Déconfinement(外出制限解除)①
2020年5月11日、約二ヶ月に渡ったconfinement(外出制限)が解除された。
ちなみにどの辞書をひいてもdéconfinementという単語はない。今も私がそれを打つたびにパソコンがスペル間違いと認識してご丁寧に赤線を引いてくれている。外出制限開始から二週間ほど経ったある日に義家族とテレビ電話をしていた際「Quand on est déconfiné...(外出制限解除されたら…)」と義母がいい「なにその単語!勝手に造ったの?(爆)」と笑っていたが今やみんな使っている。更には願わくば存在しないで欲しいが「réconfinement(ré=再び=再外出制限)」という単語まで出始めている。
さて、déconfinementを前にしてもフランスの新規感染者は毎日600~700人はざらで、私は全然まだまだ外に出る気はなかった。今まで通り夫と週替りで二週間に一回買いだめする生活を続ける気満々だったのだが、5月11日、私はメトロの中にいた。なぜか。
外出制限中、月曜日は生徒にオンラインレッスンを行っていたのだが、その前の週、夫の会議の時間と重なり前日になって時間変更をお願いした。その翌週5月11日の前夜、再び夫が明日会議があることを告白した。なぜいつも前夜に言ってくるのかと腹が立った。しかも今回は昼過ぎから三時間半に渡るというではないか。レッスン時間変更するにも昼ごはんの時間か夕食前にあたってしまってなんだか申し訳ない。しかも2週連続だ。というわけで「時間もしくは日程変更か、メトロを乗り継いで行くのが気にならなければ明日予定通りの時間に伺います」と申し出たところ「ではおいでくださいまし」ということになったのだった。
5月11日、朝から無駄にドキドキした。メトロの運行状況は70%、乗車するのにも人数制限があると聞いていたので無駄に早く出発した。結果4~6分に一本は来たし、「座ったらアカン」スティッカーが貼られている車内はガラガラだった。
途中向かいに座ってきたおばさんが大声で電話していて、前のめりで足も組んでいたので窓側にいた私が降りる時に少し触れてしまって「Ah"hhhhhhhh!」と吠えられたがそれ以外は問題なしだ。しかも全線において60駅も閉鎖(これはなんのためなのかよくわからないが)しているので急行の如く次々と駅を飛ばしていきなんと1時間前に着いてしまった。通常で生徒宅まで1時間かからないのに1時間前に既に着いているなんていくらdéconfinement初日だからって気合入れすぎである。更には最悪なことに着いた辺りから猛烈な尿意をもよおしていた。普段ならカフェでもなんでも探し出して乗り込むのだが、外出制限解除した今日からもまだまだ飲食店は営業禁止なのである。テイクアウトはしているがテイクアウトだけの営業店がトイレに入れてくれるか定かではない。
その日気温は15度以下。寒くて余計に尿意が積もるのでスーパーでとりあえず時間を潰すことにした。入り口にはアルコールジェルが設置されており真っ先に手に塗った。そしてやっとこさレッスン時間になりお邪魔するやいなやトイレをお借りした。手を洗うのが先かアルコール除菌するのが先がトイレが先か、尿意のことしか頭になかったので多分順番を間違えたと思う。
トイレも無事済ませ、生徒と久々の再会であった。トイレ問題はあったにせよ、実際に聞くレッスンの方が数百倍楽だった。音のノイズや割れもないし、楽譜を指差しながら指導できるし、拍を取りながら弾かせても時差はないし、何をとっても最高だった。オンラインレッスンも出来なくはないことを知ったので本格的に始めようかとも思っていたがその思いはすぐさま打ち消された。交通費と時間がかかってでも私は行きたい、行かせてください←
帰りのメトロは行きより若干混んでいた。「座ったらアカン」スティッカーも座ってしまえば見えないので皆さん無視して座っていた。マスクはさすがに全員しているので(というかしてないと¥15,000くらいの罰金)そこはまだ安心だ。
しかしその夜私は眠れなかった。ウイルスが身体のどこかについてしまっているかもしれないという疑念が拭えず、なるべく夫から離れた。メトロのドアを開けるボタンを触った手で顔や髪を触ってしまったかもしれないし、椅子や壁にもたれかかって服に触れて持ち帰って来てしまったかもしれない。
翌朝、私はシーツと枕カバーを全て洗い、外から帰ってからシャワーを浴びるよう朝シャンから夜シャンに切り替えた。