郵便物恐怖症 - Ταχυδρομoφόβια*

自分は「郵便物恐怖症」である。
恐怖症は言い過ぎかも知れないが、郵便物嫌いであることは確か。

そもそも郵便物の大半は友人や知り合いからではなく、大抵は役所か、何の愛着も感じない会社から送られてくるものだ。そして大半は悪しき知らせが多い。つまり何かの料金を滞納したとか、税金を払え、とかあれこれ証明書を送れとか・・・それが役所関連からの郵便物である一方、何の愛着も感じない会社からの郵便物はかさばるばかりで何の得な情報ももたらさずゴミ箱を太らせるだけである。

そういうわけで、郵便物の封を切るのが嫌で、その辺に放置しておくことが多く、それがさらにかさんできて、内容も確かめずにまとめてゴミ箱行きになる。で、後で役所からグチグチ言われて困る。

施設に入所している母親の現住所も自分と同じにしてあるので、役所からは恐ろしいほど多くの郵便物が来る。介護保険やら医療費関連やら、それはそれはもうあきれるほど・・・いろんな部署から。これをたとえば後期高齢者が、いちいち難しい漢語だらけの文章を読んで理解し、アクションを取れるのだろうか? とてもじゃないけど、そういう風には思えない。一元化する運びはあるけれど、マイナンバーシステムは遅々として先に進む様相はない。

とにかく郵便物にはうんざりする。マンションの郵便受けは週に1度ほどしか確認しないが、ぎゅうぎゅうに詰まっているときもあって、それも神戸市のしょうもない無料冊子が原因だったりして、一度神戸市に電話をして、二度とポスティングしないようにクレームをつけたことがある。が、しばらくするとまた入り出す。

世の中にはきっと同じような人がいるはず。それで郵便物嫌いは横文字ではどういう用語になるのだろうか調べてみた。~嫌い、とか~恐怖症というのには -phobia というギリシャ語ベースの言葉を使う。たとえば、claustrophobia (閉所恐怖症) は、claudere (閉じる) というラテン語と phobia (嫌い) というギリシャ語を組み合わせたもの。

蓮の実とかハチの巣、魚卵などを見て気持ち悪いと思う人は trypophobia (集合体恐怖症) である。これは trypa (穴) と phobia という両方ギリシャ語から作った造語である。他にも -phobiaは星の数ほどある。Hydrophobia は、hydro- (水) というギリシャ語と組み合わせて、文字通りなら「水嫌い」となるが、これは水を恐れる病気、つまり「狂犬病」という意味になる。

Phobia の逆は -philia だ。Japanophilia は「親日家」、paedophilia は paidos (「子供」の変化形) + philia で、連日ニュースで報じられている「小児性愛」という言葉になる。

話は大幅に逸れてしまったが、「郵便物嫌い」という用語は実際に存在するのだろうか?
閉所恐怖症のように、ラテン語とギリシャ語繰り合わせるのはどうかと探ってみた。ただ困ったことにラテン語は死語である。郵便物という概念がない。そこで手紙という言葉と組み合わせて、letteraphobia という造語はないかと調べてみたら、ほんの1、2件だけヒットがあった。

ではギリシャ語同士を組み合わせて tachydromos (ギリシャ語で郵便物) と組み合わせて tachydromophobia という造語はないか・・・いちばん可能性が高いと思ってググってみたが、1件のヒットもなかった。では、ギリシャ語で手紙という意味の gramma を組み合わせて grammaphobia はどうだろう? これにはヒットが多くあった。しかし、英語などと同様 gramma には手紙以外に文字という意味もあり grammaphobia は「文字恐怖症」という意味になり、手紙恐怖症という意味にはならない。


というわけで、「郵便物恐怖症」という言葉には辿りつけなかった。そもそも郵便物恐怖症は自分だけかも知れない・・・そんな結論に至った。さあ、きのう買ったバターナッツパンプキンでスープでも作りましょ。

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