中国向けの米国農産物の輸出が過去最高

米農務省(USDA)は2023年1月6日、2022年度(10~9月)の米国産農産物の中国向け輸出額が過去最高の364億ドルとの予測を発表しました。トランプ前政権時に始まった米中貿易紛争の結果、2019年度には101億ドルに落ち込みましたが、その後急回復し、2年連続で中国が世界最大の農産物輸出先になるということです。両国の外交関係は悪化していますが、経済関係、少なくとも農産物貿易に関しては両国の関係が一段と深まっています。

トランプ前政権が2020年1月に実現した中国との第一段階合意では、2020~21年の2年間で、米国産品の対中輸出総額を2017年比2000億ドル増やす目標が設定されました。このうち農産物では、2020~21年に800億ドル以上の輸出を目指すことになりました。年間では400億ドル以上となるので、2022年度に過去最高になってもこの水準は依然下回りますが、バイデン政権は気にしていないようです。

2022年度は農産物の対中輸出量は減少したものの、食料価格の高騰が追い風となり、金額ベースでは前年を上回りました。品目別では、全体の半分近くを占める大豆のほか、トウモロコシや牛肉、鶏肉、ナッツ類、ソルガム(モロコシ)の輸出額が過去最高となりました。

農務省は「国際商品市場の高騰や、米国産品に対する中国の力強い需要により、過去最高となった。第一段階合意により、鶏肉や牛肉などで技術的・非技術的な障壁が撤廃、削減されたことで米国産農産物の需要が高まり、米国の価格や農家の所得を支えた」と分析しています。さらに、「米国の農場やその収益性にとって、中国の重要性は無視できない」とも指摘し、一段と輸出を増やしたい考えをにじませます。2023年度の輸出額は340億ドルと、前年度からやや減少するものの、引き続き米国産農産物にとって中国が最大の市場であるとの見方を示しています。

品目別に2022年度の対中輸出額をみると、大豆が164億ドルと、全体の半分近くを占める見通しです。中国は世界最大の大豆輸入国で、世界全体の輸入シェアのほぼ6割を占めます。主に家畜の飼料として使われますが、食肉需要の高まりにつれて飼料の需要も増えています。ロシアによるウクライナ侵攻や南米の干ばつにより、輸出価格が平均で24%も上昇したのが追い風になったと農務省は分析しています。

トウモロコシは48億ドルと、過去最大となった前年度から減少しましたが、過去2番目の高水準を維持しました。ソルガムは過去最高の22億ドル、アルファルファ干し草も過去最高の6.6億ドルとなりました。これらも主に家畜の飼料として消費されます。綿花は27億ドルと、過去2番目の高水準でした。

畜産では、牛肉が21億ドルと、過去最高となりました。中国では牛肉の需要が急拡大しており、2022年度の世界全体からの輸入総額は170億ドルと、この10年で10倍以上に急増しています。米国産牛肉の輸出増加は、中国国内の需要拡大や第一段階合意の効果のほか、対中輸出でライバルとなるオーストラリアが干ばつの影響による生産減や中国との外交的緊張によってシェアを落としていることを農務省は挙げています。


豚肉は11億ドルに減少しました。豚熱の影響で一時落ち込んだ中国の国内生産が回復し、米国だけでなく欧州連合(EU)やカナダからの輸入も減少しました。鶏肉は11億ドル、乳製品は7.5億ドルとなりました。ピスタチオやアーモンドなどナッツ類は8.75ドルと、過去最高となりました。



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