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【アイナナ考察】TRIGGER「VARIANT」雑感―変化のための鎮魂(ネタバレ)

【アイナナ考察記事についてのお願い】
・「二次創作」としてお読みください。ストーリーの展開を保証するものではなく、公式やキャラクターを貶めようとするものではありません。
・アイナナに関するすべての情報を把握しているわけではありません。個人の妄想と願望を大いに含む、一解釈であることをご理解ください。

TRIGGERの2ndアルバム「VARIANT」がついに発売になった。


あと2週間もたたないうちにアニメ3期が始まるが、このアルバムが傍らにあることで、TRIGGERにとって試練しかない第3部も、なんとか一緒に歩んでいけるような気がしている。

音楽の専門的な知識など持ち合わせていないため、大したことは言えないが、とりあえず雑感として思ったことを書いておこうと思う。
私の関心は、5部で上演されるであろう「Crescent rise」とTRIGGERの今後ということになるので、そのあたりも無理やり妄想してみようと思っている。考察にも二次創作にも満たない妄言だと思ってもらいたい。

楽曲のネタバレ、MVのネタバレ、4部までのストーリーのネタバレ、すべてを含むため、苦手な方はUターンをおすすめする。
(※TRIGGER LIVE CROSS"VALIANT"の演出ネタバレも追記している)
以下、画像はすべて©アイドリッシュセブンより引用したものである。


1.セットリストから浮かび上がること

「VARIANT」は以下のような収録順になっている。

1.The dawn ~Sword of VARIANT~ (Instrumental)
2.VALIANT
3.Heavenly Visitor
4.Treasure!
5.Crescent rise
6.バラツユ
7.My Precious World
8.DIAMOND FUSION

1-2曲目で「新世界」が示され、3で「最初の目撃者」になり、4でブーストがかかって…というところは、多くの方が感じているところだと思う。そして最後にデビュー曲が位置していることで、「TRIGGERの再生」が示されている…というのも共通認識に近いものだと思う。

私が注目したいのはその狭間にある3曲である。
別に「Treasure!」からすぐに「DIAMOND FUSION」でも違和感はあまりないかもしれない箇所に位置するこの3曲が、それぞれかなり雰囲気の異なる3曲であることには意味があろう。
もちろん「Crescent rise」が劇中歌であることを忘れてはいけないのだが…

私はここに、「ふと立ち止まり、振り返るTRIGGER」というものを見た気がしている。
それはこのアルバムのコンセプトに反する感覚なのかもしれないが、それがあるからこそ「新生TRIGGER」になり得るのではないか、と私は考えている。

思い返せば1stアルバム「REGALITY」での「立ち止まり」は、4曲目の「願いはShine On The Sea」であり、10曲目の「In the meantime」であろう。しかしそれらはいずれも、「自発的な立ち止まり」ではないと思うのだ。2ndの場合はどうだろうか。そのあたりも考えてみたい。


2.「Crescent rise」―沈んだ月が再び上がる

タイトルの通りといえばそれまでであるが…
まず、ミュージカル「Crescent rise」のストーリーをおさらいしておこう。
楽曲MVと、今回の特典ドラマCDでわかった断片的なことで恐縮だが、、、(かなり内容をぼかすがご容赦願いたい)

①月舘(八乙女楽)側に原因があるとある人物の死
②月舘(八乙女楽)側に対する復讐
③月舘(八乙女楽)側が②に対して復讐+重大な「何か」を知る
④重大な「何か」に照準を切り替え、「終わりの始まりだ」

このストーリーの中でキーワードになってくるのは、「正義」ということになる。
TRIGGERが演じる3名は、「正義」を貫くために戦い、傷つくのである。
たとえそれが、無駄なあがきでも、無惨に果てる最期に向かうほの暗い道のりだとしても。

さて、TRIGGERにとってこのミュージカル作品とはどんな位置づけだっただろうか。
記者会見の前に天は以下のように言っている。

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「蘇ったボクらの姿を見せられたら、ツクモの銃弾に撃たれることだって怖くなくなる」

つまり、このミュージカルで完全復活した姿を公に見せることで、彼らが3部の試練の間もなお貫いてきた「正義」が証明できるということではないのか。
その「正義」のために、戦おう、強くあろう、3人でひとつになろう、限界点を超えようというのだ。

「Crescent rise」とTRIGGERはそういう意味ではかなりシンクロしている

だからこそ怖いのは、「Crescent rise」の結末が、少なくともヨミ(天)と牙山(龍)は死ぬ設定だということだ。月舘だって危ない。それをリメイクで生存ルートにもっていくのかもしれないが、それだって傷は免れない。

「正義」を貫くことに固執するあまり、またTRIGGERには試練が待っているのではないか…という嫌な予感が胸をよぎる。


3.「バラツユ」―醒めてしまった夢

ここまでの楽曲を聴く限り、TRIGGERは生まれ変わり、パワフルにエネルギッシュに、戦闘力マックス切れ味最高の状態で、再びファンたちに夢を見せ、虹に向かって一直線…!であるかのように見える。

その勢いにすこしブレーキがかかるのが、TRIGGER全員歌唱としては初(だと思う)の本格的バラードである「バラツユ」である。
ここに私は「Crescent rise」に残された結末の不穏さを見たいと思うのだ。

この楽曲の歌詞は様々な解釈ができるため、本当に、にわかファンの妄言だと思っていただきたいのだが、私なりの解釈を示して置くことにする。

いくつかのフレーズに注目したい。

「その棘さえ誇りに思っていた」
「傷つけていく」
「遠のいていく 幸せのイメージ」
「夢でならば何度だって伝えてやれる」
「朝が来て どうして薔薇は(君は)泣いてる」


「朝が来て」泣いているということは、少なくともこの楽曲は「夜の間」に価値を見出していることになる。「星が眠れば胸がきしむ」とも言っている。
ではなぜ「夜」がいいのか。

「夢でなら愛を伝えてやれる」

からである。
でもそれができないから、「幸せ/永遠のイメージ」が遠のき、「アンリアル」が崩れるというのだ。
つまりはそれが、「薔薇」と「君」が「泣いている」理由だろう。薔薇にかかったツユは、薔薇の涙でもあり、君の涙でもある。


ここで振り返りたいのは、彼らの代表曲である「SECRET NIGHT」である。

「行こうwakemeup!醒めない夢を一緒に どこまでも」

夢の中で目覚めるということである…
そしてそこでは、「甘い記憶」をあげる。「恋に落ちる」「ひとつになっていく」

バラツユでは「もうできない」とされたことばかりである。


つまり、TRIGGERが、彼らの出会いから見てきた夢は、ここにきて一度「醒めて」しまったことになるのではないか。

もっと具体的に言えば、せっかく「蘇った」のに、「え…こんなのTRIGGER
じゃない!ひどい!」というファンが出てきてしまったりしたのではないか。

いつだったか、カオルも言っていたではないか。「人は不確かなものは好きにならない、確かなものを好きになって安心を得たい」と。
天だって言っていたではないか。いつものレストランで、今日だけまずいオムライスがでてきたらがっかりすると。

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TRIGGERの3人にとっては前向きな変化であっても、それをすべて肯定的に受け入れられるファンばかりではない。求めていたTRIGGERがもうそこにはいないのだと、嘆き、夢から醒めてしまうファンは少なからずいるだろう。


こういった事態が「Crescent rise」の後に起こるのではないかと思うのである。
ミュージカル自体は大成功、最高に価値あるものを見せられたという自負がTRIGGERにはある。なのに、もう一緒にTRIGGERに恋ができない、愛を伝えても、届かないファンが出てきてしまう


これはある意味、ツクモの銃弾を受けるようにも彼らにショックを与えるかもしれないと思うのだ。「俺たちが俺たちのイメージを壊したから…」と…過去を振り返り、「戻りたい」とさえ思うのかもしれない。
(これが5部のストーリー内で起こるかと思うと、今からもう泣きそうである)

だから「バラツユ」では
「いっそこのまま夢のはざまで ずっと醒めないで 揺蕩って」
と言っているのであろう。

TRIGGERに恋をしている、まだ醒めない夢を見たい、愛している。
でも、過去に戻ることはもうできない。
TRIGGERは新しい夢を歩みはじめている。

「バラツユ」は、いわば「3部以前のTRIGGER」と、それに恋して愛したファンへの「鎮魂歌」だと思うのである。

薔薇(≒かつてのTRIGGER)も、君(≒ファン)も、共に涙する。
それを浴びた薔薇は、朝を迎える。
星は見えないけれど、朝日は見える。そしてTRIGGERは、夜の夢から、昼間の虹を目指すと言うのだろう。
彼らの「変化」「再生」にあたり、過去を鎮魂することは、必要なことなのではないかと私は思っている。

※TRIGGER LIVE CROSS”VALIANT” 演出を見ての追記(7/6)
ライブ演出を見て、「薔薇≒かつてのTRIGGER」、という思いがさらに強まった。薔薇は薔薇でも、「大切に守られた鑑賞用の切り花」なのだと思った。
そのことは、3部で事務所を辞める直前の八乙女楽のセリフからも見える。

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「俺たちは最初から一等席を用意されてた。そのおかげで、これだけ成功が続いた」

なるほど、最高の環境で、最高の栄養を与えられ、最初から花開いて美しい彼らは、枯れないように、大切に大切に守られていたと…
それはつまり、「変わらない価値を保ち続けるアイドル」そのものであるように思う。やはりバラツユで歌われているのは、「かつてのTRIGGER」だと思って良いように思う。

thirdBEAT!エンディングテーマである「PLACES」にも、「願いはshine on the SEA」にもあるが、3部を通してTRIGGERは海底に、地上に、「落ちた」
これは、切り花の命が限界を迎えた、ということのようにも思えるが、私は違うと思う。

彼らは「根」を取り戻したのではないか。

そして、落ちた地上で根を張り、これまでとはまた異なる花を咲かせようとしているのである。

「変わらないために変わり続ける」―VARIANTの歌詞である。

「切り花」は「変わらないこと、枯れないこと」に価値を見出されるもの。
「変わること」に舵を切ったTRIGGERは、大地にしっかり根付いた花として、「たとえ変わっても枯れない」ことを目指す…と。

それこそが、第二楽章におけるTRIGGERの「醒めない夢」なのだろう。


4.「My Precious World」―正義よりも…

バラツユを語りすぎてしまった。
鎮魂歌の次に来るのは、またずいぶんと趣の異なる、突き抜ける青空を思わせるような楽曲である。
昨年のイベントストーリー「ダンスマカブル」の主題歌でもあるので、これもある意味劇中歌なのだが…それを抜きにしても、RPG的な雰囲気のある曲である。

「ダンスマカブル」のストーリーも、ごくごく簡単に確認しておこう。

「天子」という、メインストーリー世界のおける「アイドル」のような存在を、解放し、世界を変革させる…という感じである。TRIGGERの3名は、それぞれ別の立ち位置から、この世界を壊そう、守ろう、変えよう、と働きかける役柄であった。
ちなみに私はこのストーリーの前半を、「ゼロ」をとりまくアイナナメインストーリーの「前史」だと思って読んだ。(それだけに、後半はTRIGGERにとっては少々…かなり消化不良な部分が多く残念だった。)

歌詞にも一部注目してみよう。
「何が正義なんて 答えよりも 君のために そう 負けないさ」

ここでも「正義」である
ただし「Crescent rise」のいう「正義」とは少し捉え方が違う。

「正義」は貫けなくてもわからなくてもいいから、「君のために」「負けない」というのだ。

TRIGGER楽曲には頻繁に「君」が出てくるが、それは「ファン」を示していることが多いように思う。だとしたら、
TRIGGERの「正義」が何なのかわからなくても「正義」を貫けなくても、ファンのために「負けない」という方向に変化していることになる。

この「負けない」も重要ではないか。
どうもこの語感からは、「ブラホワで総合優勝して、王者になる!」というような野心や見えない。「No.1になるような勝利」にはもう、価値を見出していないような感じすらある。
これはこれまでのアイナナにはなかった、アイドルとしての新たな価値観である。

これもまた「蘇ったTRIGGER」が目指す、新しい夢の形なのかもしれない。
「正義」を貫いて命を落とした「Crescent rise」の3名とは異なる道。
それは、たとえ「正義」がわからなくても、3名で生き残る道である。

TRIGGERの「正義」は形を変えて―「VARIANT(変化)」―、
そして「VALIANT(勇敢)」に、
「王者」ではなく、あくまでも「騎士」として、自らの刃で切り開いた新たな道を歩いていくということなのではないか。


5.「Diamond fusion」―多面的な輝きへ

最後のほうはものすごくこじつけてしまった…申し訳ない。
個人的な願望がかなり入っている。申し訳ない。


これは私だけが感じたことかもしれないが、
「Crescent rise」~「バラツユ」~「My Precious World」
に見える、いわゆる「立ち止まり、振り返り」を経て、
ふたたび「Diamond fusion」の

「邪魔な壁など全部越えてしまえばいい」
「本当のきらめき」

という歌詞に改めて出会うことで、新生TRIGGERの印象が少し変わった。

なんとなく4部中盤からの彼らは、本当に刃のように、まっすぐに、よどみなく、突き進んでいる感じがした。その勢いに「よかった、TRIGGER頑張ってる…」と安堵した一方で、「このまま突っ走って大丈夫かな」という気もしていたのだ。

上記3曲のような「立ち止まり」が5部にあることで、一直線すぎた彼らが、すこし多面的になるといいなと思っている。
そもそも「Diamond」の輝きは、多面的に磨き上げるからこそ増すのである。
TRIGGERの3人がぴったり一致団結するのは、それはそれでいいと思うのだが、そうなったら「ぶつかりあって固く結ばれていく」ことがなくなるではないか。

2ndアルバム「VARIANT」は、
新生TRIGGERが多面的な輝きを見せてくれることを予感させる…そんな作品であると思うのである。

結局何が言いたいかというと、TRIGGERは最高にカッコいい、ということなのである。


長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!

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