ふるさと納税とCSA

CSA。
Community Supported Agricultureの略で、地域支援型農業と訳されます。
消費者と農業生産者が連携して協力し合いながら農業を支えていく仕組みです。
アメリカで1980年代に始まったとされています。

天候や気候の影響を受けやすく、リスクを伴う農業に於いて、新しい農業モデルとして注目されてはいますが、日本ではさっぱり浸透していません。
それはいったいなぜなのか。
以前にもCSAについて感じた事を書いていますが↓

理由の一つとして、未来に収穫される農作物に対して先払いするというのは買う側としてはリスクでしかないわけです。
農業は、天候や気候など人智ではどうにもならない要因に影響される産業であり、それによって豊作になることも、不作となることもある難しい産業です。
だからこそ、人々が生きるために絶対必要な食べ物をみんなで守るためにアメリカではCSAという取り組みが生まれました。
でも日本では広まらない。どうしてだろうか。

一方で、日本にはCSAと同じように、お金を先に納めて後から農作物を受け取る仕組みがあります。そしてそちらの取り組みは非常に浸透しています。

そう、「ふるさと納税」です。
(ふるさと納税の返礼品には農作物だけでなく各自治体の趣向を凝らした多種多様な品々が揃っているわけですが、農作物も人気の返礼品の一つです。)

ではなぜふるさと納税はこれほど広まって盛り上がっているのか。
総務省の調査によると、ふるさと納税の受入額は年々増加傾向にあり、令和4年度の受入額はおよそ9654億円にまで達するそうです。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000897129.pdf

ふるさと納税とCSAの一番の違いは、税制上の”お得感”でしょう。
本来はただ納めるだけの税金が、ふるさと納税を利用すれば何かしらの返礼品が貰えるのであれば、そっちの方がお得です。
CSAにはそういったお得感はありません。

でも、ふるさと納税もCSAも、農作物を対象にした場合、そこに潜む天候や気候のリスクはまったく同じはずです。
ふるさと納税だから、相手が自治体だからリスクはゼロ、ということはありません。
でもなんとなく、相手が自治体だから大丈夫、というような感覚になっているような気がするんです。個人農家と自治体を比べたら自治体の方が信頼度が高いというのも分かります。
それでも返礼品が農作物である限り、豊作も不作も同じように起こり得ます。
(その時に生産者が補填するのか自治体が補填するのかは自治体により様々なんだろうと推測します)

CSAは、食べ物を守るため、ひいては農業を守るため消費者と生産者が協力して支えていく仕組み。
ふるさと納税は、元々は応援している自治体に税金を納められる仕組みだったように思いますが、今は返礼品競争になっています。でも現実はこちらの方が圧倒的に盛り上がっています。”お得感”というのは非常に強力です。

ではCSAに参加する事によって消費者にどんなお得感があるのか。
基本的に日本では食料が枯渇することはありません。
どこかの産地が不作でも、それを補う別の産地があるからです。
どこかの農家が苦しくて立ち行かなくなっても、別の農家から買えれば別に誰も困らないんです。
敢えて特定の農家を支援する事のお得感とはなんだろう。

でももし、ふるさと納税の本来の意義のように、思い入れのある地域を応援したい、というような「応援したい、協力したい」という思いが共有されていけば、今よりももう少し日本でもCSAが浸透していくのかも知れません。
そこには応援して良かった、協力して良かったと感じてもらう何かが必要です。
そしてそれは我々農家がもっともっと、一人でも多くの人に農業を知ってもらうところから取り組んでいかなければならない事なんだろうと思います。

ただ先払いでお金を払ってくださいではなく、農業の尊さ、本質を見つめながら。

サポートしていただいた分は農園の整備・野菜作りに活用させていただきます。理想の農園に向けて一歩一歩頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。