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【第14回】エッセイ:あなたにとって快適な暮らしとは?(600字)

さまざまなジャンルの文章に、自分なりの赤ペンを入れていく企画です。マガジンの詳細については【はじめに】をお読みください。

第14回のお題は、前回に引き続き、暮らしネタです。

あなたにとって「快適な暮らし」とは? 「快適」を実現するための優先順位の高い要素を3つを教えてください(600字)

今回も、火曜日の夜に集まって本を読む活動「本よまナイト」とのコラボです。

本読まライティング部の3人の文章を紹介していきますね!

まず一人目は、ペンネーム「忍者」さんです。

私にとっての快適な暮らしについて重視したい要素は「自転車でのライフスタイルに適した環境が整っていること」「家の中に作業用のスペースが整っていること」「近隣に家とは違う気分で作業や読書ができるお気に入りの場所があること」の3つです。

私は自転車での移動やサイクリングが好きで、自転車に乗る頻度や距離が人よりも多いため、自転車中心のライフスタイルが実現できる環境を特に重視したいと思います。家に駐輪場や車庫があること。近所に気軽に修理やパーツの購入などの相談のできるサイクルショップがあることが重要になります。

次に、ライターの仕事やデザインの作業などが捗るような作業スペースが家の中にあることが重要です。パソコン、カッターマットや画材を置いて作業できるようなデスクと、長時間座っていても疲れないシンプルで腰なじみの良いイスを置けるスペースがほしいと思います。そして、好きな音楽を流しながらもくもくと作業ができればかなり快適です。

また、気分転換に外でも作業や読書ができるお気に入りの場所があるのが望ましいです。ゆったりと集中できるようなカフェやコワーキングスペース、寝転がってリラックスができるような芝生のある公園など、家の中とは違った気分に浸ることのできる空間があれば、より快適な暮らしをおくることできると思います。

このように私にとっての快適な暮らしとは、より個人的でプライペートな志向を持ちながら、それが完全に閉じない状態を実現することなのです。


私はこれを読んで、すごく等身大の文章でいいなと思いました。
忍者さんの生活スタイルが想像できます。

少しだけ、赤入れをしてみます。
冒頭の主語が分かりにくくなっているので、

私にとっての快適な暮らしについて重視したい要素は

快適な暮らしのために私が重視したい要素は

これでいいかなと思います。

600字の短い文章の中で「~思います」を3回使っています。作文っぽくなってしまうので、語尾を工夫してみてはどうでしょうか。

そして、欲を言うならば、内容に具体性が増すといいですね。

自転車に乗る頻度や距離が人より多い

こう書いてしまうと、人によってイメージに幅が生まれてぼんやりしてしまいます。


週に5日は自転車に乗ります。

東京から鎌倉までサイクリングしちゃいます。

というような情報が入ると、「すげ-!」「本当に自転車好きなんだな!」と忍者さんのことをより詳しく知れてうれしくなりますね。

同様に、作業ができるテーブルの広さってどれくらいだろう?
3歳児が寝転がれるくらい? 10人でホームパーティができるくらい?
腰なじみの良いイスに、クッションは敷くのかしら。それは何色かな?

作業中に流す好きな音楽って何だろう?
ヘビーメタルか、演歌か、あいみょんか?
読者が具体的にイメージできる「」が加わると、ガラっと文章の雰囲気が変わると思います。
その点では、「芝生のある公園」はとても良いですね!緑をイメージできる「」が効いています。

最後に、ラスト一文が惜しかった!!
要約しすぎてしまって、難しくなっちゃった感があります。
つまり、「自分の空間はしっかり確保しながらも、外とのつながりも持てるような暮らし」という理解でOKでしょうか。600字しか書けないので、敢えて最後にまとめなくても良いかもですね。


続いて、Hくんさんの文章を紹介します。


ていねいな暮らしにずっと憧れていた。

コーヒーを豆から挽いて淹れたり、ひと手間かけて朝ごはんを作ったり、ストレッチをして身体のケアをしたり。

日々忙しくて理想を実現できていないからなのか、松浦弥太郎さんの本が好きだからなのか。いつからかそんな暮らしに憧れを抱いていた。

ただ所謂“ていねいな暮らし”と、自分が心地よいと感じる暮らしは違うのかもしれない、と最近思うようになった。

ていねいであるに越したことはない。

だけどそれは手段のひとつでしかなく、そのていねいな行為を通して穏やかな気持ちでいられたらいい。わたしにとって心と体が緊張せずのびやかでいられることが快適な状態だから。

そのために一番大切なのは、ぐっすり眠れていること。

睡眠が足りないと集中できないしイライラするし、他人への優しさも減ってしまう。これは快適じゃない。

お腹が空いているのもよくない。力が入らなくてふらふらするし、朝ごはんを食べないと1日を気持ちよく始められないから。

パソコン仕事が続いて体をずっと動かせないことも窮屈でよくない。ずっと同じ姿勢でいると呼吸も浅くなって、筋肉が固まっていくのを感じる。

よく食べてよく動いてよく眠る。

大切なことはいつもシンプルだ。ただ忙しい毎日を過ごしていると、その大切なことが埋もれていってしまう。だから心が弱っているとき疲れているときこそ、思い出したい。

こころ穏やかでいられる快適な暮らしに近づく方法を。


内容の通り、とても手寧な文章ですね。
敢えてひらがなを多くすることで、やわらかさが出ています。
Hくんさんはnoteもよく書いているみたいです。さすが、文章を書き慣れている感!

それにしても、冒頭の「ていねいな暮らし」と読んだだけで、「暮しの手帖」と「松浦弥太郎」さんを連想できるから、言葉の力ってすごい。これが「丁寧な暮らし」だとまた全然イメージが変わりますよね。

それでは、Hくんさんの文章に赤ペンを入れてみましょう。

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