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【エッセイ】私たちの先生が「時の人」となった

カルチャーセンターの「エッセイ講座」に通っています。
そこで出会った前講師と旧受講生が、
エッセイを書くことの楽しさを教えてくれました。
先日、久しぶりに再会できましたので、
そのときのことを書いてみようと思います。


「本当にありがとう。僕は幸せな男だよ」

河崎先生のこの言葉を聞いたとき、「お祝い会」を開催してよかったと思った。「令和のわらしべ長者」となった先生を、旧受講生たちと祝うことができて本当によかった。

2019年、河崎先生による「令和版わらしべ物語」が始まる。

朝日新聞の投稿欄に、亡き奥様の遺品を手放す真情を吐露すると、多くの励ましや賛同の声が届いた。「泣ける」「前向きに終活できそう」とSNS等で大反響を呼び、あっという間にラジオ放送、テレビ放映、新聞特集、私たちの先生は「時の人」となった。


とても驚いたのは、先生がジャーナリストの田原総一朗と対談し、その記事が雑誌『婦人公論』に掲載されたこと。

そして、極め付きは単行本『感謝離 ずっと一緒に』(双葉社)の出版。


先生と奥様の出会いから別れまでのストーリーが本から飛び出し、映画化までされた。映画館で観た先生は、尾藤イサオが扮していて、風貌が違いすぎたが……。

 

河崎先生に出会ったのは、2008年。エッセイ講座が開講したのは、その年の1月。私は少し遅れて10月に入会した。

あのころの講座は、和気あいあいとした雰囲気の中に緊張感もあった。「エッセイを上手に書きたい」という気持ちがぶつかりあうような合評をしていた。まさに切磋琢磨。

ここで思い出すのが、旧受講生笹塚さん(仮名)の教室への向き合い方だ。1ヵ月前に配られる全ての受講生のエッセイを読み込み、気になるところにはたくさんの赤を入れて教室へやってくる。推敲の大切さを教わった。

同じく旧受講生の金山さん(仮名)のエッセイは、詩人・茨木のり子に通じるものがあって、どこにも「倚りかからず」、「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」と言っているようで、気持ちの良い読後感があった。

2010年9月、私は仕事との両立が難しくなり、本講座を退会した。

それからの10年は、エッセイの題材がたくさんあったのに、1遍も書くことなく、目先の仕事に忙殺された。その間、安齋さん(仮名)は私に年賀状を送り続けてくれた。そのおかげで、年に1度は「いつか、また書きたい」と思うことができた。

2019年4月、安齋さんに背中を押してもらって、本講座に復帰する。

講師が麻野先生(仮名)に代わり、受講生も様変わりしていた。初期受講生は吉野さんと安齋さんの二人だけ。心細かったが、麻野先生のお人柄に魅かれ、通い続けて現在に至る。

私が復帰できたのは、吉野さん(仮名)のおかげでもある。15年、1度も退会することなく在籍しエッセイを書いていた。受講生が少なくなって、講座が消えそうな時期も、麻野先生と共に守ってくれた。

復帰した私が、受講生たちとの「エッセイ集」の紙面づくりに関われたのも嬉しかった。第五号まで、よくぞ続けてくれました!

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話をお祝い会に戻す。

会場のレストランは、江川さん(仮名)が探してくれた。河崎先生へのプレゼント、木星をかたどった照明も同じく。

江川さん、吉野さんとしゃべっていたとき、私はつぶやいた。
「河崎先生のお祝い会をしたいなぁ」
それがこの二人のおかげで形になった。

旧受講生の舘さん(仮名)は、「平和の折りバラ福山ローズ」を折ってきてくれた。私たちのエッセイ集に寄稿された作品に出てきたので、一度見たいと思っていた。1枚の折り紙が丸みを帯びながら立体的なバラの花になっているのが不思議だ。花は4センチも立ち上がっている。

私たちは青と黄色1つずつプレゼントしてもらったので、誰ともなく胸につけ始めた。それが昔の連帯感を思い出すのに一役買った。青と黄色、ウクライナにも思いを馳せて。

野菜中心の料理を食べながら、私たちは大いにしゃべった。12年ぶりに会う人もいたから、話は尽きない。あっという間に2時間がたち、恒例となったお開きの儀式をする。

「左右の人と手をつなぎましょう」

河崎先生がそう言うと、私たちはレストランのテーブルに座ったまま、大きな輪を作った。左右の手を通して、以前と変わらない「みんな」が伝わってきた。

輪の中には鬼籍に入られた旧受講生の西村さん、繁永さん(仮名)もいてくれたと思う。きっとそうだ!

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前出の「令和版わらしべ物語」だが、まだ続いていた。映画化された単行本が、中国語に翻訳されて、中国で出版されたという。令和のわらしべ長者、次はどこへいくのだろう。

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平(たいら) はられ🌈
最後まで読んでくださり、ありがとうございました m(__)m あなたの大切な時間を私の記事を読むために使ってくださったこと、本当に嬉しく有難く思っています。 また読んでいただけるように書き続けたいと思います。