武器は伸びのあるストレート!制球力高めチームに貢献へ!
VOL19 投手 兵頭真人(ひょうどう・まさと)背番号34 新入団
今季のチーム左腕3投手のうちの1人だ。最速140㌔台半ばの伸びのあるストレートを軸に緩急を生かしたピッチングが持ち味で、今後のチーム浮上のカギを握る投手にとの期待が高まっている。
埼玉県朝霞市出身。4人兄弟の長男で、父親は高校まで野球をやり、弟は今春入学した高校の野球部で兄の後を追い始めた。彼自身は小学1年から野球を始め、小・中・高と投手を務めた。高校時代は「投手として出場する機会が少なく、野球を止めようかと思う時期もありました」というが、プロを目指すチームメイトに触発されながら練習を重ねた。すると身長が伸びたことも手伝い、最速130㌔弱だったストレートが135㌔にアップし、「自分の中で気持ちがポンと跳ね上がりました」。彼は自分の伸びしろを意識し、NPBに対する欲求を高めていった。
5イニング投げて13奪三振も
彼は新東京リーグ2部の東洋学園大に進み、先発から中継ぎ、抑えを経験。卒業後は元NPB選手も在籍する強豪クラブチームのジェイファム(運営会社の経営悪化により現在休部中)に入り、社会人野球の世界で揉まれた。その1つ、東芝との戦いでは「コテンパンにやられました」と頭を掻くが、昨年春のJABA神奈川県クラブ大会で5イニングを投げて13個もの三振を奪い、大会の最高殊勲選手に輝いた。「社会人相手にどこまで通用するか不安な気持ちもあったので、好結果を出せたのは自信になりました」と率直に話す。因みに13奪三振を記録した相手チームには、現在パイレーツの先発の一角を担う加納雅也選手がいた。
そんなジェイファム時代、彼を指導し良き相談相手でもあったのが、パイレーツで2014年~16年に投手コーチを務めた加藤博人さんだった。もっと野球に集中して上を目指したいと考えていた彼に加藤さんは、「生活は苦しくなるかも知れないが、親元から離れ四国の独立リーグで思い切り野球をやってみたらどうか」とエールをおくった。その言葉は彼の胸にまっすぐに刺さったのだった。
最優先課題は制球力改善
パイレーツに入団し4ヵ月余、「アイランドリーグのレベルは高く、特に投手のレベルが高いなかで自分は活躍できておらず、全然物足りません」と自戒を込める。公式戦の登板は5月2日現在、開幕3試合目の高知戦1試合のみ。この試合2番手として登板し、1イニングと3分の1を投げ、被安打ゼロで2つの三振を奪いながら3四死球と乱れ、マウンドを譲った。彼の長所・短所双方が同時に現れたが、首脳陣には3四死球の印象が残った。柔らかいフォームからビシッと投げ込むストレートは打者の手元で伸びる、魅力十分の強い球筋だ。それだけに「急に制球を乱す」という悪癖解消が今後の成長のカギを握る。
ストレートは最速145~146㌔で、カーブとスライダー気味のカットボールを織り交ぜて緩急をつける。だが、試合で投げられる球種が少ないだけに、チェンジアップや落ちる球種のマスターも優先課題の1つ。軸となるストレートについては「NPBを目指すとなると左腕で最速150㌔はクリアしたい」とし、「今季はイニング数以上の三振数が目標です」ときっぱり。チームは4~5月、リリーフ陣が崩れ勝ち星を逃す試合が目立っただけに、「左腕3人でチームを押し上げたい」と、後期も見据えながら意欲を掻き立てている。
彼のルーツは宇和島にある。今は亡き祖父は宇和島生れで、宇和島東高時代は甲子園に出場し、立教大でも野球で鳴らした。「祖父は生前、僕にプロを目指せと言ってくれました。そんな祖父の故郷の地で野球ができるのは光栄です」。今秋、祖父の墓前にどんな報告をすることになるか、期待を込めて見守りたい。