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世界選手権《エルドレインの森》ドラフト まれノート

1. はじめに

   どうも、まれおです。

 先日、世界選手権が行われました。

MTGプレイヤーの最高到達点の一つ

 僕がPTに参加し始めたときから調整チームを組んでいたテルテルさん、JVさんや石黒軍団の仲間であるセゴウさんが出場することもあって、世界選手権の調整チームに参加させていただいた。 
 この記事は世界選手権出場者に向けて書いており、オフラインでのドラフト(卓ドラ)にて安定して2-1以上の成績を狙うためのピック指針について纏めたものである。そのためドラフトの基本的な事柄およびエルドレインの森のカードについては理解できている前提で書いている。  
 MTGAでのプレミアドラフトとは感覚が若干違っているため、アリーナを専門でプレイされている方に参考になるかはわからないが、もしリアルで卓を囲んでドラフトをやる機会があったら、こんな記事もあったな、と思い出していただけると幸いだ。

2. 各色の組み合わせについて

【色の組み合わせ強弱】 
やりたい :青赤 黒緑 赤黒
ふつう :白赤 青黒 赤緑
微妙 :白緑 青緑
やりたくない :白青 白黒

 ポイントは「上家と喧嘩はしない、が色をやらされるな」
 棲み分けは大事だが「微妙」と「やりたくない」と評した色の組み合わせは極力避ける。やりたくないアーキタイプ(特に白青と白黒)は引きの噛み合いを要求されるようなデッキができやすいため、3-0するためには上振れが必要。回り方の再現性が高いデッキの構築を目指す場合、「やりたい」と「ふつう」の組み合わせが無難。
 今回のドラフトは白が強くない以外、色の強弱はあまりない。(青はいぶし銀ポジション)。ただしアーキタイプの強弱ははっきりしている。色をやらされるな、というのは「弱アーキタイプをやらさられるな」というふうに捉えてもらってもいい。
 上家の意思(色選択)を感じ取りつつ、下家のピックをコントロールできるように取るカードを選定したい。
 初手から4手目くらいは色に拘らずに強いカードを優先的にピック。それ以降の流れで空いてそうな色を判断し、できるだけ下家に流れる色を絞るようにピックし、色被りをさせないようにコントロールする事が大事。

 最も弱いと考える色の組み合わせは白黒。
 その理由は、「エンチャントが場から墓地に落ちたとき」の能力に関して
①場にエンチャントを用意する
②場から墓地に落ちたときに誘発する能力をもつクリーチャーがいる
③エンチャントを墓地に落とす能力
といった具合に①~③のステップを踏まねばならない上に、それを継続的に行えない場合、場のカードが大半バニラのクリーチャーないしはただの置物になるからだ。昨今のリミテッドはバニラを並べていては勝てない。
 もし①~③の条件を満たしやすい白黒を組めたとしても、場にエンチャントを出すだけのカードを引きすぎて、墓地に落ちることで効果を誘発させるカードを引かなかったり、逆の事象が起こりかねない。つまりシナジーが強めのデッキが組めたとしても噛み合いが要求されるため、デッキが強く組めたとしても安定して勝てない場合がある。

 上記のことから、白黒はアーキタイプに寄せるよりも除去とリソースを取るカードを多めに入れたコントロール寄りのミッドレンジ風に組むのが良いのではないかと考える。
 ドラフトを練習してきた人ほど白黒という「アーキタイプ」は嫌うはずなので、あぶれてきた白のカードを集めて、黒のそこそこ強いカードで足回りを固めれれば3-0は難しくとも2-1は狙えるデッキが構築可能である。
 白をやる場合は《希望ある祈祷》、《備え蓄える祝賀者》をかき集めてデッキにしたい。間違っても色とマナカーブだけを理由に《眠りの救済者》がたくさん入ったデッキにしてはいけない。

弱くはないけど昨今のカードは単体で強いカードが多すぎる。

  次点でやりたくない色の組み合わせは白青。 
 《氷冠のヒルダ》や《麻痺海溝のシャレー》などからしかほぼ参入することができない。(シャレーから入ることがいいわけでもない) 
 白黒と同じく、引きの噛み合いが求められる(タップするカードとタップすることによりアドバンテージを得るカードが必要)上に、キーカードとなるカードを引けず、タップする効果を持ったカードばかり引いてしまう場合(特にインスタントやソーサリーなど場に残らないカード)は白黒より弱くなる可能性がある。《氷冠のヒルダ》や《麻痺海溝のシャレー》等のアンコモンがデッキに入っていたとしてもタップするカードと一緒に引かなければ意味が無い。 
 参入する条件は、前述した白青向けのレアやアンコモンのキーカードが上家から遅いピック順で流れてくる時のみである。 
 卓の流れ次第では狙えるかもしれない程度と考える。

強力なカードではあるが、ほぼ決め打ちになってしまうため、ピックの柔軟性がなくなるのも問題

 その他でぼんやりしたデッキになりやすいのは青緑、白緑でその理由は以下の通り。
①アーキタイプとしての形が他の色の組み合わせと比較して分かり難い
② ①の観点からピックの指針が立てづらいため、なんとなくシナジーがあるカードをピックすることになる。
③単体で強いカードは他の色の組み合わせの場合にも多少のシナジーがありピックされやすい

 例:《取り籠め》、《ベルーナの門番》

 以上の点から、可能であれば明確な意思を持ってデッキを組みやすい赤か黒のラインからピックを始めたい。緑も悪くはないが緑から入った場合に上家から流された色が白や青であった場合には上記のぼんやりした色の組み合わせをやらされることが多いため、できれば避けたい。
 とりあえず赤と黒を抑えておけば、方向性ははっきりしたデッキになりやすく、ピックもしやすい。

3. 基本路線

 環境の速度を考慮して、アンコモン、レアを除いたコモンでのピックの前提においては除去をピックする場合、軽い除去から(《乱入》より《塔の点火》、《誓い破り》より《がぶりんご飴》)ピックするのが好ましい。
 クリーチャーもよっぽど強いところ以外は2マナ域を優先したい。

 単体で強いカードが少ない白は避ける。遅い巡目で《希望ある祈祷》が流れてくるなら狙っても良いかも程度。出来る限り《忠義の徳目》や《野薔薇のアルコン》等の強レア以外からは入らないようにしたい。
 レアを含めた白の大概のカードより他の色の除去や出来事の方が強い事の方が多い。

別格。スタンダードでも大活躍。

 青はスペルが強力だが確定除去が無く、クリーチャーの質もそこまで高くない。出来事持ちのクリーチャーは良いものもあるが、クリーチャー面のコストが高いことも多いためピック序盤で優先して取りたいカードではない。また低マナ域のクリーチャーが弱いため率先してピックするカードが少ない。 
 但しメインカラーとしてはイマイチではあるが、サブカラーとして優秀であり、卓内での優先度が低い場合にメインカラーとの組み合わせ次第で青を使った強力なデッキ構築は可能。 

青のコモン出来事は強力。極端な話、除去にフィニッシャーがついている感覚

 海外プロのカード評価をいくつか見たが青に関する評価が筆者と最も意見が分かれたポイントだ。青に関しては単色での評価とサブカラーとしての評価が全く異なると考えている。

 注意すべき点は、青をメインにピックをしないこと。 
 筆者の感覚ではあるが、世間の青に対する評価は低い。 
 そのため、青から入らなくても、遅い巡目に流れてくるカードを拾えば青には入れる。しかし、他の色、特に赤、黒、緑の人気色は遅い巡目に流れてくるカードを拾っても、あまりプレイアブルでなく、アーキタイプを支えるカードがピック出来ない可能性がある。

 例えば青赤をやる場合に青から入ってしまうと、人気な赤のカード(《物騒なカタパルト》や《荒ぶる炎の稲妻》など)をピックしようとした時にはもう赤が混んでいて十分な供給量が無い事などが考えられる。要はカードが足りなくなることが予想される。
 赤のカードからピックを始め、《見習い魔術師、ジョハン》やコモンの出来事等のカードが多く流れて来たら青赤を意識する、などの考えを持つことが大事。 
 これは青黒、青緑にも同じことが言える。青白は先述の通り、レアやアンコからしか入らないため、考慮しない。 
 
 緑は主に格闘除去やバットリ、オーラなどクリーチャーがいる前提のカードが多いためスペルから入るよりもクリーチャーから入りたい。コモンで最もバリューの高いクリーチャーは《根乗りのフォーン》であるが、初手でこれよりも優先度の高いレアやアンコモンがある事の方が多い。
 次点の《小村の大食い》は強力なクリーチャーで協約すると5マナとはいえ、今回のドラフトでは2マナ域のクリーチャーの質がゲームに大きく影響を及ぼすため、重たいところを早めに抑えるよりも軽い優秀なクリーチャーを抑えた方が良い場合が多い。もちろん2~3パック目で自身のピック事情を考慮して重いところを優先する場面はあり得る。

優秀な肉たち。遅い巡目で流れてきたら緑をやりたくなる

 赤、黒はコモンの《塔の点火》と《がぶりんご飴》が非常に強力なため気兼ねなく取りやすい。またこの2色は低マナ域のクリーチャーも優秀かつどちらの色もどの色と組み合わせても大体何とかなるのでこの2色は優先的にピックしたい。さらりと書いたが、この2色が弱くなることはあまりない。

がぶりんご飴はもちろん、2マナ域のクリーチャーも悪くない。
巨人は実質2マナ域

 ピック優先度(色の強弱)でいうと基本的には赤≧黒>緑≧青>白といった順番になるが、これはあくまでピック優先度が高いカードがパックにあった場合で色が合っていたら何でも取れば良いという訳ではない。 
 
 基本的には同卓内に2人までであれば同アーキタイプは共存可能と考えるが、3人以上になるとアーキタイプに沿わないカードをデッキに入れる必要が出てくるため共倒れしてしまうので、各アーキタイプ向けのカードの流れを見て方向性を決定したい。
 
 個人的に赤と黒の2色に差を感じないが、昨今のドラフト環境において、黒がメタゲームの中心になりやすいことを意識しているプレイヤーが多いのではないかと筆者は感じている。
 この前提において、パックの中のカードで同程度の強さを持つカードがある場合には黒が優先されやすくなり、結果として卓内で黒が混みやすくなることが多いと予想される。

 筆者は前回の「指輪物語」の時は黒を決め打ちする戦略を取ったが、それと比べると今回の「エルドレインの森」ではそこまで黒が突出している訳ではないため、混んでしまった場合にはデッキの形が弱くなってしまう。 
 そのため黒を押すよりも赤を選んだ方が良いパターンもありパックの中にプレイアブルな黒のカードが多い時には特に気を付けたい。
 
 この感覚は個人のものでしかなく現時点では上手く指針を示せないため、あくまでも参考程度に受け取って欲しい。

4. 環境の速度について

 今回の環境はゲームの序盤と終盤に焦点があてられる環境
 2マナ域のクリーチャーも役割が付けば3~4マナのクリーチャーと相打ちができるため、3~4マナ域のクリーチャーを出してとりあえず盤面を固める、という戦略が取りづらい。役割を付けるカードも軽いカードが多く、役割をつける+クリーチャー展開、といったテンポのいい動きもしやすい。

役割つける人々とちょっと違うけど墓地回収はテンポいい時もある。

 5マナ域ぐらいになると役割がついたクリーチャーも止めやすくなるため、受ける側はそこまでにテンポで押し切られないように立ち回らなければならず、序盤は軽い除去や同じマナ域のクリーチャーでの相打ちで対応したい。

 序盤を超えた先にあるのは、出来事を使用したあとに残っているそこそこスタッツの良いクリーチャーのぶつけあい。テンポで詰め切ろうとするデッキは序盤を耐えられるとこのぶつけあいに太刀打ちできないため、メイン、サイドでデッキの速度感を変えられる構成が望ましい。特に後手での対応は必須である。
 赤黒と赤白はアグロに分類されること多いが、赤黒の方がサイドカードの有無によっては受ける側のプランも取れるため、赤白より優れていると感じる。

 今回のような序盤のテンポ感が大事な環境において3色目以降のタッチは強力なレアがある時や除去が足りないとき以外は極力避けたい。
 メイン2色の動きを阻害しない程度に、出来事の追加1色を《根乗りのフォーン》や《がめつい巨人》等で出せるのであれば許容範囲と考える。

総じて
① 相手のテンポについていける構成
② 序盤~中盤を乗り越えた先にあるぶつけあいに対応できる構成
③ サイドボードで攻める側と受ける側にシフトできるようにする意識

の3点が必要となり、これに沿ったデッキ構築を目指す事でより高い勝率を残せると考えている。

5. おわりに

  世界選手権の調整チームに参加させてもらうにあたって、自分が貢献できるとしたら、スタンダードよりもドラフトだと思っていた。なので文章で今回のドラフトに対する自分の考えを伝えさせてもらった。

  記事するにあたって、加筆したり、清書を行ったが、実際に共有した文章はもっと殴り書きのような内容で、ここまで内容も多くなく、細かい部分は伝えることができなかった。大会の前にもっと自分の中で言語化してわかりやすく伝えることができていれば、もしかしたら誰かが1勝くらい増えていたかもしれない。傲慢な考え方ではあるが、次回以降誰かのために記事を書く時はもっとしっかり伝えたいことを書こうと思う。
 
 拙い内容ではあったが、世界選手権に参加された皆さんの力に少しでも慣れたなら光栄である。自分にとっても、世界選手権の調整チームに参加させてもらう、という貴重な体験をすることができたし、自分もPTや世界選手権にもっと参加できるようになりたいな、と熱くなれた。大した力にはなれなかったが、チームの皆さんには感謝である。

 石黒軍団として一緒に活動しているセゴウさんの力になりたかったので、特にドラフトの指導に力を入れさせてもらった。セゴウさんが1stドラフトを2-1で終えたときはとても嬉しかった。
 ドラフト練習を始めた最初の段階ではマジで心配だったが、世界選手権が近づくにつれて、練習の成果がドラフトデッキに見えるようになっていたし、その勢いでドラフトを乗り越えてくれてよかったと思う。セゴウさん、本当に頑張ってました、欲を言えばあと一つ勝ってほしかった、、、
 けどそれはまたどこかの舞台で見せてくれると信じています。お疲れさまでした!

せごうさんは俺たちの誇り

そして、あと一歩というところまで辿り着いたテルテルさん。

  世界選手権準優勝って本当にすごい。けど本人にとっては優勝以外は悔いが残ってしまうと思う。
 僕とテルテルさんの付き合いはPT機械兵団の進軍からなので、そこまで長いわけではない。しかし少ない数ではあるものの、一緒に取り組んだイベントごとに全力で準備に取り組むテルテルさんを見てきた。
 前回のPT「指輪物語」でも後一歩で届かなかったのも間近で見ていたので、ついにTOP8まで辿り着いたとき、本当に嬉しかったし、決勝戦は本当に悔しかった。
 マジックは良くも悪くも上手い人や努力した人が必ず勝つゲームではないと筆者は思っている。しかし、上手くて努力も続けた人が、世界一を懸けて戦うのを見せられると、熱くならずにはいられないよね。

 テルテルさんは間違いなく、世界で今もっともMTG強い男の一人だ。

 自分も追いつけるようにもっともっと頑張っていきたいなと思います。

ドラフト記事だけど最後脱線しました!
最後までお読み頂きありがとうございました。

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