有機栽培とは
最近、肥料価格や農業資材の高騰、SDGsなど環境問題への関心の高さから、有機栽培への注目が高まっているようです。
有機栽培というと、大抵の場合にセットに付いてくるのが「安全」「安心」という言葉です。
有機栽培の農家さんの中にも、それを売りにしている人を見受けます。
なぜ、有機栽培の野菜は安心・安全と言われるのか。
まず、「有機栽培とは」という話になりますが、この言葉通り受け取れば、「有機肥料を用いる栽培方法」という意味になります。
では有機肥料とは。
ヒトや家畜など動物の糞だったり、落ち葉や籾殻、藁、おがくずなど、自然界に存在する有機物を発酵させ肥料化したものを指します。
つまり、自然界に存在する有機質を肥料として活用する栽培方法が有機栽培です。
一方、有機栽培ではない、一般的に多くの農家が行っている栽培方法は何なのかと言うと、慣行栽培と呼ばれる栽培方法になります。
慣行栽培は、主に化学肥料を用いて行われる栽培方法ですが、化学肥料とはどんなものかというと、自然界にある鉱物や有機物から化学的に成分を精製した肥料になります。なにか人工的な化学物質が原料となっているわけではありません。
以上、ざっくりした説明ではありますが、自然界にあるものを微生物の力で肥料化したものが有機肥料であり、有機肥料を用いて行う栽培が有機栽培と呼ばれ、同じく自然界にあるものから化学的に成分を精製した化学肥料を主に用いて行う栽培が慣行栽培となります。
この、有機栽培、慣行栽培の違いにおいて「安全」や「安心」という差はなさそうに感じませんか?
肥料という面から見ると、有機肥料はまず畑の中で微生物により分解されて植物が栄養として吸収出来るかたちになって初めて肥料として有効化するため、効果が出てくるのに時間がかかる一方で、効き目が長く続くという特徴があります。
化学肥料は、すでに植物が吸収できる成分で構成されているので、畑に撒いて水で溶け出せばすぐに効果を発揮します。そのため効き目が短いものが多いのが特徴です。
また、肥料の成分という部分では、有機肥料は途中で微生物が分解するプロセスが畑の中の微生物の種類・数・微生物が活動しやすい地温などに影響されるため、どの成分がどのくらい植物に吸収されるか把握しづらい面があり、化学肥料は成分が調整されているため、どのくらい畑に成分を撒いたか、把握しやすいという違いがあります。
でもやっぱりそれらで「安心」とか「安全」という差にはならないですよね?
野菜を栽培する際に、有機肥料のみで行うのか、化学肥料も使って行うのか、という部分では実はまったく健康に関する差はありません。
化学肥料の中に有害な化学物質などは含まれていません。
多くの人が誤解されている部分ではないでしょうか。
野菜の味に関しては、有機肥料は、分解されて色んな成分を畑に還元するので、なにか微量な成分が複合的に働いて、野菜の旨味に繋がるものもあるのかも知れません。
これは化学肥料にはない部分です。
では一体なぜ有機栽培が健康に良いと思われているのか。
有機栽培が健康に良いと思われている理由の一つ、それは「有機栽培に関する定義」が関係していると思います。
国際的に色んな国々で「有機栽培とは」という定義があり、日本にも日本の「有機栽培」の定義があります。(厳密にいうと“有機農業”)
そこには、化学肥料のほかに「農薬を使用しないこと」という定義が含まれています。
一般的に「農薬=危険」という認識が広まっているので、農薬を使わない有機栽培は健康に良いものだ、という印象になっていると思っています。
ただ、それはあくまで国の認証を得ている野菜の場合のみの話であり、単に有機肥料を使って育てた野菜が健康に良いという事にはなりません。
そもそも農薬はすべて健康に悪いものなのかどうかという話も整理する必要があります。
といったところで、続きはまた次回。
野菜を普段から目にしていても、農業って意外と知らないことが多かったりしますよね。
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