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オーストラリアの農業生産・輸出額が過去最高

オーストラリアの農業・水産・森林省(DAFF)は2023年3月7日、2022~2023年度(7~6月)の農業生産額が前年度比3%増の899億8800万ドルと、過去最高になるとの予測を発表しました。適度な降雨といった天候に恵まれて小麦の生産量が増える上、ロシアによるウクライナ侵攻後の価格高騰が金額を押し上げています。輸出額も12%増の748億3800万ドルと、過去最高の見通しです。紛争の影響で穀物の主要輸出国であるウクライナからの供給不安が世界的に広がりましたが、オーストラリアなどの輸出拡大で穴埋めされているようです。水産や林業を加えた農林水産物合計では3%増の960億1300万ドルの見込みで、こちらも過去最高となります。

農業資源経済科学局(ABARES)の担当者は「オーストラリアは3年連続で多雨の恩恵を受け、それが数字に表われた。例外的な生育条件と商品価格の上昇により、記録的な生産を実現しようとしている」とコメントしました。ただ、今後については「ラニーニャ現象がしばらく続き、乾燥が予測される」として、2023~2024年度以降の生産額や輸出額は減少するとの見通しを示しています。

2022~2023年度の農業生産額の内訳をみると、作物が4%増の542億7700万ドルと好調で、畜産物は4%減の254億0200万ドルにとどまりました。品目別では、主力の小麦が14%増の150億ドル、ナタネが1%増の60億6500万ドルと、そろって過去最高の見通しです。このほか、果物・ナッツが0.1%減の61億8200万ドル、野菜が6%増の58億9200万ドル、牛肉が6%減の143億5900万ドルとなっています。牛肉は価格下落が響きました。

輸出では、小麦が25%増の141億9700万ドルと、全体の19%を占める見通しです。国内生産の95%が輸出に振り向けられることになります。このほか、ナタネが5%増の60億5200万ドル、牛肉が1%減の97億7900万ドルなどとなっています。

輸出先別では、2021~2022年度のデータまでしか示されていません。同年度の輸出総額は37%増の666億2200万ドルで、中国が28%増の132億1300万ドルと首位で、全体のほぼ2割を占めました。日本も34%増の61億7300万ドルと、全体の9%余りを占め、重要な輸出先となっています。日本向けでは牛肉が21億3000万ドルと最も多く、ナタネが7億2400万ドル、小麦が5億0800万ドルなどとなっています。

米国向けも31%増の50億0700万ドルに上り、このうち牛肉が17億3000万ドルと3分の1以上を占めています。米国は世界最大の牛肉生産・消費国で、世界有数の有数の輸出国でもありながら、世界有数の輸入国でもあるという不思議な国です。オーストラリア産は米国産より安価であるため、米国の外食産業などが多く使っているようです。このほか、インドネシア向けが20%増の39億9200万ドル、韓国向けが17%増の36億4100万ドルとなっています。

一方、DAFFは翌2023~2024年度のオーストラリアの農業生産額は10%減の814億3200万ドルと、6年ぶりに減少すると予測しています。それでも過去3番目の大きさで、高い水準は維持することになります。乾燥天候の影響で作物が15%減の462億4200万ドルにとどまり、中でも小麦が29%減の106億5600万ドルと大きく落ち込む見通しということです。生産減に伴って輸出も減少し、2023~2024年度は15%減の638億7000万ドルに落ち込むと予測しています。小麦が24%減の107億8400万ドルと激減する見込みです。

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