音楽と心理学もどき1 共感性

音楽にはさまざまな感情を表現する側面がある。
特に民衆が文字を読める国では、大きな組織が音楽を使って何かを伝える、教えるという利用のされ方をすることが少ない。せいぜいCMくらいだろうか。とりあえず、娯楽のための音楽は感情や主張を訴えることに重きを置く傾向にある。

ところで、私は自分の好きな音楽、すなわちヘビロテで聞くような音楽を他人に教えることをすごく怖がる。
なぜならそれは、自分の心を切ってその断面を相手に見せていることと同じだからだ。なので、おすすめを聞かれたときには、良くできたおもしろい音楽、相手が好きそう(理解できそう)な音楽を言うようにしている。

では、なぜヘビロテで聞く音楽を教えることは、自分の心の断面を晒すことになるのか。
それは音楽のもつ共感能力の高さだ。

よくできている音楽は、リズム、メロディ、ハーモニーの要素を駆使していろいろなものを表現している。明るいなかにも陰りのあるコード、皮肉めいた転調、激しく怒るリズム、どこか切ないメロディ。そういった複雑な心境に手が届く。自分の言語化できない思いに寄り添ってくれる。
歌のように、言語がのった音楽であっても、言外にある感情を表現している。
前向きな歌詞なのにどこか切なく聞こえる曲、ディスりを明るく歌って皮肉な曲などに覚えはないだろうか。
実験してみるとおもしろいのだが、曲調前向きな歌詞に明るい曲を当てるとただのノーテンキになったり、ディスりに短調でアップテンポな曲を当てるとただただキレてるだけになったりで深みがなくなる。
音楽とのコミュニケーションは、ウワベだけのコミュニケーションとは違う。より本音で本心で向き合うことになる。
正直、そこら辺の人間に悩みを打ち明けるより、よっぽどメンタルに良い。だからこそ、権力者の元を離れても音楽がここまで発展したのだろう。

ということは、よく聞く音楽というのは、その人の感情や感性に共感していることになる。つまり、その人が感じていることをダイレクトに知ることになるのだ。

なので、私は興味のわいた人に「普段、どんな音楽を聞くんですか?」と聞いてみる。複数聞けば聞くだけ、共通点がみつかり、なぜその曲を聞いてるのかが分かる。
もしくは何回も何年も聞いてしまう一曲もかなり参考になる。より強くその人自身を知れるからだ。
昔、好きな人が鬼束ちひろの『infection』をヘビロテしていると知って、その強さ繊細さ脆さに惚れ直した。ちなみにサビがひそかに二種類あって、その巧みさと発想に心臓を掴まれた。6度進行の切ない叫びがたまらない。
勝手に自分の好きな曲をべらべら喋る人もいる。
ただただ陽気な曲だったり、辛いけどがんばってるよーみたいな曲だったりで
あぁ、仲良くなれないな、と思ったりする。そしてやっぱり仲良くなれない。笑

私の話はさておき、すっごくざっくり曲種と心情を繋げると、ロックは怒り、ジャズは気だるさ、ブルースは哀愁などなど。
でも、今は本当にいろんな曲があるので、聞いてみてのインスピレーションを大事にしてみてほしい。もっと深くしりたければ、その曲のジャンルの成り立ちを調べたり、音楽学や音楽理論を学んで、再度分析してみることをおすすめする。

ちなみに、流行りの当たり障りのない曲しか言わない人間は、
断固として心を開かない人間か
なんにも考えてない平和な人であることが多い。

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