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米国が綿花輸出で世界一から転落 初めてブラジルに抜かれる

米農務省(USDA)は7月12日、2023~24年度(23年8月~24年7月)の米国の綿花輸出が初めてブラジルに抜かれるとの予測を公表しました。首位転落は30年ぶりです。米国は小麦や大豆も首位から既に転落し、トウモロコシも一時的にブラジルに抜かれており、農産物輸出大国としての地位が徐々に低下していることが浮き彫りとなっています。
 
USDAの予測によると、2023~24年度の米国の綿花輸出は前年度比9%減の252.6万トン(1160万俵)にとどまりそうです。これに対し、ブラジルは1.8倍の267.8万トン(1230万俵)と急増し、過去最高に達する見通しです。
 
ブラジルの輸出が急増するのは、生産面積の拡大や単位面積当たり収量の増加により、生産高が24%増の317.2万トンと過去最高になり、輸出余力が増すためです。生産高はこの7年間で2倍以上に増えました。この結果、7年前までは世界4位の輸出国だったのに、オーストラリアやインドに続き、米国まで抜いて、一気に首位に上り詰めることになります。
 
これに対し、米国は主産地の南部テキサス州が干ばつに見舞われた影響で17%減の262.7万トンと、40年ぶりの低水準にとどまる見通しです。大豊作となったブラジルが輸出を伸ばし、大不作となった米国が輸出を減らしたことで、首位が逆転するということです。
 
USDAはブラジルの躍進の理由について、収穫面積が急拡大していることに加え、単位面積当たり収量の増加を強調しています。遺伝子組み換え作物をはじめとした技術の進歩や、天候に恵まれたこと、資材価格が落ち着いてきたことで、単位面積当たり収量は過去最高になるということです。
 
USDAによると、米国は1990年代初めまでは旧ソ連と綿花輸出の首位争いを繰り広げてきましたが、1993~94年度以降は首位を維持してきました。生産高は中国やインドより少なかったものの、国内消費は両国より少ないため、その分を輸出に多く振り向けることができました。
 
中国は世界最大の綿花生産国であるとともに、世界最大の綿花消費国であり、世界最大の綿花輸入国でもあります。インドは世界第2位の綿花生産国であり、世界第2位の綿花消費国です。
 
一方、2024~25年度の綿花輸出について、USDAは米国が首位を奪還すると予測しています。米国は平年並みの天候となることを前提に、12%増の283万トンと、4年ぶりに前年度を上回ると見込んでいます。これに対し、ブラジルは2%増の272.2万トンと、過去最高を更新するものの、米国には及ばないと予測します。
 
ただ、USDAは、テキサス州の天候は依然として不安定であるため、米国の輸出が現時点の予測を下回り、ブラジルが首位を維持する可能性があるともわざわざ指摘しています。綿花輸出の首位争いは、天候次第のようです。
 
米国は、かつては大豆や小麦の輸出も世界一でした。しかし、大豆は2012~13年度にブラジルに抜かれ、それ以降は2位が続いています。小麦は2013~14年度に欧州連合(EU)に抜かれた後、ずるずると順位を落とし、2023~24年度はロシア、EU、カナダ、オーストラリアに次いで世界5位となっています。
 
トウモロコシ輸出は2022~23年度にブラジルに一時抜かれましたが、翌年度からは首位を堅持しています。ただ、接戦が続いており、米国を象徴する作物であるトウモロコシでも、再び首位転落の可能性はありそうです。

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