ローラ、行かないで。

これを書いている日の前日夕方、信じがたく、そして受け入れがたい訃報に接した。

なんでなんでなんでなんでなんでなんで。

私にとっては『キンキーブーツ』の素敵なローラ。男気も女らしさも100点満点の、憧れの人。誰もが演じられるわけではない複雑な役柄を、見事に乗りこなしていた人。
彼を見たのはたった一度、この主演舞台を観に行ったときだけだが、彼の魅力と才能を知るには十分だった。
その後、赤色をこよなく愛するローラに憧れて、それまであまり選ばなかった赤を選ぶようになったほどだった。

なんでなんでなんで。誰にも言わずどうして。

誰の死も望まれるべきではないというのは原則として、あれほど美しく若く、才能も未来もある人がなぜ死ななければいけなかったのか。

あまりにショックで、私まで死にそうになった。

誰も彼を救えなかったのか。誰をも惹きつけるその輝きの裏に、どれほどの闇を抱えていたのだ。自分の心を誰にも打ち明けず、闇に飲まれてしまったのか。

人々が自分に対して望み、求める姿と、自分の内の、誰にも見せることのなかった闇との差異の大きさに人知れず悩み、耐えられなかったのだろうか。

ひょっとしたら名優ゆえに、いつのまにか人々の望むままの「自分」という役を演じるようになってしまったのかもしれない。

私は、人々の望む姿と食い違っていても、ひとりの人間として彼に生きていて欲しかった。休業しても、引退してもいいから、命を捨てないで欲しかった。

冥福なんて祈れるわけない。

悪い冗談はやめて、早くあの世から彼を返してくれと頼みたい。


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