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WTO漁業補助金交渉、途上国の特別措置で対立続く

世界貿易機関(WTO)は2023年12月21日、漁業補助金交渉の議長テキストを公表しました。2024年2月26~29日にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開く第13回閣僚会議(MC13)での合意を目指しています。「過剰漁獲につながる補助金の禁止」に向け、途上国向けの特別措置(SDT)として、適用除外期間を何年認めるかを巡り、加盟国の対立が続いています。議長テキストでは「X」年と空欄のままで、議論が難航していることが浮き彫りとなりました。
 
2001年に始まったWTO漁業交渉は、2022年6月の第12回閣僚会議(MC12)で、「IUU(違法・無報告・無規制)漁業に対する補助金の禁止」や、「乱獲状態にある資源に対する補助金の禁止」で合意されました。しかし、焦点となった「過剰漁獲につながる補助金の禁止」については、途上国向けの適用除外期間を巡って先進国と途上国が激しく対立し、合意が先送りされました。
 
適用除外期間について、先進国はゼロを含め限りなく短くするよう主張したのに対し、途上国はできるだけ長くするよう主張しました。MC12の時点では「0~25年」と大きな開きがあり、最終合意案では「7年」との妥協案が提示されました。
 
しかし、「グローバルサウスの盟主」を自任するインドは「25年で合意できなければ交渉を妥結できない」と、最後まで強硬姿勢を崩しませんでした。このため、「過剰漁獲につながる補助金の禁止」について合意が得られず、結論がMC13に先送りされました。
 
これまでの流れから見る限り、MC13ではインドがどこまで歩み寄るかが焦点となります。日本は、MC12の最終合意案を受け入れる意向を表明していたため、MC13でも同じ対応になると予想されます。日本は「交渉が妥結しても、新たに禁止対象となる漁業補助金は日本には存在しない」として、日本への影響はないとの見解を既に示しています。
 
WTOはMC13での漁業補助金交渉の決着を目指し、2023年3月20~24日を「第1回フィッシュウィーク」に設定し、集中的な議論を始めました。その後もフィッシュウィークはたびたび設けられ、同年12月4~8日が最後のフィッシュウィークとなりましたが、大きな進展はなかったようです。WTOのオコンジョイウェアラ事務局長は会合の最後に「困難な状況の中にも希望は残っている。(交渉を)継続し、隔たりを埋めていこう」と呼び掛けました。
 
漁業補助金交渉を取り仕切るWTOルール交渉委員会のグルナルソン議長(アイスランド)は12月21日、議長テキストの公表に関し、「われわれは漁業補助金交渉の成功に向けて重要な岐路に立っている。この新たなドラフトはこの数カ月間の努力のたまものであり、MC13での交渉妥結に向け、メンバーの立場の隔たりを埋める一助となるよう期待している」と表明しました。その上で、「今こそ、メンバー全員が受け入れられる現実的な妥協点を見つけるときだ」と訴えました。

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