mar-マール猫エッセイ(24)正義のみかた
いつも自分のチンケな正義感に執着しては、組織のなかでうまく振る舞えなくて、凹んでいるハルさん。
さすがに癒しが得意な猫でも、もう少し賢くなったらどう?と言いたくなります。
「マール、あんたみたいに賢く生きられたらいいんやけどね」
ほめられてるのか貶されてるのか、なんとも微妙な言い方をしては、大きなタメ息です。
またもや何かあったのかねぇ。膝の上で耳を傾けます。
あっ、これはあたしがハルさんちに来てから少し経った頃のおはなしです。
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どうやらハルさんの同僚の看護師、患者さんからの苦情が多いらしいんです。パッと見はバカ丁寧なもの言い、態度らしいんだけど、そこに「愛はあるんか」と患者さんには映るらしいんです。
何て言うのか、昔の音声のない映画を見てるみたいで、ニコニコしているけど、心の中は《面倒くさいなあ》みたいな。その心の声が患者さんや家族さんには駄々漏れみたいなんですね。
そこで、師長さんという病棟のお偉いさんに苦情がきます。すぐにその看護師の言い分を聴くなり、謝らせに行くなりすればいいのにとハルさんは思っているようですが、そうはしない師長さん。
苦情がたくさん貯まるまで保留して、一気にその看護師を問い詰めたらしいんです。もう記憶にも記録にもない、何ヵ月も前のことを聞かれても覚えてない看護師。
どっちもどっちだけど、そのやり方がどうも許せないハルさんはモンモンです。
「彼女が間違いを正す機会は、与えるべきだと思います」
師長さんとかいう人の正義は、自分の病棟を守り、持続させていくこと。そうでないと、師長としての評価とやらも落ちるし、自分の居場所もなくなります。
その看護師さんにも、ハルさんにも、みんな自分なりの正義ってもんがあります。でも、個人の正義は組織を守る正義に負けちゃうのかしらねえ。
まあ、結局は負けちゃうんだけど。困ってる人の役に立ちたい!というハルさんの正義、まずは目の前にいる父上さんと猫のあたしの役に立つこと、それでええんちゃう。
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結局、その看護師さんは看護の仕事は辞めたけど、結婚をして、家庭を持ったそうです。何が幸せの扉を開くきっかけになるか、わかりません。
ところで、猫のあたしの「正義」って?
そんなもん考えたこともないけど、そもそも正義って美味しいの?
to be continued