映画『素晴らしきかな、人生』

"At the end of the day, we long for love. We wish we had more time. We fear death." (一日の終わりに人は愛を渇望し、時間を惜しみ、死を恐れる)


「”愛”と”時間”と”死”。この3つが、地球上のすべての人をつなげる要素だ。」

主人公がこう言った後、冒頭の台詞がつづく。

原題はCollateral Beauty. 字幕では「しあわせのおまけ」となっている。

この台詞に、私は子どもを寝かしつけた後のことが浮かんだ。

毎晩眠りについた子どもの顔の健やかさと安らかさに虚をつかれ、この子と少しでも長く居られることを願い、自分が先にいなくなるであろう未来を少しだけ想う。


監督のDavid Frankelはインタビューでこう話していた。

「人生の小さくも素晴らしい断片が、生きる価値があると思わせてくれる。日々当然のように思っていて素通りしてしまうような幸せこそが前に進む理由になる」。

濃紺からじょじょに桃色に変わる朝の空、橙が色褪せて青みを帯びた灰色に変わる夕空、しっとりしたスコーンの生地に焼き目がついてバターの香りが充満する台所、夜中に夢現で私の背中に回した子どもの掌から伝わる微かな温もり、四つ角で信号を待つ間に鼻の奥をさす冷気が呼び起こす異国の空気...。

書いてみるとどれも当然でもなく、素通りしてしまう何かでもない。

現在に居ないと味わうことのできない「小さくも素晴らしい断片」なのだ。

過去でも未来でもなく現在に向き合いつづけることが、後々、前に進む理由になる。

主人公がドミノを倒すのに膝をついたシーンで、ウィル・スミスは恐ろしく体幹がしっかりしていると思った。

そのドミノの謎も、映画の最後に明かされる。

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