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先生と呼ばれるようになったキッカケの話
ずっと、心の何処かで思っていた。
先生という言葉への憧れ。
高校生の頃の私に、親は冷ややかだった。女なのに"大学"なんて行く必要ない。どうせそんな頭もないだろう?
もし自分にその頭があったなら許されたのかもしれないが、残念ながら持ち合わせていなかった。こんな環境だったし、そもそも勉強のやる気は全くなかった…こう言うと、人のせいにしているように聞こえるかもしれないが、全くその通りだとは思う。いろいろ反論したい気持ちは、五十路の今でも山ほどあるのだ。
短大に入学してすぐ、今までお世話になった塾に挨拶に行った。
「無事、短大生になれました」
「おっ、じゃあ、ここで働けるね。いつから来る?」
???
たいしてレベルも高くない短大生のわたしを、塾講師として雇ってくれることにビックリした。
あぁ、小学生もいるし、何とかなるのかも?そう解釈した。
この塾講師のバイトで先生と呼ばれるようになり、その言葉の響きはとても新鮮で、背筋がピンとなり、憧れは加速していった。
が、全ては後の祭りだった。
ー先生になりたかったー
それからの私は、そんな思いを心の奥底に隠したまま、企業の一般職として働き始め、結婚妊娠を機に会社を辞め、気が付けばアラフィフとなっていた。
「あ〜、佐藤さん、久しぶり!」
幼稚園、小学校と一緒だった男の子のママが買い物をしていた。子どもは既にお互い高校生になっていたので、なかなか話す機会もなかったが、その日はお互い少し時間もあったので、スーパーで暫し立ち話をしていた。
「そう言えば佐藤さん、今仕事してる?」
「うんうん。今ね、三小で働いてるよ」
「えっ?佐藤さんって先生だったの?」
「いや、違うよ〜。支援員」
正直、なんじゃそれ?と思った。
よくよく話を聞いてみると、特別支援学級で担任のサポートをする仕事をしているということ。市の職員で、パートだと言うこと。学校では先生と呼ばれていること…
ビビビ…ときた。どれも魅力的な話ばかりだった。どうやら、毎年募集があり、11月頃の市報に求人が載るらしい。
これを逃す手はないと感じた。幸い、今は二学期が始まったばかり、11月は少し後。今のパートを辞めるとても良いタイミングだとも思った。
11月に入ると、新聞の折り込みチラシをくまなく見て、市報を探し、無事応募が完了した。
採用が決まったのは、3月も半ば。新学期まで日にちはあまりなかったが、やっと小学校で働ける喜びは、少しポカポカしてきた気候も手伝って、足取りを軽やかにした。
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