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まともなんかくそくらえでした


弟がこの世からいなくなって一年が経った。
7月に入ってすぐ、目をつぶるといろんなことがフラッシュバックしてしまい夜眠れなくなった。
セミの鳴き声や関連するものや音、暑さに反応しすぎてしまって、体調を崩したり涙が止まらなくなったり……不安定な自分を保つのに必死の日々。
わざわざ傷口に大量の塩をこすりつけるように巻き戻しては、つぶされそうになる期間が過ぎるまではめちゃくちゃしんどかった!猛烈に!!

今はずいぶんと落ち着いてきたので、初盆を迎える前に自分の整理のために書きたい。


まともに生きれなくてごめんなさい

弟が家族に対して残した一文。
弟の、彼の、今まで何を見てたんやろう?いやいや、はなから決めつけて見ようとしてなかった。苦しさもしんどさも淋しさも痛みも。
なーんにも見ちゃいなかった。

まだみんなで住んでた頃は私と私以外、家族みんなが自分自身のことでいっぱいいっぱいで誰のことにも関心がなかった。
頼むから巻き込まないで、当たり前のことをしてくれ、と無言の声と空気感が充満してたと思う。
家庭環境はたぶん、世間一般の「まとも」とされるものではなかったのに、それぞれにはまともや常識を押し付けていた。
いや、私の場合は、まともで在りたいから人一倍、当たり前を求めていたんだろうな。

なんやかんやあって実家はなくなり、それぞれでやっていくようになって私の中の、家族であっても他人という意識は強まっていった。
自分もめちゃくちゃ傷ついて生きてきた(と思ってた)から、もうこれ以上家族のことに巻き込まれたくなかったし関わりたくもなかったんだよ。私もまだまだ自分しか見れてなかった。


障害福祉の仕事を始めて、「まとも」が幻想だと気付いて、いつの間にか結婚して、家庭を持って、そうやっていろんな経験をしたり考えに触れたり変化していく中で、2020年がやってきた。
不安、恐怖、神経質になる、先がまったく想像できない、人がたくさん亡くなる…
皮肉なんだかバカなんだか、やっと、やっと、当たり前のことなんてないのだと腹落ちした。
そして、弟に対しても、生きててくれたらもうそれだけで充分やわ…と本気で思うようになった。
何年も何年もかかってようやく、ほんの少しだけ、彼の生きづらさを理解できた気がして。

コロナが少し落ち着いた時期に弟からお茶に誘ってもらった。ずっと家族のことを避けてたのに、連絡くれたことがすっごいうれしかった。
きっとロクなものを食べてないので、無添加のレトルト味噌汁とか日持ちする食べ物とかくだもの、板藍茶と飴を用意して、付箋にメモ書いて……と、オカンみたいにせっせと用意した。

数年ぶりに会うしどんな姿になってるんかな、体調は良いんかな、ていうかちゃんと来るんかな…と、当日は緊張しまくりで手汗かいてたのを今でも覚えてる。
無事に会えたとき、こんな小さかったんやな…って思ったのも。

喫茶店に入って、弟は、あんまり食欲ないと言ってココアを、姉の私はケーキセットを注文する。
二杯目もココアを飲んでた気がするなあ。
もっと高いものご馳走したらよかったなあ。なんて。
最近の状態や彼女の話、絵や小説を書いてる話、通ってる精神科がヤブなこと…口数はそんなに多くないけどぽつりぽつり話して、本をもらったり、お願いを頼まれたり。
買い物に少し付き合って、夕方ぐらいにバイバイ。

弟はいろんな意味で変わり果てていたけど、会えて楽しかったしうれしかった。
お花を買って帰って、生存確認のためにこっそり見てたTwitterに「楽しかった」って投稿されてることにまたうれしくなって。
今度はうちでお鍋したいな、と夫に話してたような気がする。


ああ、帰り際にぎゅーって抱きしめたらよかった。照れくさくてようせんけど。あったかい弟に触れておけばよかった。
最初で最後の、喫茶店でのおしゃべりになるなんて思ってなかったもの。

グイグイ来られたくないやろうし体もしんどいやろうし…と考えて、なかなか誘うことはせず、もらった本の感想と誕生日にLINEをするぐらいで。
それでも、
昔よりは良い関係を築けてると思ってた私は、幸せな人間やったんやな。

今思うこと

悲しいことには変わりないし、生きててほしかった、と思う気持ちもある。
遺された側は消えないものを抱きしめて生きていかなあかんし、感情の波があるからいつもそういう風に思えるわけじゃないけど。
でも、やっぱり、たった一人の弟に、
今まで、よく頑張って生きて抜いてきたね。お疲れさま。
って言いたいなあ。

バカ!あほ!とも言いたいけど、それよりもやっぱり、ごめんね、も。
いろんな苦しみから解放されてたらいいな、と祈るしかない。



友達がお線香を上げにきてくれたときに、「今までもこれからも大事な親友なんで」って話してくれてたの聞いてた?
あんたの分までめいっぱい生きるって言ってたわ。支えてくれてた友達がいたんやね。

もうひとつさ、
家を片付けてたとき、帰ってきてたよね。
私らに「あんたな~!!!!」って言われて逃げたやろ笑
様子見に来たのか、お別れを言いに来てくれたのかどっちやったんかな?
え、どっちでもないとかありえそうですけど…笑

社会の、世の中の、まともってなんなんやろう、ってことをもっと話せばよかったなあ。いろんなことがもう遅すぎて、ごめんね。
また会えたらお茶しながら話そうな。

PS.
トカゲくん、めっちゃ元気やで。私の愛情がちょっと重いみたいやけど笑
これからもめいっぱい可愛がるわ!



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