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モスクワの新しい地下鉄の駅 Part-1

モスクワ地下鉄は駅の建築と装飾の豪華さが有名で、それを目的に観光ツアーが組まれているほどです。
地下鉄の駅に、大理石が惜しみなくに使われ、芸術的な絵が描かれ、銅像が建てられている駅も少なくありません。
 
モスクワの地下鉄の歴史を紐解くと、その建設が始まったのは、1931年でした。
最初の地下鉄が開通したのは、1935年です。
 
当初地下鉄は、「人民のための宮殿を作ろう!」をコンセプトに建設が行われました。
そのため、地下鉄の建築は記念碑的で厳粛なものでした。
「革命広場」、「マヤコフスカヤ」、「テアトラルナヤ」の駅は、建築思想の傑作です。なお、1939年、マヤコフスカヤ・プロジェクト(建築家A.N.ドゥシュキン、画家A.A.デイネカ)は、ニューヨーク万国博覧会でグランプリを受賞しました。
 
日本ではどうしても、機能実的な面を助押しして建設された地下鉄の駅ですが、モスクワでは、別の観点に注目されて建設されているようです。
そのため、駅のホームでの、宣伝広告もほとんど見当たりません。
駅のコンセプトに従って、全体のイメージの統一に注意が払われているようです。
 
モスクワ市の専門家が、モスクワの地下鉄の発展について、10年ごとにまとめています。
1931年〜1940年:人民のための宮殿をモットーに建設。
 (合計24.25Kmの路線が敷設され、22の駅が建設された。)
1941年〜1950年: 戦時中は駅を防空壕として利用。
 (合計で、19.66Kmの路線が敷設、13の駅が建設された)
1951年〜1960年:ラグジュアリーからシンプルに。
 (合計33.5Kmの路線と21の駅が建設された。)
1961年〜1970年:1950年代に行われた簡素化の過程が継続。
 ガラスのロビーのある駅と40本の柱が2列に並ぶプラットホームが登場。
 (合計58Kmの地下鉄が敷設され、31の駅が開業。)
1971年〜1980年: 地下鉄は郊外に向かって延び続けただけでなく、半径をつなぎ、
 環状線内の空間を埋めた。
 (合計52.8Kmの線路が敷設され、30の駅が稼働した。)
1981年〜1990年: ソ連の友好国の建築家や技術者がモスクワの地下鉄の駅をデザインしている一方、ソ連の設計者はプラハのモスコフスカヤ駅の建設に従事していた。
その後、 ペレストロイカになり、地下鉄建設のペースは鈍化した。
 (1980年代には合計46.5Kmの線路が敷設され、28の駅が開業した。)
1991〜2000年: 1990年代には、地下鉄の建設は急激に縮小。
 困難な10年間、国庫にはほとんど資金がなかったため、多くの地下鉄駅を自費で建設しなければならなかった。
 (前世紀の最後の10年間で、地下鉄は32.8Kmと19の駅に増加した。)
2001〜2010年: モスクワを超えて新世紀には、地下鉄路線は住宅地だけでなく、モスクワ環状道路を越えても延長される。
 建築の進化。デザインは革新的なスタイルで変化した。
(新世紀の最初の10年間で、37.5Kmの線路と21の駅が建設された。)
2011年以降:今日、地下鉄は最も遠隔地までつながり、モスクワ市民の生活を大幅に簡素化している。
また、2016年、都市鉄道「モスクワ・セントラル・サークル」が開通し、地下鉄の路線に統合した。
 
そして、忘れてはならないのは、2023年3月にモスクワ地下鉄の最新の路線である大環状線全線の運行の開始。2012年の建設開始から11年、2018年の部分開業から、5年を経て全線が開通しました。
全長は70Km。環状地下鉄としては世界最長となるそうです。
 
ソ連邦時代の地下鉄の駅は、建物や内装の豪華さで注目されることが多いのですが、今回は、あまり、海外では話題になることのない、ロシアで建設された新しい地下鉄について紹介する動画を撮ってみました。
 
■ボロンツォフスカヤ(2021年12月開業)
黒の壁面にオレンジのラインが素敵な駅。プラットフォームの天井は、11,600枚のアルミニウム製の「プレート」で構成されています。天の川のような感じが出ています。また、柱も独特のデザイン。撮影時は、別の地下鉄から乗り換えし、エスカレーターでホームに降りたのですが、ホームを降りた瞬間、ワオっていう感じでした。
 
■ノバタルスカヤ(2021年12月開業)
天井からつるされた黄色とオレンジのガラスパネルが特徴の駅です。
ノバタルスカヤは、ロシア語でイノベーションを意味します。
駅は、モスクワの地下鉄の歴史上初の、合わせガラス製の釣り天井がデザインに採用されました。ガラスパネルは、3色のオレンジのフィルムで飾られています。天井からつるされた色ガラスが独特な雰囲気を醸し出しています。
 
■ミチューリンスキープロスペクト(2021年12月開業)
中華風の内装。それもそのはず、中国の会社が建設したそうです。中国文化の幸運と幸福を象徴する赤と、照明のパネルの象形文字。幸福の幸の文字がアレンジされています。
撮影日は、大環状線から別の地下鉄の路線へ移動しました。動画には出していないのですが、途中で、ブリヌイ(ロシアのパンケーキ)の自動販売機があり、試しに食べてみたら、結構美味しかったです。
 
■ノボペレジェルキナ (2018年8月開業)
ハイテクと、古いロシアの様式を組み合わせたデザインです。柱はステンレス鋼。床は、花崗岩のパネルです。メタルを全体にあしらった駅の感じがハイテク感を出しています。
 
■ラスカゾフカ (2018年8月開業)
図書館を彷彿させるインテリアデザインです。ホームの壁に図書館の本棚を飾り、柱はファイルキャビネットの箱です。柱には、作品のタイトル、作者名、QRコードがマークされています。スマホでQRコードから本をダウンロードすることが出来ます。
地下鉄の駅を図書館に見立てる想像力は素晴らしいと思います。
 
■プイフチノ (2023年9月開業)
地下鉄の駅に飛行機の模型が飾ってあると聞き、最初信じられませんでした。
この駅のデザインモチーフは、航空がテーマ。空港へ近いことと、有名なロシアのパイロットや航空機設計者に因んで名付けられた通りによって説明されます。
この駅で、電車からホームに降りた途端、天井から吊るされた、飛行機のタービンのような照明、ホームのベンチに感動しました。ホームのオレンジの壁には、ANT-3から、Tu-160まで、ロシアの歴史上のさまざまな飛行機が描かれています。
地下鉄がホームに入ってくるたびに、飛行機が到着したような錯覚にとらわれてしまいそうです。
ホームからエスカレーターに乗ってみました。天井には、ソ連のコンコルドと呼ばれたTu-144の模型がつるしてあります。天井の段々の模様が、何か、このまま宇宙に飛び立って行くような気分になります。
 
 
■エアポート ブヌコボ (2023年9月開業)
ブヌコボ空港の駅のホームは、滑走路をイメージするような印象を受けます。壁には、世界地図と飛行機の絵。そして、ソ連の航空機設計者A.N.ツポレフと、ソ連・ロシアの航空機設計者A.A.ツポレフ親子のポートレイトが描かれています。
 
■アミニエフスカヤ(2021年12月開業)
柔らかな波を打った天井に輝く照明。星空の下にいるようです。
この駅は、あまり期待していなかったですが、ホームの天井の美しさに心を打たれました。ダークブラウンの花崗岩の柱は、灰色の花崗岩の床とぴったりです。
 
■ダヴィドコヴァ(2021年12月開業)
この駅は、非常事態省の本部の近くにあるそうです。ホームの壁は、非常事態省で働く救助者に捧げられているそうです。壁には、災害のシーンや、ダイバー、消防士、その他の救助隊員の活動のシーンが描かれています。非常事態省のカラーである、白、青、オレンジが使われています。明るいオレンジ色の壁が印象的です。
 
 
以上の9駅を取材しました。動画として記録しましたので、どうぞご覧ください。


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