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250/席を譲ってくださるときは、本人に伝えてください

一年ほど前から夫は常時白杖を持つようになった。

以前は私と一緒に近くのスーパーに行くときは白杖を持たずに行っていたが、それをしなくなった。

見えなくなっていることをだんだん自覚してきているらしい。

本人にはちゃんとした理由があるのに、見えない故に他人から見たら

「怪しいおじいちゃん?」

と思われてしまうことがある。

白杖を持っていたら

「あの人見えないのね」

と理解してもらえるだろう。

こうして白杖を持っていると、電車やバスで席を譲ってもらうことがある。

眼は見えずとも足腰は丈夫なので座るほどでもないけれど、

せっかく譲ってくださっているので、ありがたく座ることにしている。

ちょっと前までは「譲られること」に慣れていなかったのと、

「まだ譲られるような状況じゃない」

と思っていたのか、夫は丁重にお断りすることがあった。

せっかく勇気をもって声をかけてくださったのに相手から断られたら、気持ちが萎えてしまう。

若い子なら譲ることをしなくなってしまうかもしれない。

そんなことも思って、ありがたく座らせてもらう。

席を譲ってもらう場面で経験するのが、

たいていの人が夫ではなく私に声をかけてくることだ。

「ここどうぞ」

と私に言ってくれるのだが、明らかに私でなく夫に座ってほしいと思って言ってくれている。

お礼を言って「譲ってくださったよ」と夫に伝えて座る。

夫は見えずらいけれども、

話すことはできるし聴くこともできる。

もしかして夫一人だったら直接声をかけてくれるのかもしれない。

でも、二人でいたとしても直接本人に伝えてほしいと思う。

肩や腕などを「とんとん」と軽くたたいて席を譲る旨を伝えてほしい。

そして座る場所を教えてほしい。

たいていは自分の前に立っている人に譲ることが多いだろう。

そんな時は、見えない人の背中を椅子の方に向けて体をくるっと回して教えてくれたらわかりやすい。

ガイド(手引き)をしている私に声をかけてくれるというのは、

本人にどのように声を掛けたらよいのかわからないからだと思う。

もしこの記事を読んでくれた方でガイドさんと一緒に歩いている視覚障害者に席を譲る場面に遭遇したら、

ぜひ本人に明るい声で「ここに座ってください」と声をかけてほしい。

私たち視覚障害者は、嬉しく感謝の気持ちでいっぱいになっているから。



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