コールドスリープ・タイムカプセル
愛してる、愛してるって壊れてるラジオみたいに繰り返したら、銀色の1人専用カプセルは彼女を乗せて、見えなくなった。
致死量に満たない催涙ガスが今タラップ中に充ちて溢れる。この星に生命体はもう住めない。随分前から科学者たちは分かってて事実を隠蔽し続けた。それが明るみになってふた月。憎しみのパワーはすごい。たくさんの人間たちが争い死んだ。
彼女には生き抜いていて欲しかった。コールドスリープ・タイムカプセル。本当は、総理大臣が乗る予定だったんだけど、職権乱用。あいつらにばれないようにプログラム書き換えといて正解でした。君を連れ、僕はタラップまで駆けてゆく。追っ手が銃を乱射してくる。注射器は痛かったかな。ごめんなさい。きっと抵抗すると思って。
今頃は彼女もきっと夢の中。目覚めるころは新しい星。着陸を認識したらゆっくりとジムノペディが流れ始める。ばかなこと勝手にするな、そうやって怒るんだろな。君のことだし。
こめかみに冷たいものが当てられてそれが銃だと分かる、見ずとも。
来世では犬になりたい。従順であなたにまっすぐ、向かっていたい。何もかもきっと変わっているけれど、あなたは雨女だろ? 分かるよ。
それじゃまた。会ったらどうか叱ってよ。もいちど観たかったなあ、朝焼け。
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57577のリズムでつくった文章です。 #tanka #短歌条例
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