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英国・ネイ湖でアオコ汚染が深刻化

BBCスカイニュースなど英メディアによると、英国最大の湖であるネイ湖で2023年夏、有毒アオコによる汚染が深刻になっています。かつての米国のエリー湖のように飲料水が飲めなくなるほどの事態には至っていませんが、鳥や魚が死んでいるほか、遊泳禁止や漁の制限といった影響が生じ、周辺住民らの抗議行動も起きています。農地からの肥料の流出が湖の汚染原因の一つとして、農業の影響が指摘されています。アオコ汚染は、米国のエリー湖をはじめ、日本を含む世界各地で以前から問題になっていますが、地球温暖化によって悪化するとの指摘もあり、農業界は対策の強化を求められることになりそうです。

ネイ湖は北アイルランドにある淡水湖で、面積は383平方キロメートルと、琵琶湖(670平方キロメートル)の6割弱の大きさです。約190万人が暮らす北アイルランド地方で重要な水源となっており、住民の4割に飲料水を供給しています。欧州最大の天然ウナギの産地でもあります。

汚染の原因と指摘されているのが、農業排水や生活排水です。農業については、窒素やリンなどの肥料を農地に散布しすぎた結果、一部が農地の外に流れ出し、ネイ湖に注ぎ込んだということです。この結果、湖の富栄養化を招き、アオコの大量発生につながったというわけです。他の湖沼のアオコ汚染とよく似た状況です。

また、カスピ海や黒海を原産とする外来種のゼブラガイが約20年前から増殖していることも一因と指摘されています。ゼブラガイは湖水をろ過して透明度を高めるため、太陽光が湖の深くまで届くようになり、アオコの発生を加速させるということです。エリー湖など北米五大湖でもゼブラガイの繁殖が問題になっています。

北アイルランドの農業・環境・農村省(DAERA)は、太陽光が豊富で、水の流れがあまりなく、窒素やリンなどの栄養分が多い水域にアオコが発生しやすいとの見解を示しています。

北アイルランドで上下水道サービスを提供する「北アイルランド・ウオーター」は9月15日、ネイ湖の浄水場にはアオコを処理する能力があるため、水道水の安全性に問題はなく、これまで通りに飲んでも大丈夫だと発表しました。水道水に変な味や臭いがあったとしても、水質の基準を満たしており、健康へのリスクはないということです。

しかし、ネイ湖での遊泳は禁じられ、ウナギなど釣った魚は食べずに湖に戻すよう指示されています。このため、環境への懸念に加え、水泳愛好家やウナギ漁関係者らの不満は募り、9月17日には100人以上による抗議行動が行われました。アオコ汚染によって「ネイ湖は死につつある」と訴え、「通夜」を営んだということです。

アオコで汚染されたネイ湖=スカイニュースのウェブサイトより

ネイ湖のアオコ汚染に対する当局の動きは鈍いようで、具体的な対策は報じられていません。北アイルランドの農業・環境・農村相を務めたエドウィン・プーツ氏はBBCに対し、「アオコは非常に重要な問題だ」との認識を示した上で、「科学者に何ができるかを報告してもらう必要がある」と述べました。アオコ汚染の主因はゼブラガイとの認識を示しました。

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