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味噌汁のある風景

土井善晴さんが好きだ。
あの柔らかながら、ピリッとしたところもある関西弁。それから、料理番組って丁寧に作業をするので世の主婦は「美味しそうだけど、作るの面倒」ってなりがちなところを、「お母さん、適当でいいんですよ」とやってくれるところ。
実際、わたしはこの土井さんの「一汁一菜」に助けられている。


主婦になって気づいたのだけれど、わたしは給食のような献立を作りがちだ。
主食があって、主菜、副菜、場合によっては副菜がもう一つと汁物。
いわゆる一汁三菜(場合によっては二菜)。

主食・主菜ときて、主菜は大概タンパク質なので野菜メインの副菜が欲しい。
主菜がお肉なら、野菜を添えたり一緒に料理したりするけれど、魚だと野菜なしになりがち。
となると、副菜は2品作ってバランスを取りたくなってしまう。

それからそれから。欠かせないのが汁物。
味噌汁、中華スープ、ミネストローネ、ポタージュスープ。
なんでもいいのでつけたい。


朝は軽いもの、昼はそれぞれで食べるとして、夕飯はこんな風にたっぷりになる。
最初こそ夫は喜んでいたけれど、そのうち「多すぎる」と言われるようになった。
そうかぁ…何を引き算したものかしら…

副菜をつけなくてもバランスの取れる主菜にしてみたり、全体のボリュームを減らしたり。

さて、我が家には4歳の娘がいる。
この子が偏食と言うほどでもないけれど食に興味のない子で、おやつはともかくご飯はなかなか食べてくれない。「ママのお料理美味しい!」といってくれるわりには、箸が進まない。
これは赤ちゃんの時からで、離乳食はどれほど彼女のお腹に入ったのか。床にぶちまけた量の方が圧倒的に多い。

そんな彼女に、少なくとも毎食完食するように伝えているのがスープ。汁物だ。

話はずれるが、結婚して初めて義母の味噌汁を頂いた時、具材の多さに驚いた。
実家の母の味噌汁は、「大根+わかめ」とか、「玉ねぎ+油揚げ」とか、身が2種類くらいでかなりシンプル。対する義母の味噌汁は、「人参+白菜+油揚げ+えのき+大根」と言った風に盛りだくさんなのだ。

驚いたけれど、美味しかった。色々な具材の味がするけれど、喧嘩せずにみんな美味しくいただける。味噌汁だけで野菜がたっぷり食べられる。


子どもが生まれるまで、わたしは実家式の味噌汁を作っていた。食べ慣れているので食材を選びやすいし、副菜でバランスを取る余裕もあったから。
子どもが生まれると、料理にかけられる時間はものすごく短くなった。特に夕飯は、疲れて不機嫌な子どもの泣き声をBGMに料理することになる。丁寧に・見栄え良く・品数多く、なんて夢のまた夢だ。

「待ってね、ごめんね。抱っこするからね」
「これは大根さんだよ〜、トントンって切るよ〜」

謝ってみたり、赤ちゃん向け料理番組かのように、気を引きながら料理をしてみたり。でも結局泣いている。小さな子どもを連れながらの料理は、だからかなり心も身体も疲れる。
もともと料理は大好きだったのに、ストレスの時間となってしまった。


そこで思い出したのが、義母の具沢山味噌汁。
例えば「人参+ブロッコリー+えのき+肉団子」なんて言う、実家だったら絶対食べなかった組み合わせも挑戦してみたらおいしかった。これなら主菜がしょぼくても食べ応えが出るし、野菜も取れる。
そんなわけで、我が家の味噌汁は添え物ではなく、堂々と1皿の役割を担っている。もはや、具材を入れすぎて「味噌煮」になってしまう日もある。

そして、意外なことに、子どもたちは味噌汁が好きだ。
先述した通り、あまり食事を好まない娘も、味噌汁はたいてい何も言わなくても飲んでくれる。
「夕飯何がいい?」と聞くと、
「玉ねぎと人参の入ったお味噌汁」と答えるほどだ。


1歳になったばかりの息子は、娘とは違って食いっ気が強いタイプだけれど、彼もまた味噌汁LOVERになった。2人目ともなると、とりわけの味噌汁を刻んで薄めて出すのが定番。豆腐や溶き卵を足したりすれば、栄養バランスも取れる。
息子は毎食、最後に味噌汁を煽る。
小さな両手でお椀を持って、盃を飲み干すように、グビグビ飲む。

わたしは料理の数が減って助かるし、子どもたちも手軽に栄養が取れる。一石二鳥ってこのことだな。


「一汁一菜」
これを、料理のプロが言ってくれる。実際は一汁二菜くらいが多いけれど、「それでいいよ」とプレッシャーをそっと払ってくれる。
だって、SNSには子連れママさんの作った、オッシャレ〜な「#今日の夕飯」が溢れかえっている。品数はたっぷりで、色鮮やか。これができないわたしはダメなの?と不安になりかけるところへ、「いいんです」という強い言葉。

最高だな、土井善晴さん。
最高だな、この食事にいつも感謝してくれる夫。

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