あるだ

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大丈夫。君は、自分の人生をちゃんと生きているよ。

 朝の人混みが嘘のように静まりかえった電車の中で、私は一人泣き出しそうになっていた。耳につけたイヤホンのボリュームを1段回上げ、聞いているアイドルグループの曲に集中しようと努めた。そうでもしないと、今この瞬間にも、心の糸がぷつりと切れてしまいそうだった。  東京。1年前の今頃、大都会東京への憧れを胸に就職活動をしていた私が、今こうして、涙を堪えながら電車に揺られている自分を見たら何と言うだろう?私は、やっぱり都会に出てくるべきではなかったのだろうか。東京の街で堂々と働いてみ

    • ある老兵の告白

       なぜこの事実を今になってこうして文字に起こし、君に自身の極めて陰惨な罪を告白する気になったのかといえば、それは一重に苦しむことに疲れたからである。あの出来事から50年が過ぎ、当時19の若輩だった私は今に古希を迎えんとする老骨と成り果てた。この50年間、1日としてあの日の出来事を忘れたことはあるまい。内向的で体躯に恵まれず、我が師団の劣等生であった私の唯一の友人であった君を失ったあの日のことを。だがもう、私は苦しむことに疲れてしまった。  あの戦争で死ぬべきであったに違いな

      • 赤い魚

         あれはいつのことだっただろう、と娘の背中をさすりながら思った。そう、きっと今のこの子と同じ小学2年生くらいだ。あの頃私は、眠ることが怖かった。いや、眠ることが、という言い方は正確ではないかもしれない。正しくは、「夜に目を瞑ること」が怖かったのだ。夜の暗闇と静寂は、まだ幼かった私にも色々なことを考えさせた。それも、あまり良くない事ばかりだ。  私の両親は私がまだ3つの時に亡くなっており、それから私は母方の祖父母に育てられた。そのため、両親と過ごした記憶というのはほんのわずか

      大丈夫。君は、自分の人生をちゃんと生きているよ。