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重力を利用した移動

マーチングでは、正面など一定の方角を向いたまま前後左右斜めと様々な方向に移動します。そのため、フォワード、バックワード、スライドなどの歩行技術を習得しなければなりません。

スライドはドラムラインではクラブウォーク、少ない歩数で長距離を移動するときはジャズランなど、派生技術も様々ですが、全ての技術に共通する大切なことを理解すれば、いかなるスタイルでも通用する技術の基盤となり、より演奏をサポートしてくれる洗練されたMMを身に着けることができるでしょう。

進行方向に倒れる

まずは移動とはどういうことなのか考えてみましょう。

移動とは、力が物体に加わり、不安定な状態から安定した状態に向かう過程のことです。

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加わる力が重力の場合、図のように宙に浮いたものは重力と同じ向きにまっすぐ移動(自由落下)するだけですが、地面に接触し摩擦力が働いている棒は重力の向きとは異なる方向に移動し、この場合は右に倒れます。

人間が歩く場合、地面と足が接触しているので、右の棒のような現象が起きます。脚が1本ならただ倒れるだけですが、人間には2本の脚があるので、宙に浮いた脚を前に着くことで倒れないよう支えることができます。

続けて歩く場合は、前に着いた脚を乗り越えることで再び不安定を生み出し、倒れる力によって移動します。この流れを繰り返すことによって、人間は歩き続けることができます。

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これはバックワードでもスライドでも同じで、進みたい方向に着いた脚を乗り越えることで、あらゆる方向に進むことができます。

推進力を得るために「地面に着いた脚を進行方向と逆に蹴りだす」という考え方もしばしばみられますが、足と地面との摩擦力はあくまでも身体が倒れるための支えであり、主動力は重力であることに注意してください。

安定させて止まる

歩いている状態からホールドに移るときは、不安定な状態から安定した状態に持っていきます。

つまり、今まで脚を乗り越えることで生み出していた不安定を、脚を乗り越えないことで安定させて止まることができます。

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このとき、足と地面との間に摩擦力が生じ、ブレーキがかかりますが、これも止まるための主動力ではありません。

なぜなら、バックワードの場合は浮いたかかとが下がることにより後ろ方向への力が働き、止まれるほど強い摩擦力を生むことができないからです。左方向へのスライドの場合も同じく、右脚を乗り越えたところで停止しなくてはならないため、摩擦力は使えません。

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重心を操作する

摩擦力が主動力でないとするとどうやって進んだり止まったりするきっかけを作ればよいのでしょうか。

人間の身体はあえてバランスを崩し不安定になることで移動するきっかけを作ります。つまり、重心位置を前後や左右に操作すればよいのです。

人間の身体は大きく分けて右腕・左腕・右脚・左脚・体幹という5つのパーツにより構成されており、これらのパーツにもそれぞれ重心があります。
これらのパーツがどう配置されているかによって、身体全体の重心位置が変わります。

前に進みたいときは、一番重い体幹上部(胸から頭)を相対的に前に置くことで、重心が前に移動して倒れる力を生むことが出来ます。
これを応用すれば、フォワードで止まりたいときやバックワードで進みたいときには胸を後ろに引くことで重心を後に移動させれば良いことがわかります。

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この重心操作をするためには、体幹と各パーツの分離運動を習得する必要がありますので、ウォームアップなどに取り入れて練習してみましょう。

以上がMMにおける重力を利用した移動のコツでした。
疲れにくい身体の使い方を知ることで、演奏やドリルのパフォーマンスアップにも繋がるので、ぜひ参考にしてみてください。

おまけ~足のケアについて~

直立している状態は比較的安定しているとは言え、身体は倒れないように常にバランスをとっています。

それを担う大事な部分が足の裏です。
足の裏にかかる圧力を感じることで、人間は細かく姿勢を制御して微妙なバランスを保っています。もちろんスムーズに歩くためにも必要です。

ですが現代人は硬い靴を履いたり、歩くこと自体が減っているため、足の裏の感覚が薄い人が多いのです。
足の裏が鈍感だと、バランスを取りづらくなったり、ジャンプの着地で上手く衝撃を吸収できなくなり疲労骨折に繋がることも...。

下に足のケアに関するツイートを載せていますので、ぜひやってみてください。かなりパフォーマンスが上がります。


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