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アフリカ諸国がスマート農業を推進

ケニアのルト大統領とアフリカ開発銀行のアデシナ総裁、「適応に関するグローバルセンター」(GCA、本部・オランダ)のフェルコーイエン最高経営責任者(CEO)は2023年3月10日、アフリカ農業の解決策に関する共同提言を米誌ニューズウィークに寄稿しました。域内の食料自給を目指し、干ばつの増加など気候変動に適応しながら食料を増産するため、スマート農業の重要性を強調しています。そのためには年150億ドル(約2兆円)の資金が必要になるとして、各国に支援を呼び掛けています。

アフリカ諸国は1月下旬、セネガルのダカールで食料問題を議論する首脳会議(ダカール2サミット)を開き、アフリカ域内での食料自給を目指すことを確認しました。今回の寄稿は、ダカール2サミットを踏まえ、世界的に強い影響力を持つメディアであるニューズウィーク誌を通じ、さまざまな団体に投資を求める狙いがあるようです。

寄稿ではまず、アフリカ東部のソマリアやエチオピアなど「アフリカの角」と呼ばれる地域は現在、過去40年間で最悪の干ばつに見舞われている厳しい現状を紹介しています。国連児童基金(UNICEF)は「2000万人の子どもが深刻な飢えや病気の危険にさらされている」と警告しているということです。

アフリカの大部分は世界平均の2倍のペースで気温上昇が進んでおり、干ばつは一時的な異常気象ではなく、気候変動によって常態化しつつあると分析します。気候変動と共存していくことが不可欠で、そのためには「新しい考え方と新しいアプローチが必要だ」として、これまでのような食料援助ではなく、域内の食料増産が重要だと訴えています。

「問題に対する答えは存在する」として、スマート農業の推進を挙げています。アフリカでは既に、スタートアップ企業により、太陽光発電を利用した灌漑システムや、衛生写真を利用して害虫や作物の病害を検出するシステムなどが実用化され、数万の農家で収量増加といった大きな効果が出ているということです。しかし、アフリカ全域で気候変動に適応していくためには、数百万の農家にこうしたシステムを導入する必要があり、投資が必要になると訴えています。

具体的な投資額として、GCAは年150億ドル(約2兆円)と試算します。これにより、アフリカ全域の水管理やインフラ、土地回復、気候情報サービスを改善できるということです。年150億ドルという金額について、ニューヨークの地下鉄を運用するコストより低いとして、決して確保できないのではないとも強調します。これらの対策によって、作物の収量や農家所得の増加、食料輸入の減少、健康の向上といったさまざまなプラス効果が生じ、1ドルの投資に対して5ドル、つまり5倍の投資効果があると分析しています。

反対に、こうした対策を行わなければ、災害支援や復興のために年何千億ドルものコストが生じると警鐘を鳴らします。ケニアだけでも、地球温暖化の影響により、1年で国内総生産(GDP)の3.0~4.4%が失われているということです。アフリカ全体では、穀物だけで年1億トン以上を輸入し、そのために750億ドルのコストが掛かっており、こうした状況は「持続不可能で、無責任で、全く不要なことだ」との認識を表明しています。その上で、気候変動に適応しながら農業生産を増やすのは「より強じんな未来への投資だ」と訴えました。

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