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電気自動車(EV)はなぜ普及しないのか?

今、各自動車メーカーが電気自動車(EV=Electric Vehicle)の開発、製造でしのぎを削っていますが、果たして電気自動車って今のガソリン車と同じように普及するのでしょうか?

結論から言うと、理論的、効率的、コスト的に考えて不可能です。
電気自動車は普及しません。

主に以下の理由が挙げられると思います。

①バッテリーが動力源であるため
②急速充電器をいたるところに設置する必要があるため
③満充電するのに最低30分以上かかるため
④バッテリー原材料のコストが下げられないため
⑤毎日充電すると5年ぐらいで使えなくなるため

では、上に挙げた①~⑤について簡単に説明してみましょう。

①バッテリーが動力源であるため
ガソリンを動力源とするガソリン車に対して、電気自動車はバッテリーを動力源としています。
バッテリーにはさまざまな種類がありますが、電気自動車に使われるバッテリーは「リチウムイオン二次電池」と呼ばれるものになります。
それは、実用化できるバッテリーの中では一番体積効率、重量効率が良いからです。
分かりやすく言うと、バッテリーの中でも一番小さくて軽いと同時に高い電気エネルギーが取り出せるからです。
でなければ、自動車の駆動源として使えないでしょう。
しかし、このリチウムイオン二次電池は、蓄積できる最大エネルギー容量が理論的に決まっています。
負極にカーボンという炭素材料を使っているのですが、炭素原子が六角形状に結合していて、それが平面上に広がった層になっており、その層と層の間にリチウムイオンが取り込まれて充電される構造になっています。
リチウムイオンは六角形状の6個の炭素原子に対して1個取り込まれた状態が充電された状態になります。
この取り込まれたリチウムイオンが今度放電する時、すなわち負極の層間から正極に向かって出ていくときに電気エネルギーが取り出せるわけです。
しかし、全ての物事がそうであるように、このリチウムイオン二次電池には多くのデメリットがあります。
それが、次の②~⑤につながります。

②急速充電器をいたるところに設置する必要があるため
電気自動車を運転してバッテリーの容量が減少すると、充電する必要があります。
毎日家で充電できる環境であれば良いのですが、ちょっと遠出をしたりすると、ガソリンスタンドでガソリンを入れるのと同じように、途中でバッテリーを充電する必要がありますよね。
この時に必要なのが急速充電器です。
ガソリン車であれば満タンにするのに数分しかかかりませんが、バッテリーの場合、急速で満充電しても最低30分はかかります。
そして、急速で満充電すると、ゆっくり充電した場合に比べて充電効率が悪くなり、当然枯渇するのも早くなります。
夏場や冬場などエアコンを使うと消費スピードがさらに早くなります。

そのため、安心して遠出ができるようになるためには、日本全国のいたるところに急速充電器を設置する必要があります。
それこそ、田舎の人里離れたところでも、数百メートルおきに充電器を設置する必要が出てくるでしょう。
街中では、それこそ全ての駐車スペースに充電器を設置する必要があるでしょう。

ガソリンであれば、満タンにするのに数分しかかからないので、待ち時間もそれほど問題になりませんが、急速充電器で30分かかるとなると、特に行楽シーズンなどは街中のいたるところで、充電するための行列ができることになります。

新しい電気自動車が開発されたというニュースは頻繁に目にしますが、急速充電器がどこに何台設置されたとかいうニュースがほぼ皆無なのは、かなり心配ですね。

③満充電するのに最低30分以上かかるため
これは上の②ですでに書いた通りです。
あなたは、充電するだけで30分も待つことができますか?
そして、充電を待っている行列に何時間も並ぶことはできますか?

もっと早く充電できる急速充電器を開発すれば良い、と思われるかもしれません。
しかし、急速充電の充電速度が早くなると、抵抗が高くなるためリチウムイオン二次電池の構造上、充電効率がますます悪くなり、満充電してもすぐに枯渇してしまうため、頻繁に充電する必要が出てきます。

④バッテリー原材料のコストが下げられないため
電極材料は、黒い粉のような外観をしています。
この黒い粉にバインダーとか溶媒を入れて撹拌、ペースト状にし、ニッケル箔や銅箔に塗工して乾燥したものが電極(正極と負極)になります。

正極材料には、リチウム遷移金属酸化物というリチウムを含んだ金属化合物が使われています。
このリチウムは、レアアースとかレアメタルとか呼ばれる金属で、採取できる場所が世界中で限られています。
ボリビアのウユニ塩湖などが有名ですね。
もちろん、埋蔵量は無尽蔵というわけではありませんので、遅かれ早かれいずれ枯渇します。

負極材料には、カーボンという炭素材料が使われており、採取できる量が多いので、製造コストは正極材料のリチウム遷移金属に比べて安価です。
鉱山などで採取した炭素材料がそのまま負極材料として利用できるわけではなく、リチウムイオンが取り込めるグラファイトのような構造にするためには、何千度という超高音で焼成するプロセスが必要になります。
この時点でかなりの二酸化炭素CO2を排出しますので、脱炭素とは言えないですね。

これら電極材料の製造コストなどを含めた原価はガソリンに比べて高く、電気自動車の値段がガソリン車ほどには下げられない大きな要因になっています。

⑤毎日充電すると5年ぐらいで使えなくなるため
電気自動車のバッテリーは、運転して放電されれば当然充電される必要があります。
半永久的に充放電を繰り返すことができれば良いのですが、残念ながら、リチウムイオン二次電池は、充放電を繰り返すごとに充放電時の熱などで少しずつ劣化していきます。
劣化すると、満充電できる容量が少なくなり、また、放電してしまうのも早くなったりします。
そして、最終的にバッテリーとして使えなくなります。
携帯電話のバッテリーと同じですね。
仮に充放電が2,000回できたとしましょう。
毎日充電すると、2,000回/365日≒5.5年となり、頑張っても5年ぐらいで使い物にならなくなります。

ガソリン車であれば、10年~20年は使えるでしょう。
しかし、電気自動車は5年ごとに買い替える必要が出てきますので、当然車にかかる費用は増大することになります。

トヨタなどの自動車メーカーが以前MIRAIという、燃料電池を使った電気自動車を上市しました。
燃料電池はリチウムイオン二次電池よりも充電容量が大きいので、一回の満充電に対する走行距離はより長くなります。

燃料電池は、水素Hを原料とし、この水素Hが空気中の酸素Oと化学反応して水H2Oが生成されるときに発生する化学エネルギーを利用しています。
ですので、よく水素自動車とか呼ばれたりもします。

この水素Hをどうやって自動車に載せるかですが、水素ボンベや水素吸蔵合金、メタノールなどが考えられています。
ただ、水素は水素爆弾というものがあるように、引火すると大爆発を起こすという危険性をもっています。

また、残念ながら、燃料電池は、現在の技術ではうまく充放電を繰り返すことができないという課題があります。

長々と書きましたが、要するに結論を言うと、電気自動車がガソリン車のように普及することはまずないでしょう。

では、なぜ政府は将来的にガソリン車の製造を生産中止にして電気自動車に変えようとしているのでしょうか?

理由はさまざまあると思います。
単純に自動車から排出される二酸化炭素や有害物質をなくすことで、地球温暖化を緩和できると信じているのでしょう。
しかしながら、バッテリーを充電するのに必要な電気は発電所で作られているので、充電するということは、その分発電所で二酸化炭素を排出していることになります。
また、電極材料を製造するプロセスで大量の二酸化炭素が排出されます。

その他、私はよく分かりませんが、政府や企業が結託してやるわけですから、当然、環境利権のような「大人の事情」的な理由もあるでしょう。

では、電気自動車が普及できないことが分かったところで、将来的にどういった流れになるのでしょうか?

私の推測ですが、おそらく、ガソリン車から電気自動車へ完全に移行することが難しいということが分かり、何らかの緩和策が講じられることになるのではないでしょうか。


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