②バーナンキ次期FRB議長は「金融の神様」になれるのか?

(この記事は2005年10月26日に書かれたものです)

ブッシュ大統領は10月24日、アメリカの金融政策を決めるFRB(連邦準備制度理事会)の次期議長にバーナンキ氏を指名しました。バーナンキ氏は現在CEA(大統領経済諮問委員会)の委員長です。このCEA委員長には実は数ヶ月前に就任したばかり。それはFRB議長就任への布石だったのでしょうか?

 バーナンキ氏指名について金融市場は大方歓迎ムードのようです。ひとつにはもともと有力候補であったこと、そして金融政策の知識には長けていること、さらに大きなポイントとしては予想以上に早い任命だったことです。

 現在のFRB議長であるグリーンスパン氏は「金融の神様」とまで言われているほどの人物でした。もともとグリーンスパン氏は民間のコンサルタントを経てCEA委員長に就任。その後1987年にレーガン政権時にFRBの議長に指名されました。FRB議長に就任後、まもなく株式相場が大暴落したブラックマンデーに直面したのでした。そうした時代をくぐり抜け、2001年以降は金利の引き下げを実施。同時多発テロを経て景気拡大局面を迎え、去年からは利上げを続けインフレを抑制してきているのです。任期は来年の1月末まで。実に18年半もの長きに渡る任務期間ですね。

 そのグリーンスパン氏は現在79歳。議会証言などは朝10時ごろから始まって正午を過ぎ、午後1時すぎまで議論が続くことがあります。それでもグリーンスパン氏は疲れ一つ見せず自分の経済政策、経済の現状認識を語り続けていました。こうした議会証言はテレビでも生中継されるのですが、見ているわたしたちが疲れてしまうほどです。「エコノミストの性分として経済のことを聞かれればいつまででも話していられるものなんですよ」と知り合いのエコノミストの方が以前おっしゃっていましたが、まさにその通りなのです。

 グリーンスパン氏の後継者としてバーナンキ氏の手腕やいかに?実際の実力が発揮されるまでは多少時間がかかるだろうと言われています。グリーンスパン氏があまりにも偉大すぎるため、今後は比較されることも多いはず。直面する課題は何といっても景気と物価の安定。原油価格はいまだに高止まりしていて卸売物価、消費者物価もじわじわ上昇しています。まだ変動の激しいエネルギーなどを除くコア物価では安定していますが、これがいつ跳ね上がるか予断は許さない状況です。近いうちにかなり難しい舵取りが求められるのは間違いないでしょう。そのときがバーナンキ氏の腕の見せ所かもしれませんね。

 25日付のワシントンポストはバーナンキ氏の能力について高く評価しています。ただ、危機管理においてはまだ経験不足だとも指摘しています。というのもバーナンキ氏はFRBの理事となったのが3年前。CEA委員長はわずか4ヶ月ということでその間は金融市場で危機的な状況は特に無かったとしているのです。そのため今後、外国債券の債務不履行や大型ヘッジファンドの破綻など色々な金融危機が起こる可能性もあるとして、議長は重責を担っていると記しています。

 ちなみにバーナンキ氏はマサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学の博士号を取得した後、プリンストン大学で教授として金融政策の研究を進めてきました。そんなバーナンキ氏の持論は「中央銀行のインフレ目標設定」。FRB議長就任後、インフレ目標を設定するのか・・?市場の関心事となっています。

 グリーンスパン氏はこれまで「市場との対話」をとても重要視してきました。マスコミには決して何も語らない議長でしたが、市場とは常に対話していたとのこと。その対話から市場は何を求めているのか、そして消費者は何を望んでいるのか、企業は何を欲しているのか・・・色々な金融政策が見えてきたのでしょう。バーナンキ氏なりの「市場との対話」に今後期待したいところです。そうこうしているうちに何年か経って「金融の神様」と言われる日がくるのかもしれません。

それにしてもバーナンキ氏は51歳。グリーンスパン氏のFRB議長就任時(61歳)よりも10歳若い・・・。これはかなりの若返り?これも何かの方向転換なのか否か・・・。金融政策は深読みすればするほど色々な可能性が出てきて面白いものです。 

2005年10月26日 https://plaza.rakuten.co.jp/ismaririn/diary/200510030000/ 


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