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「若葉の候、静黙な時間」の裏(メイキング)

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4月後半には桜の木もピンクから緑に変わり、ゴールデンウィークを過ぎる頃には暖かな陽気がやってきます。この時期の空気感って静かだけれど清々しさもあると思いませんか?
この、言葉で表せない雰囲気をイラストを通して伝えることができればと思い今回の作品を制作しました。


①言葉からモチーフを連想
今回はすでにコンセプト(清々しさの中にある静かに流れる空気感)が制作前からあったのでこのコンセプトから連想できるモチーフを考えました。
-空
-洗濯物
-本
以上が私が考えたモチーフです。


②ラフ制作
コンセプトと描くモチーフが決まったのでラフ制作に入ります。

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白黒(グレースケール)で制作していて最近気付いたのですが、この工程をラフの第1段階にしたことで作業効率とスピートが格段にあがりました。今までイラストが完成するまでがかなり遅かったのですが、こんなに時間かからずに納得いくものができるんだ!と目からうろこでした。
新しい試み(といっても学生の頃していたのですが…)によって得ることがあるのでイラスト制作は常に進化を求めてやっていきたいです。


③背景の線画
ラフを元に線画を描きます。建物って直線が多いですが、ほとんどを定規ではなくフリーハンドで描いています。

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私個人はフリーハンドで描くほうが味が出て自分のスタイルにあうなと思っています。パキッとしたイラストを描かれる方は定規で引かないと雰囲気が出ないものもあります。線は自分がイラストを描く時にどういう印象を与えたいかで描き方が大きく変わります。もちろん線画を全く描かれない方もいますしね(奥が深いから好きなトピックです)。


④人物修正
人物と本を私の思う正しいサイズ感に修正しました。「私の思う」という書き方をしているのは、サイズ感に真の正解がないからです。制作者が正解と思ったものが正解なんです (たぶん)。

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ここでパターンを2つ作りました。人物を収めるものと画面からはみだすものです。人物が画面内に収まっている左側は落ち着いた雰囲気がでます。反対に足を画面外に出している右側は、その先がどうなっているのかという想像がしやすくなります。今回はコンセプトに合わせて左側の収める構図で進めることにしました。


⑤大まかな色味設定
今回のイラストは時間軸を4月末から5月頭にしようと最初から決めていたので、新葉や若葉のイメージを出すために緑を色味に設定しました。
(色味設定と構図の決定を同時進行で行なっていたので、足が画面を出ている画像を使用しています。)

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実際は彩度の違うものを数パターン出していたのですが、画像を保存していなかったのでなんとかスクリーンショットできたものを下に貼っておきます。
彩度は作品の雰囲気を引き出す効果の1つです。今回はでも記述しましたが、落ち着いた雰囲気のイラストにしたかったので、彩度を下げてくすんだ緑の色味にすることにしました。

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(↑唯一引き出すことができたボツ案の色味)


⑥人物・本の線画
修正した人物の形を元に線画をおこします。

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ゆったりした時間が流れているイラストにしたかったので人物の着ている衣服もゆったりした感じのものにしました。ここで積み上がっている本の数を減らすことにしました。ラフのままだと積み上がりすぎてるなと思ったのもそうですが、背景の線と本の四角が接して接点が発生しないようにしたかったので変更しました。大学で何度も言われたものの1つに「Tangent(タンジェント / 接する)」があります。物体の頂点と線で接点を作ると無意識に人はそこに目がいってしまうと言われています。メインのものではないところにこの接点を作ると、折角のイラストもコミュニケーション力の欠けたものになってしまうのです。逆に注目して欲しいのなら思いっきりタンジェントを作ってしまえば効果抜群のはずです。
というわけで、私が学生の頃からタンジェントに敏感です。
(それでもタンジェントが発生してしまっていますが。回避できなかったのでせめて頂点が接さないようにと本を配置しました。)

⑦線画の描き込み
いつもと同じ流れで線を加筆していきます。

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ズボンは全体に線を描いた後、折り重なっている部分にも線を足していきます。細かいですが、物体全体に描く線と影の線は別物なのでそれぞれ別に描いてから線の重なりを見ながらどちらも見えるように線を描いていきます。


⑧色の決定
大まかな色味を決めた時に、若干黄色を空に配置したのですがそこが気に入ったのでもっとだいたんに主張させました。本の彩度も修正してあります。

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色の決定で迷ったのがズボンです。元々左でいこうと思っていたのですが、折角の描き込まれた線が見えなくなってしまい、線画が見えるくらいに変更するかどうかを考えるのに一晩寝かせました。改めて新鮮な目で見て、やっぱり線が見えるほうがいいなと思い、右の色にしました。


⑨着色と塗り込み
制作も後半に入ってきました。まずは背景から着色します。
線画が背景と人物とで分かれているので色も分けて進めていきます。

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床のよくわからない濃い茶色は人物と本の影です。間違って塗ってしまったものではないのでご安心ください。


引き続き着色です。人物と本の影は、茶色とオレンジの混ざったような色を使いました。

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さて、ここで質問です。上と下の画像の違いはなんでしょ〜か?

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正解は、窓ガラスの人物とカーテンの映り込みでした〜!

というわけで、窓ガラスが少し殺風景だったので映り込みをいれてそれっぽさを出すことにしました。ガラスって時間帯や角度によって見えるものが全然違うので表現の仕方は無限大だと思います。


⑩仕上げ
色を塗り終わってみると、緑感が薄れていたので、全体に上から緑のグラデーションをかけました。そして、テクスチャをかけて完成です。

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