはどのくらいだったかというと、なんと60だったんですね。
ということは、1/60を計算してみてください、だいたい利回り1.6%ぐらいですよ。
ちなみにその時のゆうちょの金利いくらか知ってます?

いがらし:結構高かったんですよね?

飯田先生:そうです、たしか7%ぐらいあったんですよね。
絶対に元本保証されているゆうちょの利回りは7%、上がるか下がるかどうかわからない株の利回りは1.6%って異常事態でしょ。これはもうバブルだって言い切れるんじゃないかな。

どういう状況か僕も正直バブルの頃は中学生なのでわかんないんですけね。
PERの話とはちょっと関係ないけど、上念さん(※経済評論家の上念司氏)とかもそうですが、バブルの時にギリギリ社会人だったって人にバブルの話しを聞くよりも、その時に部長クラスだった人たちーー

いがらし:その時にもう40代50代になってた人たちですね。

飯田先生:そういう人からの話を今のうちにちゃんと記録しておくべきだと思うんですよね、いかにムチャクチャだったかを。笑

いがらし:札束がその辺飛び交ってたなんて話は聞いたことあります。笑

飯田先生:株の予想利回りが1.6%、なのにまだ株を買う人がいたんですよ。
株価が上がる、で、今買って少ししたらもっと高値で買う人がいるだろう、さらに俺が買ってもその後にもっと高く買うカモが見つかるだろうっていう。
企業の業績とか利益とか配当とか何も関係なく、必ずババを引いてくれるやつが無限にいるであろうと、それを大多数が思ってないと成立しない状況です。こうなったらバブルだなといっていいと思います。

今は定期金利に比べて、株は4%以上予想される利回りが乗ってるので、バブルだって言われても、そうかなぁ、違うんじゃないかと。
株価が上がってる、でも実際株価が上がったとしても下がることは普通にあります。バブルじゃないからまだまだ上がるとは思いませんが、今の状態でバブルって言われてもねー。
それこそPERが、単純には言えないんですけれども僕の個人的には、日経平均・TOPIXのPERが平均で30半ばになってきたらちょっと警戒領域ではあると思ってます。

いがらし:なるほど、そのときはバブルの可能性があるかもってことですね?

飯田先生:そうです。
これは日本株限定ですけれども、国債利回り(JGP:ジャパニーズ・ガバメント・ボンド)よりも4%くらい株の利回りが上の間は、そんなにバブル的な状況だとはいわないと思います。
ざっくりなんですが、日本人って安全な資産に比べて株くらい危険な資産には4%くらいは利が乗ってて欲しいみたいなんです。こういうのをリスクプレミアムといって、国民性によってもだいぶ変わってくるみたいなんですけど、日本では大体4%といわれてます。

いがらし:今の日本の国債の利回りはどのくらいですか?

飯田先生:0事実上0%。

いがらし:じゃあ今は、国債利回り0%に対して、株の利回りは4%代なので、ちょうど先ほどおっしゃってたくらいの差はあるわけですね。

飯田先生:そうなんです。だからそんなに特殊な状況にはなってないです。
これがさすがに3%を切り始めると、リスクあるのに3%しか有利なところがないものを買いますか?みたいな感じになってくるので、ちょっと心配してもいいんですが、今の段階だと、そこまで心配しなくていいと思います。
ただ留意しておくと、今のPERっていうのはあくまで各企業が予想している利益に基づいて、いわゆる各社の予想利益に基づいて、予想される PER を計算してます。ということは今後マクロ的に、コロナ変異株が実は死亡率がもっと高いみたいなことになってしまったりして、企業業績自体がガッと落ちてしまうとPERの計算の基礎である1株当たり利益(EPS)が下がるので、当然1株あたり利益(EPS)が下がると勝手にPERが高くなってしまう。

いがらし:予想の時よりも実際決算が終わってみたら、PERが変わってしまったということが起こりうるということですね?

飯田先生:そうですね。
ただですね、僕は個別株の投資の時は PER は気にしすぎないほうがいいよって言ってます。なぜかというと、個別株のパフォーマンスをはかるときに完全予見PERという指標があります。これは、投資家が仮に後から振り返ってみて企業業績を100%予想できていたらいくら儲けられたか、という数値なんです。
この完全予想収益率が最近あんまり高くない、つまり各企業の業績を全部完全に予想していた人がいたとしても、それによって儲けを得られる割合がほとんど無くなってきている。
ここ5、6年の傾向なんですけれども、さらに言うと日経平均以上にアメリカでの傾向なんですが、主客逆転というか、アクティブ投資をする人があまりにも減って、パッシブ投資をする人ばかりになったので、業績ではなくて株式市場全体でいくらお金が投下されたかによって株価が決まっちゃっている。なのでこの PER による個別銘柄の予想は、仮に企業業績をがっちり読み込んでいたとしてもあんまり意味がなくなってきている。あまり当たらなくなってきてます。
一方で僕は PER がすごく重要だと言ってるのは、インデックスをやる人間にとっては、日経平均のPERとかTOPIXの加重平均PERとかを見ることで、相場が加熱か加熱じゃないか、これを見極める手段になると思います。

いがらし:なるほどですね〜。

飯田先生:入門書には、よく逆で書かれていたりもするんですけどね。
個別をやる人はあんまりPERを気にしなくてよくて、インデックスやる人はちょっとPER気にした方がいいかなと思いますね。

いがらし:非常に参考になりました!
まさに私は、個別を買う時はPERとかの意味をちゃんと理解してそれに基づいて判断しなきゃいけないと思ってました!といってもまぁどうすればいいのかわかってなかったんですけど(苦笑)。
個別銘柄を買うときに絶対参考にしないといけない重要な指標や用語だって思ってたんですけど、意外とそうでもないんですね。

飯田先生:そうなんですよ〜、最近意外と当たらなくなってきちゃってるので。
これは本当に株式市場全体にとって致命的じゃないかって思うんです。やっぱり基本的にはパッシブ運用、インデックス投資の方が楽なんですよね、アクティブ運用に比べて調べることが少なくて大変じゃない。でもアクティブ運用する人がいるから、インデックス運用ができるんです。インデックス運用する人ばっかりになってきちゃったので、業績がしっかり予想できても個別株の株価を予想できないという、個別株の予想に役に立たないという、ちょっと変なことが起きている。
こういった注意点も踏まえてもらえるといいかなと思います。

いがらし:ありがとうございます!
アルファベットの横文字苦手でしたが、だいぶ頭に入ってきました。

さて次回でこのシリーズは最後!(さみしい!)
ここまで投資目的や運用スタイル、基本指標の意味など教えていただきましたが、最終回ではもうちょっとマクロ視点で大きくみた経済が株に与える影響や注意する点などについて伺いたいと思います。
ありがとうございました〜!

EPS(Earings Per Share)とは、会社全体の利益を発行株式数で割った、一株あたり利益のこと。
PER(Price Earnings Ratio)とは、株価収益率のこと。今の株価がEPSの何倍なのかを表す。例えば一株あたりの利益10万円で、一方で株価が100万円だとしたら、ようは利益10年分の値段(10倍の値がついている)状態。低PER株=割安株。
株の利回り=1/PER。今の日経平均は4〜5%程度。
今は国債利回り(実質0%)と株の利回りの差が4〜5%ある状態なので、バブルではないのではないか。この差が3%台後半まで下がってきたら警戒領域。



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