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なんにもないけど、なんでもある

徳島県神山町で見つけた、27年間忘れられていた里山。子どもたちとそんな未完成な遊び場で時間を過ごした時間を記録しました。
小学生対象のプログラム「みっけ」が大事にしているのは、
私のパーマカルチャーの先生たちが作った4つの倫理
・おいしい
・楽しい
・美しい
・自分らしい

パーマカルチャー3つの倫理
・地球への配慮
・(自分を含む)人間への配慮
・資源の公平な分かち合い


今、地球で起きていることをどれくらい子どもたちに伝えようか迷う時もある。気候変動、格差のこと、健康のこと、そして利益をどこまでも追求する世界のシステムのこと。
一方で、私の願いは、これらの原則が実現している世界を子どもたちと創り、体験してもらうことで、その世界が地球の未来の景色になること。

パーマカルチャーは循環する暮らしをデザインする手法。デザインする時にヒントになることはたくさんある(10の原則は文章の最後に)けど、今回のテーマは「なんにもないけど、なんでもある」。

一見、なんにもないように見える。よく観察したらなにが見えるだろう?
観察はパーマカルチャーの中でもとっても大事なプロセス。

私たちが必要なものはなに?地球が与えてくれるギフトはなに?
地球が欲しいものはなに?私たちにできることはなんだろう?

それぞれのギフト(できること)とニーズ(してほしいこと)を観察する。その観察で身の回りの資源を心地よくシェアすることができる。こんなメッセージが伝わったらいいな。

それでは大人の仲間(スタッフ)の目撃情報を交えながら、子どもたちとの時間をお楽しみください。

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集合した子どもたちは、少し緊張しながらまず名札つくり。風で折れてしまっていた柿の木は名札に変身することができて喜んでいた。穴をあけて好きな色の紐を通す。
土に戻る素材を使うこともこのプログラムで大事にしていきたい。いつも見ている風景に何を取り込みたいかは、自分で選ぶことができる。

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保護者がいなくなって、まだまだ緊張している子どもたちとのチェックイン。紐を使って自分の名前と相手の名前を呼びながらどんどん繋がりの星を作っていく。
チェックインは一人ひとりの存在をみんなで感じる時間。
今、あなたはどんな気持ち?どんな助けが必要かな?なんて呼ばれたら心地よいか教えて。言葉にならなくてもその存在を感じようとすれば必要なものを一緒に探すことはできるはず。

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ワイルドビジョンという感覚をフルに使う方法(アースマンシップ岡田淳さんより伝授)を練習してから、スカベンジャーハンティング(ガラクタ探し)へ。みんなに全身を使って答えてもらった質問はこちら。
☀鳥の鳴き声を3種類みつけよう〇土になりたがっているものは?〇すきな7色集めてみよう〇お気に入りの場所を見つけよう〇食べられるものはあるかな?〇宝石もあるかも?〇鬼滅の刃の鬼が嫌いな花の豆はどこだ?☀
グループについた大人の仲間にサポートしてもらいながら、使われなくなった棚田が続く斜面と小さな小川が流れる森わくわくする方向に各々進む。

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絶対他の人には見つからなかったノコンギクの香りを確かめに。

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森歩きに慣れている子どもたちは一足先に敷地の一番端っこまで駆け上がり、10年以上前に捨てられた空き缶を集めてきた。7色集まったとのこと。

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それぞれのペースを守りながら子どもが見つけた秘密の宝を優しく見守る。

大人の仲間目撃情報『枯れた落ち葉も土になりたがってて役に立ちたいと思っていると子どもが呟いた。自然に終わりはなく巡り巡ってまたみんなで生まれるんだなと思った。』

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一度集まって、それぞれが見つけたものを仲間とシェアする時間。
自分の存在と仲間との繋がり、色とりどりの自然のめぐみを確認する時間でもある。自分だけが見える特別な世界に、他の人をお誘いするのはどきどきするけど、自慢もしたくなっちゃう。

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大人の目撃情報『みんなが聞いていない音を説明するのって難しいけど、上手く表現してくれていた。「あのね、鳥のなき声3こ見つけたんだ。一つはタカだったと思う。もう一つはするどくて高いなき声、もう一つは、小さくてヒヨヒヨないていたよ」と子ども。国語の時間は野外教室で足りるなぁと思った。』

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南の島に住む鳥の顔に見える木を見つけた。

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答えのない宝探しは、あなたがいて完成する世界。あなたがいなかったら完成しない世界。

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見つけたお気に入りの場所に、秘密基地と見張り台を作りはじめた。

大人の仲間の目撃情報『茅の山の上で「ここがいいな!まるで見張り台。みんなを見守るんだ。そうだ屋根を作ろうよ。ここにあれでこうして..あ、ここで眠れば流れ星が見えるよ、ここをもっとああして...」ってどんどん子ども達のイメージが膨らんで形になってクリエイティブになっていく瞬間を見られて、最高だった!「自由が許される場や大人」が子ども達の潜在能力を引き出すのかなあ。』

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ケンカしたらどうすればいいのかな。大人の仲間もおろおろ。
その後ケンカはいつの間にか終わっていた。
大人の仲間の目撃情報『すべての感情を自然が受け止めてくれた。ケンカした後、茅の山がそれを受け止めてくれて、彼らは自ら悲しみや怒りを解放してご機嫌を取り戻した時、茅の魅力に感謝した!』

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味見をしながらサラダを収穫。初めての野菜ナスタチウムはあまり好みの味ではなかった様子。
大人の仲間目撃情報『サラダの具材を採りに行った時「えっ、この葉っぱサラダになるの???うちのサラダはトマトとかキャベツとか...」と普段食べる「サラダ」に入ってる野菜以外のものもサラダとして食べられるんだという「サラダの多様性」に気づいた!』

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サラダの大皿がないといったらバナナの葉っぱをお皿と見立ててセットしていた。

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サラダ曼荼羅が始まる。ゆこう(柑橘)をふりかけてドレッシングに。

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お箸もコップもないといったら、職人が現れた。一本一本竹を磨いて丁寧に乾かしている。

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食事作りには参加しなかったが、食卓づくりに励む子ども。
大人の仲間の目撃情報
『洗い場の蛇口は一つしかない。まな板数枚分を洗わなくてはいけないお友達が待っている。
早く終わらせるのではなく、「先にどうぞ」。
洗うのを次の人に為に適当に終わらせるのではなく自分のやりたい一番の目的(テーブルにする盥をキレイに洗う)を犠牲にすることなく待ってる人が終わってから納得行くまで洗う。
自分のニーズよりも人のニーズを優先していない。相手のニーズを満たし、自分のニーズも同時に満たす判断をした例。自分を大切にしながら相手を思いやっていた。』

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近所のおばあちゃんの家から借りた釜戸。汗だくになりながら火を守る子ども。

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食べる場所はそれぞれ。先ほどせっせと洗った盥の上で。

この日のメニューは、
☀サツマイモおこわ (もち米・那賀町ヨンロッパ食堂の江頭一晃さん海老名美希さん)
☀身体をあっためる色を集めた味噌汁 (バターナッツ・今津自然農園、にんじん・つなぐ農園、豆腐・千田豆腐、味噌・筆者の母)
☀さといもの甘辛(さといも・今津自然農園)
☀サラダ曼荼羅(ナスタチウム、ゆこう、ベニバナボロギクなど敷地内で収穫)
☀豆乳寒天ゼリーとあずきぜんざい、キウイのっけ(近所の80代のおばあちゃんがつくる小豆)
☀無農薬阿波番茶(楽音楽日

オリーブオイル(イタリア)と甜菜糖(北海道)、塩(高知)を除くほぼすべての材料は徳島か神山産、そしてなるべく無農薬のものを使いました。また、プラントベース(ビーガン、動物性を含まない)のお食事です。
私たち「みっけ」が食を選ぶとき大事にしたいキーワードは、地産地消、友産友消(友達が作ったものを友達と食べる)、地球にも私たちにも優しい育て方をしている農家さんとのつながり、そして買う食材の選択肢には動物性食物を含めないこと。
これらは、一言で表せないほどにたくさんの意味をもつ、食の選択です。エコロジカルフットプリントを低くすることで気候変動の影響を小さくする、大量生産を目的とした畜産業を応援しないことで森を守る在来種を守る小規模農家を応援する、自分の周り何があるか知り食べ物を作り出す自信になる、、、つまりは素敵な未来をつくる選択肢と言えるでしょう。

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食べたあとは、ご飯づくりの前から気に入っていた場所にそれぞれが向かっていた子どもたち。

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スカベンジャーハンティングで見つけた綺麗な色のヨウシヤマゴボウを使って絵を描いたり、布を染めたり。

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藤のつたにつかまりながら巨大な岩を登ったり、大人が宝になると思って埋めたものが全くの期待外れでがっかりするも掘り続けたり。

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1日の終わり、その日誕生日だった子にプレゼントを渡しました。みんなが森の中で見つけたお気に入りの宝物と、竹で使ったコップです。

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大人の仲間目撃情報『大地に足音が響き、笑顔と笑い声が空に響いて太陽も空も大地も月も星も全部嬉しそうだった。』

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今回、大人の仲間は、高校生、大学生、モンテッソーリ保育士、臨床美術士など様々なジャンルの仲間が神山、藍住や上勝町、県外から参加してくれました。
子どもは色んな大人に出会って自分の見たい世界を選んでいくと思うから、
・自由
・クリエイティビティ
・美しさ、おいしさ、たのしさ、自分らしさ
を大切にしてみんなが動ける環境作りやってみました。みんなありがとう!

最後に、読んでくれてありがとう! 書きながら、子どもの場づくりが循環型になっているとより未来に繋がっていると改めて感じるのでした!

文章・松岡美緒 写真・大人の仲間

おまけ
パーマカルチャー10の原則を並べてみました。どんな問題を解決するときにも役に立つヒントをくれるよ。
◎このモノ、生命体、どこに置いたらイキイキする?(つながりある配置)
◎このモノ、生命はいくつの役割を持っている?(多機能性)
◎これが無くなったらヤバいものって?(重要機能の維持)
◎どうしたらもっと楽に動ける?(効果的なエネルギー計画)
◎生物資源か再生資源では出来ないか?(生物資源、再生資源の利用)
◎この排泄物は何に変えられるだろう?(エネルギーの循環)
◎どうやってこのスペースでできるだろう?(小規模集約システム)
◎このモノ、生命体はほっといたら何をする?何になる?(自然遷移の加速)
◎このモノ、生命体はどんな仲間が必要?(多様性)
◎ここにはエッジはある?どう活かせる?(接縁効果)



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