米国農家の景況感が大幅改善

米国のパデュー大学とCMEグループが2023年1月3日に発表した12月の「農業経済バロメーター」は126となり、前月比24ポイント上昇し、2021年8月以来1年4カ月ぶりの高水準となりました。米国農家の景況感が、ロシアによるウクライナ侵攻後の資材価格の高騰や米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げで悪化した後、大幅に改善したことを示しています。

農業経済バロメーターは、米国農家の景況感を把握できるユニークな指標です。米国の400農家を対象に、5つの質問を基に景況感を点数化し、2015年10月~2016年3月を100として毎月の水準を示しています。具体的な質問内容は、「1年前と比べてあなたの経営は改善しているか」「1年後のあなたの経営は良くなっていると思うか」「農業経済全体は今後1年間に良くなると思うか」「米国農業は今後5年間に良くなると思うか」「建物や機械など大規模な農業投資を行うのに今は良い時期だと思うか」-です。今回の調査は2022年12月5~9日に実施されました。

上図の通り、農業経済バロメーターは、新型コロナウイルスの拡大後の2020年4月に96と、穀物価格が低迷していた2016年10月(92)以来、3年半ぶりの低水準に下落しました。その後は、米政府のコロナ対策の進展や穀物価格の上昇を受けて急回復し、2020年11月に184と、過去最高を更新しました。しかし、2021年2月にロシアがウクライナに侵攻すると、農業資材の価格が高騰し、コスト増による経営への懸念が広がったため、2022年6月に97に低下していました。FRBが大幅な利上げを続け、金利上昇による借り入れコストの増加も景況感を悪化させました。

12月に景況感が急回復した理由として、パデュー大学の調査担当者は「財務状況に関する農家の現状認識が改善したのが主因」と分析しています。多くの農家はコスト増加によって経営が悪化すると予想していたけれど、秋の収穫を終えてみると、実際はそれほど悪くなかったということのようです。ただ、コスト増加により、2023年の収支は2022年より悪化すると農家は予想しています。

また、「農家の財務状況が改善していることは、米農務省の予測とも一致している」とも指摘しています。米農務省は12月1日、収入から支出を差し引いた2022年の米国農家の純所得は1605億ドルと、前年比13.8%増との予測を公表しました(下図)。農業資材など費用は増えるものの、農産物価格の上昇で収入はそれ以上に増えるとの見方を示しています。物価変動の影響を除くと、前年比7.2%増となり、1973年以来、49年ぶりの高い所得水準となります。2002~2021年の過去20年平均を53.3%も上回るということです。

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