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スパーズ20-21財務レポートを読みたい①

こんにちは。昨日、スパーズの20-21財務レポートが発表されました。
今半分くらい読んだので、少しずつ感想などを書きたいと思います。

※11/26追記
£と€間違ってた…しの
直しました。

決算サマリについては、Swiss rambleさんが31スライドも使って述べてくれているので、これを読めばよくわかります!これが一番まとまっておる。

これすら読むのだるい人のために、簡単に和訳しますと、、

・コロナの影響はやばかった。それにCLじゃなくてELだったし、round16で敗退するし、リーグは7位だし。主にそれらの収益の減により、税引後利益£▲84Mとなりました。(前年は£▲64M)

・コロナ影響による収益減は1年で£▲133Mと見積もられてます。観客入場ありせばで換算すると、試合の収益はプレミア1位だと想定されるので、特にコロナ影響による損失が大きいクラブです。

・賃金は対前年で+13%増えましたが、相対的にはまだ安い方(収入に占める給与の割合が低い)です。選手の売却では、ベイル以来ビッグディールがなく特に稼げてはいません。

・EBITDAは世界最強クラスのユナイテッドと並びましたが、上述の影響でかなり対前年、対前々年で落ちました。

・放送収入は、前年の分が今年に計上されたりしているので比較しづらいですが、CLからELになって数年、着実に激減してます。UEFA賞金は半分くらいになっています。

・債務額は新スタ影響で相変わらず一人だけレベルが違います。借入し直して、返済期間は2051年まで延長されました。

・オーナーからの資金調達は一切ありません。レヴィ会長の役員報酬はユナイテッド会長に続いてプレミア2位です。

・とんでもない赤字決算でしたが、レヴィ会長のメッセージは明るく前向き。

レポートを読んで

ここでは、この全体感ではなく、私が読んで面白かった小ネタをシェアしたいなと思います。
引用が多いので文字数が多いですが、内容は短いです。

ちなみに、すべての引用はAnnual Report 2021からしております。

①フットボールは脆弱な事業

レヴィ会長のメッセージは良かった!これまでやってきたこととか戦略とか、今後の展望とか、

どんな記者の記事よりもわかりやすく、どんな記事よりも正確な情報なわけだから、ぜひぜひファンならいろんな人に読んでほしいなと思いました。SJさんも翻訳してくれていました。

https://spurs.sc/archives/financial-results-year-end-30-june-2021

綺麗ごともあるとはとても思うけど、理念とか方針がないとやっていけないわけで、そして本当に実行してきているわけで…
特にフットボールに投資するお金を作るため、新収入源に注力するっていうのは、そりゃそうだと思いました。企業ってそういうものでしょう。

新しい多様な収入源を開拓し、経常的な収入を増やします。会議、NFL、コンサート、ボクシング、ラグビーなどのサードパーティイベントは、その一例です。私たちは、これを実現するために上級管理職とスタッフへの投資を継続し、クラブの長期的な持続可能性を守るために、サッカーの収益だけへの依存度を減らすことを考えています。

フットボールが「脆弱で」「継続性が重視される」事業だってことが何度も出てくるのが印象的。

ほんと脆弱だよね、コロナ影響はもちろんそうだし、めちゃくちゃすごい取引や資金調達を成功させても、レギロンがぽろっとOGして勝ち点2失ったら、それで何十億もの損失が出たりする世界ですから…。(レギロンを責めるつもりはないです)

あと、strategic reportの35%くらいが環境問題への取り組みの記載で、うわあすごいと思った。時代!練習着とかペットボトルのリサイクルでできてるんだって。

②誰のかわからない特殊な給料がある

謎の項目がある…。

Onerous employment contractsは、直訳すると「面倒な雇用契約」。笑

ちゃんと訳すと有償の雇用契約?かと思われます。

有償の雇用契約に基づき発生する現在の債務は、引当金として認識され測定されます。有償契約とは、当社グループが、契約上の義務を履行するための不可避の費用が、契約に基づいて受領することが期待される経済的便益を上回る契約を有している場合に存在すると考えられます。

去年はなかったものなので、気になります。

※11/25追記

これモウリーニョなのでは?

確証が持てませんが、そんな予想をしました。
3年半契約であり、解任してもスパーズが給料を払い続ける契約なのでは?と言われていました。正確な額はわかりませんが、今ググると1年分で£15Mとか。

解任したのは4月末なので、月割するとこの額になってもおかしくない気がします。(ちょっと合わないけど)
「契約に基づいて受領することが期待される経済的便益」がどう計算されてるかによりますね。けっこう高く換算(=解任したことで皮肉にも収益アップが想定されてる)だったりして…

そうすると、来年度はここに£10M程度乗ってきそう。でも引当金なら20-21年度に£10M既に乗せとく気がするから…わからない。
どちらにせよたっかいな。

誰かのパフォーマンス給リスクが乗った分か?とも考えました。もし最後まで読んでわかったらここ更新します。


ちなみに引当金とは…(知ってる人は飛ばしてくださいね)

「未来にこれくらい費用立つでしょ!」と思われる費用を、その事象が起きた年度にまとめて立てちゃうこと。基本的に会計は保守的なので、一番最悪のパターン(費用がかかるパターン)で計上しとくことが多いです。20~30億の間のどこかだなーというものだったら、30億の方を採用するということです。

③やっぱり選手の減損は存在した

選手の減損判定ってどうやってるんだろー?とずっと思ってて、ググっても全然出て来なかったのですが、ちゃんと本家のレポートに明記されておりました。

※12/4追記
減損の説明が少し間違ってて、修正しました。すみません。

減損判定とは…(これも知ってる人は飛ばしてくださいね)

たとえば、2018年にエンドンべレを£60Mで獲得しました。その場合、その£60Mは何年かかるかわからないが収益で回収できる、と踏んで投資したことになります。

でも2021年現在、£60Mも価値ないのでは…?あれ、これこの先も回収できないな…?となるとします。(あんまり笑えない例)

これ、普通の企業であれば「評価損」という処理をします。価値が落ちてたらその分の損失をその年度に計上するのです。100万で買ったけど、もう今はどう頑張っても50万でしか売れないから、回収できない分の▲50万を今年度計上!みたいな。

でも、選手がもたらしてくれる収益とか価値って客観的な評価難しいですよね。結局移籍金というのは、本当の価値というよりも、関連する2クラブの交渉結果なわけで…(選手の移籍金は安くしとくけど、その代わり来年度のプレシーズンマッチの収益はうちの全取りね、とかするじゃない。そういえばやってないなプレシーズンマッチ)

だからそういう評価ってどうするのかなーと思っておりました。書いてあった!長い。

(d)  Impairment
The Group will perform an impairment review on the intangible assets if events or changes in circumstances indicate that the carrying amount of the player may not be recoverable. The Group compares the carrying amount of the asset with its recoverable amount.
The Group does not consider that it is possible to determine the value in use of an individual football player in isolation as that player (unless via a sale or insurance recovery) cannot generate cash flows on his own. Furthermore, the Group also considers that all of the players are unable to generate cash flows even when considered together. Accordingly the Group considers the smallest cashgenerating unit to contain all the other First Team players, the Stadium and the training facilities.
The Group calculates the value in use of this cash-generating unit by discounting estimated expected future cash flows (being the pre-player trading cash flows generated by the Group's existing operations and any future capital expenditure on the ground and First Team squad). The Group compares this with its assessment of the fair value less costs to sell of all of the First Team players and the higher of these two numbers is deemed to be the recoverable amount.
In certain rare instances there may be an individual player whom the Group does not consider to be part of the First Team squad going forwards and who will therefore not contribute to the future cash flows earned by the cash-generating unit. This is normally due to a permanent career-threatening injury or where Group's senior football management and Directors have decided the player is not part of the Club's long-term plans.
As a consequence of such situations the Group consider it highly unlikely that the player will play for the First Team for a significant part of the remaining duration of the player's contract. In such situations, the carrying value of the player is removed from the carrying value of players assessed as part of the cash-generating unit referred to above and instead this player will be assessed for impairment in isolation by considering his carrying value with the Group's best estimate of his fair value (less costs to sell). The Group estimate this using one of the following sources:
in the case of a player who has suffered a career-threatening injury, the value attributed to the player by the Group's insurers;   in the case of a player who is not part of the Club's long-term plans, then either;
i) the agreed selling price in the event the player has been transferred subsequent to the year end; or
if there have not been any bids for the player, management's best estimation of the disposal proceeds (less costs) of the player on an arm's length basis. This is determined by the Group's senior football management in conjunction with the Directors who wilt use their knowledge and experience and their view on the current transfer market as a basis for their estimation.

(d) 減損
当社グループは、プレーヤーの帳簿価額が回収できない可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合、無形資産の減損判定を行います。当社グループは、当該資産の帳簿価額と回収可能価額を比較しています。
当社グループは、個々のサッカー選手の使用価値を単独で決定することはできないと考えています。なぜなら、その選手は(売却や保険による回収を経由しない限り)単独ではキャッシュ・フローを生み出すことができないからです。さらに、当社グループは、すべての選手が一緒に考えてもキャッシュ・フローを生み出すことはできないと考えています。したがって、当社グループは、他のすべてのトップチームの選手、スタジアムおよびトレーニング施設を最小の現金生成単位と考えています。
当社グループは、この資金生成単位の使用価値を、予想される将来のキャッシュ・フロー(当社グループの既存事業から生み出される選手獲得前の取引キャッシュ・フロー、およびグラウンドとトップチームの選手団に対する将来の資本支出)で割り引いて計算しています。当社グループは、これをファーストチームの全選手の売却費用控除後の公正価値の評価と比較し、この2つの数字のうち高い方を回収可能額とみなします。
ごくまれに、当社グループが今後もファーストチームの一員ではないと判断し、したがって資金生成単位が稼ぎ出す将来のキャッシュ・フローに貢献しない選手がいる場合があります。これは通常、キャリアを脅かす永久的な負傷によるもの、またはグループのサッカー上級管理職と取締役がその選手をクラブの長期的な計画の一部ではないと判断した場合です。
このような状況の結果、当社グループは、選手が残りの契約期間の大部分においてトップチームでプレーする可能性は極めて低いと考えています。このような場合、当該選手の帳簿価額は、上述の資金生成単位の一部として評価された選手の帳簿価額から除外され、代わりに当該選手の帳簿価額と当社グループの公正価値(売却費用控除後)の最善の見積りを考慮して、単独で減損の有無を評価します。当社グループは、以下のいずれかの方法で公正価値を見積もっています。
キャリアを脅かす傷害を負った選手の場合は、グループの保険会社がその選手に帰属させる価値、クラブの長期計画に含まれない選手の場合は、以下のいずれかを用いて推定します。
ⅰ)年度末以降に選手が移籍した場合の合意された売却価格、または
ⅱ)当該選手に対する入札がない場合、独立企業間ベースでの当該選手の処分収入(費用控除後)に関する経営陣の最善の見積り。これは、当社グループのサッカー担当上級管理職が取締役と協力して決定するもので、取締役はその知識と経験、および現在の移籍市場に関する見解を見積もりの基礎として使用します。

すごいハッキリ書いてある!

〈トップチームの選手〉
個々の選手ではなく、トップチームとしていくらの価値があるかという判断をしている。
価値が下がった人も、上がった人も、まとめてチーム総合としてどうなのかという判断。

〈トップチームでない選手〉
長期的な怪我や、もうこの先もトップチームメンバーではないと判断された選手は、個々で減損判定する。移籍が決まればその金額となり、決まらなければフットボール担当上級職(パラティチ?)や取締役にて協議し妥当額を決める。

勉強になると共に、実際こういう選手はいたんだろうなと思いました。去年だものね、想像はつきます。

※11/26追記
その後、がっつり「2人減損した」って書いてありました。そんなん絶対ローズとガッザじゃん。。

選手は会計上、無形固定資産扱いなのですが、そういうややもするとモノに似た計上によるシビアさは、ここにもあると思います。
お前もう永久にトップチームにならないから!と宣言されると共に「減損判定したから!」となるのは私たちには想像もしがたい辛さだと思います。

④長期借入金が長期すぎる

スパーズは前年、長期借入金をより良い条件で借り直しています。

レヴィ会長のメッセージにありました。

純負債は7億600万ポンド(2020年:6億500万ポンド)で、平均金利は2.7%、返済期間は2051年まで延長され、負債の平均期間は22年以上に延長されました。

2051年!

2051年!!?!?

30年後か。今20歳の人は50歳、30歳の人は60歳なわけですが、そのときも元気にスパーズサポーターやってられますかね?笑

長期借入金でググるとわかりますが、事業にもよるものの普通は「長期借入金」は2、3年のことを言います。
(対義語は短期借入金で、これは1年以内に返さなきゃいけないお金のこと)
30年というのはとんでもなく長いです。

それだけ続く事業だと銀行からは評価されたということで、私たちも長い目で見守ってゆきたいなと思いました。

キャッシュフローも、最悪の状況(チーム弱すぎ+再度コロナで観客入れられなくなる)でも耐えられるよう試算して運用していると書かれていたので、きっと安心でしょう。

①はここで終わります。


②はこちらから。↓

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