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「独立、わたしたちの幸福、自由」

ひさしぶりのNOTEです。あっという間に1年が終わりそう。去年の今頃は、ベトナム映画「Co Ba Sai Gon」をどこで公開できるか、映画館の方や宣伝スタッフと話し合いを続けていた頃でした。

邦題を結局「サイゴン・クチュール」としたこの作品は、主人公の女の子が約50年後の自分に会ってみたら、なんと自殺しようとしている瞬間だった…というまさかの展開から始まります。でも、そこでこの話は終わりません。若い頃に自分がどんなに我儘で、どんなに周りが見えていなかったかに気づき、自分の得意な事を周りにどういう風に活かしてもらえるか知り、徐々に自分を発見していく成長物語です。

ファッションの映画なので、もちろん主役は女性たち。設定は1969年のサイゴン(今のホーチミン)つまりベトナム戦争中の「サイゴン」なのですが、これまで『地獄の黙示録』や『プラトーン』などで描かれてきた死闘ではない、素顔のベトナムが描かれて居ます。

映画は1969年にファッション・リーダーだった主人公ニュイが、いかに周りが見えておらず傲慢だったかを最初に痛いぐらい描いて居ますが、若い頃なんてそんなもの。周りが見えていなくても、自分が世界の中心にいるかのように自意識過剰で、その反面で未来への不安を払拭できず、目の前の気になることだけを追いかけているような日々を、私も過ごしてきた気がします。

とは言え時代はどんどん変化して、誰もが自分の人生に「独立」と「幸福」「自由」を求められるようになりました。SNSで言いたいことを発言することも、誰かのコトバをまるで自分の主張のように拡散することも簡単。その反面、傷つく恐れがあっても誰も助けてくれない。ついには自分の言いたいことをいう前に、流されて生きる方がよっぽど楽になっているように思えます。

数年前「WE CAN DO IT!」という言葉が流行りましたが、元は戦時中のアメリカで女性たちを駆り立てるために使われたポスターのコトバだそうです。
それをこの映画では、ベトナム建国の父・ホーチミンのコトバに変えて「独立、わたしたちの幸福、自由」と吹き出しに入れて映画のキャンペーンをしたそうです。写真はその画像をコラージュしたものです。

去年からの、#MeToo の流れもありますが、今や女性は、か弱き存在ではありません。告発もすれば、不公平な差別に対し声を上げることも当たり前です。ただ実際、まだまだ世の中は(特に日本やアジアは)男性たちが優位な社会で、怖いことも一杯。

でもこの作品を脚本・監督したグエン・ケイが来日した時に言っていたのは「今の人生を精一杯生きて肯定すること」。女性だから、男性だから、若いから、年寄りだから、アジア人だから、チカラがないから…ではなく、過去にも現代にも、また教えられてきた常識にも囚われず、自分で自分の人生を謳歌したほうが楽しいよ♪というメッセージだと私は感じました。

女性が主人公のファッション映画なので、たぶん女性の方が感情移入しやすいかもしれませんが、出来たら常識に囚われずに、年齢も性別も問わず楽しんで見てもらいたい、そんな映画です。

そして、見終わった後、元気になれる作品だと思っています。

それでも悩んで前に進めない人に、この映画に出てくるおまじないのコトバがあります。

「oh la la !」
(ウー、ラ、ラ!)

きっと「自分の幸福」は、自分でしが捕まえられないから!!

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