劇場版 PSYCHO-PASS PROVIDENCE 感想

劇場版『PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』見てきました。

上映中のメモと皆様の感想や考察を元につらつらと感想を書き垂らしていきます。一度しか見ていないので見落とし勘違い忘却などあると思いますが、お手柔らかにご覧ください。

本作は2019年公開の映画『PSYCHO-PASS サイコパス Sinner of the System(以下SS) Case.3 恩讐の彼方に_』からアニメ三期の間を埋める物語…なんですが、「サイコパスの映画やる」以外の情報を入れずに見に行ったので、開始10分くらい時系列に「???」でした。

タイトルの「PROVIDENCE」とは、摂理、神の意志、神の導きのことで、キリスト教における「全ては神の配慮によって起こっている」という概念。神=シビュラかな。それともむしろそのままの意味で、シビュラシステムすらその「神の配慮」の中にあるということなのか。素直に前者だとは思いますが、後者でも皮肉効いてて良い。

開始早々狡噛さんがヘリから単独降下してきて、「うわ、かっこよ」となりました。あと水の作画が良かったらしい。今の時代CG使えばどこのスタジオでもあれくらいできるものなのか、そこまで万能じゃないのかよくわからないんですけど。どのアニメも海とか川とかの映像綺麗ですよね。
今回のキーパーソン、金髪の甲斐さんとイソギンチャクみたいな髪の人との戦闘を経て、大塚明夫ボイスで意味深な台詞があってOP。凛として時雨さんの『アレキシサイミアスペア』。流れた途端に「おー、サイコパスだー」って感じ。タイトルにある「アレキシサイミア」とは失感情症、感情はあるのに、それを認知したり表現したりができなくなる症状のことらしい。
OP開けて、何やら会議中の朱ちゃん。要するに「シビュラがあれば法律要らないよね?」という話、しかも結構後戻りできないところまで進んでいるようです。刑法の廃止と法務省の解体だったかな?そこに真っ向から反対する朱ちゃん、いや朱さん。遵法精神は一期の頃から朱さんがずっと大事にしてきたこと。「法が人を守るんじゃない、人が法を守るんです」という奴ですね。『めだかボックス』のめだかちゃんの名台詞「人がルールを守るべきなのではない。ルールが人を守るべきなのだ」とは真逆なようでいて、実は「法より人を上に置いている」という点では本質的に同じ価値観の下の台詞だと思っています。
更にシビュラシステムの産業海外展開の検討もされてたのかな、メモによると。AIの問題にしても武器輸出にしても、今のご時世に刺さりますね。ここで朱ちゃんのスカート短ない?と思ったけど、アニメシリーズ見返してみるとそうでもなかった。アニメの縮尺考えると膝上10cmくらいか。

以下、公式サイトのあらすじ部分でストーリーを追うと。

2118年1月。公安局統括監視官として会議に出席していた常守朱のもとへ、外国船舶で事件が起きたと一報が入った。同じ会議に出席していた厚生省統計本部長・慎導篤志とともに現場に急行する朱だったが、なぜか捜査権は外務省海外調査局行動課に委ねられていた。船からは、篤志が会議にゲストとして呼んだミリシア・ストロンスカヤ博士が遺体となって発見される。事件の背後には、行動課がずっと追っていた〈ピースブレイカー〉の存在があった。博士が確立した研究…通称〈ストロンスカヤ文書〉を狙い、〈ピースブレイカー〉の起こした事件だと知った刑事課一係は、行動課との共同捜査としてチームを編成する。そこには、かつて公安局から逃亡した、狡噛慎也の姿があったーー。博士が最後に通信した雑賀譲二の協力を得て、文書を手に入れるべく出島へ向かった一係だったが…。

以上、公式サイトより引用。

船舶の事件現場で篤志さんが水切りしてたけど、あれなにかの暗示ですか?公的なものではなくて、私的な会話ですよって意味?特に意味ない?
ストロンスカヤ博士の研究成を託されたことから、雑賀先生が捜査に協力することにこの人は相変わらず朱ちゃんが好きすぎる。〈ストロンスカヤ文書〉は出島の私書箱にあるということで、一同長崎へ。
の、前に、合同捜査になった外務省行動課のフレデリカさんに連れられて狡噛さんが帰国。再会。即一喝する宜野座さんに対して、じっと見つめるだけの朱ちゃんの心中やいかに。どの面下げて帰ってきやがったくらい言ってもいいと思う。「俺を捕まえに来い(キリッ)」とか言っといて他の女と一緒に帰国してきてるし。これに関してはSS3の時からちょっと思ってたんですけどね。連れて帰るの朱ちゃんじゃないんかい、と。なんで、「私が呼んだら帰ってきてくれたんですか?」には朱さんじゃなくて朱ちゃんを感じてちょっと萌えてしまった。朱ちゃん可愛いよ、朱ちゃん。この台詞のメモの後に「正しいと思うことをする」って書いてあるんですけど、それが狡噛さんの答えだったんでしたっけ?
流れで今回の狡噛さんと朱ちゃんの二人に関して一気に語ってしまうか。朱ちゃんの宜野座さんに対する「元先輩後輩としての信頼」と宜野座さんの朱ちゃんに対する「現上司部下としての敬意」に依る穏やかな関係と比べて、エレベーターでも距離とって立ってたり、相変わらず(といえば聞こえはいいが距離は感じる)「監視官」呼びだったり、それでいて敵の攻撃からは庇ってくれたりで叫びだしたいくらいでした。が、雑賀先生の一件の後、涙を見せるのもそれを止めるのも結局狡噛さんで、あぁなんだこの二人は私たちが心配するようなこと無かったなぁと思うと同時に、やっぱり叫びだしたい気持ちになったのでした。来るなと言ってもついてくるしね。「早く来てくださいね」とかね。やっぱりこの二人最高だな。恋愛感情ではない、それを超えた「バディ」としての絶対の絆があるので、フレデリカさんと一緒に帰ってきたとかどうとかは外野の戯れ言でしかないんでしょう。
本編に戻って、文書入手のために出島まで来たは良いけど、そこに文書はなかった。まあ、罠だわな。ここで明らかにメモが飛んでるんですけど、多分だいたい雑賀先生のせい。三期に出てなかったからどうしたんかと思ってたら、ここでかよ…。縢くんの時と同じ「え、なんで…?」って感情しか出てこなかった。本当になんで?朱ちゃんに言葉を遺して、託して自ら手を離す先生。最期に朱ちゃんの顔を見て逝けたのは、あの人にとってはもしかすると幸福だったのかもしれない。もっとずっと見守ってて欲しかったよ。先生。
舞台は変わって、今度は北方。寒そう。潜水艦出てきて、ちょっとふふってなった(ヒント:コナン)。部下を引き連れる朱さん、いや朱様。
今回の敵、砺波告善(となみつぐまさ(CV:大塚明夫))は、反シビュラではなく、むしろシビュラ信者。まあ、分からなくはないですよね。基本的にはシステムに従っていれば向いてる職業に就けて、とりあえず安定して生きていけるんですから。アニメ作品として外から見てるから管理社会やべーってなってるけど、あの世界に生きてて全部任せておけばOKというシステムがあって、少なくとも自分と親しい人の犯罪係数がシビュラに引っかかるようなものでなかったとしたら、私もなんの疑問もなくそれを享受してたと思います。この辺からはバトルシーン&朱様無双。あっちの潜水艦が出てくる映画では当たり前のように人が飛んだり跳ねたりしますが、こっちはリアル路線。地に足がついた(文字通り)体重を感じる戦闘描写は相変わらずかっこいいです。ここで二度目の「おー、サイコパスだー」要素。ドミネーターの認証シーン。あのお声で淡々とシステム起動を告げられると否が応でもテンションが上がります。すぐどっかやってたけど。狡噛さんと宜野座さんの共闘も熱い。あとフレデリカさんと三人並んでるの絵的にかっこいい。須郷さんがパイロットしてたり、雛河君がハッキングしてたり、得意分野を活かした活躍が見物でした。弥生さんちょっと影が薄かったが。
戦闘シーンもさることながら、朱様の朱様なシーン。まだ20代半ばであの肝の据わり具合、強い信念、その結果があの決断か…。

ここからはキャラクター別に少しずつ。

狡噛さん。かっけー。ひたすらかっけー。そりゃ宜野座さんからしたら二度と顔見せるなとも言いたくなるでしょうけど、やっぱり狡噛さんかっこいいよ。あのかっこいい狡噛さんが見れただけでこの映画を見た価値があったとさえ思える。だからこそ、朱ちゃんのあれを止められなかった時の苦痛は心にくるものがある。あと、強いて言うなら一回くらい面と向かって名前で呼んで欲しかった。いや、ここは意見の分かれるとこだろうな。まだまだとっとくべき奴かもしれない。
今回聖書にも明るいことが判明した。なんでも知ってるなこの人。

朱ちゃん。覚悟決まりすぎな朱さん。法を守るために法を犯したわけだけど、本当にそれしかなかったのか。もっと他に道があったんじゃないかと、思いはするけど刑法廃止が目前では致し方なかったのか。基本的に毅然とした朱さんだけど、狡噛さんの前で見せる弱さ、雑賀先生の前で見せる可愛さ、宜野座さんの前で見せる穏やかさに、彼女の変わらない色相美人ぶりを見た気がする。

宜野座さん。お団子。そしてお団子が解けるとサラッサラ。相変わらず美人。共闘シーンが最高だった。狡噛さんのドミネーターが壊れた(?)時に、実弾銃かワイヤーガンか投げてたけど、余りにもノータイムで良かった。なんやかんや良いコンビよな。義手アクションがかっこいい。相手ぶち抜いて、そのまま自爆に巻き込まれそうになったら今度は義手パージで脱出。強くなったな、伸元。

須郷さん。元パイロットという経歴を遺憾なく発揮。ガッツポーズ付きで「イエッス!」って言ってたのが意外だった。そんなこと言うんだね須郷さん。

雛河君。かわいい。ハッキング成功したときの「侵入成功!」がとてもかわいい。一係の癒し。

弥生さん。今回影が薄い。三期では社会復帰してるのでそこに繋がる描写は欲しかった。

志恩さん。弥生さんと志恩さんはメモに一回も登場していない。バックアップメインで、更に雛河君メインでハッキング仕掛けたので、二人が相対的に目立たなくなってしまったのはあるかもしれない。

美佳ちゃん。実は美佳ちゃんに関しては未だによく掴めていない。二期の際の「視聴者に嫌われてください」という指示からも分かる通り、メタ的には所謂ヘイトタンクだったと同時に、二期一係の組織的には朱ちゃんに対して真っ向から意見を言える(まためだかボックスで例えるけど)黒神生徒会長が球磨川副会長に望んだポジションだったのかもとも思う。周りがみんな余りにも朱ちゃん好きすぎるからね。まあ、結局この子も朱ちゃんのことなんだかんだで好きなんだろうけど。朱ちゃんの覚悟を目の前で見せつけられて、その先を託された時彼女はいったい何を思ったのか。二期ラストとSS3や三期でのキャラが個人的にどうにも整合性が取れなかったんだけど、これだと価値観が揺らぐのも当然か。…とも思ったけど見返してみると「シビュラの為」という根幹はあんまり変わってないのか。
あとドミネーターの改造も好きだよね。

雑賀先生。言葉がない。

灼&炯。ここから二人の事件が始まる。この映画を見てるか見てないかで、三期の印象も評価も変わると思う。三期再評価の流れくるかもしれない。お兄さんもお父さんも誰も悪くなかったけど、篤志さん本当にそのタイミングで死ななきゃダメだった?ちゃんと式が終わって、次の日とかで良かったじゃん。人生最良の日から真っ逆様ですよ。なんか、脅されてたりしたっけ???

いくつか他の方の感想を見て、多かった印象なのが、狡噛さんのドミネーターアクションをもっと見たかったというご意見。確かにドミネーターすぐ手放しちゃったけど、ドミネーター≒シビュラの不完全性が物語を動かす上で必要不可欠なのでまあ致し方ないかなと。AIに依る管理社会の是非はサイコパスシリーズを通して描かれ続けているテーマですが、別に朱ちゃんは全否定しているわけではないんですよね。正義の執行と秩序の維持、どちらも大切。どっちかだけじゃなく、いいとこどりして使っていければシビュラは悪いシステムじゃないはずなんですけどね。デスティニープランとかもそうですけど。そのバランスが難しいが。

色々考えたことはありましたが、一番言いたいのはこれ「やっぱりPSYCHO-PASSは狡噛さんと朱ちゃんが揃ってこそだ!」ということ。別にアニメ二期や三期が気に入らないということではないんですよ。ただ「やっぱりPSYCHO-PASSは狡噛さんと朱ちゃんが揃ってこそだ」とただそれだけなんです。比べるようなことではないんです。恋愛感情はない、と明言されてる二人ですが、それはそれとして二人並んで笑いあえるような未来が待っていることを願わずにはいられません。つまるところ四期はよ来いです。

なんだか取り留めがない上に後半急ぎ足になってしまいました。鑑賞直後は一気に感想書けそうな気がしてたんですけど、いざ言葉にしようとすると難しいですね。
お読みいただきありがとうございました。

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