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無機質に恋を歌う-2

「君は、口から恋を直接届けてくるみたいだ」

ざわざわとした店内、なんの因果か、僕は一人の女の子と向かい合って座り、互いにジョッキを傾けていた。
僕のジョッキにはいつものビール。
彼女はハイボールを、本当に口に入っているんだかわからないような速度で舐めるように摂取していた。

「は?」

彼女は怪訝そうに僕を見る。
それはそうだ、僕も、自分が何を言ったのかよくわかっていない。
酔いが回ってきたとい

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無機質に恋を歌う-1

「恋を歌う女の子がいるんだ」

そんな話を聞いたのはいつだっただろうか。
巷にはラブソングが溢れ、恋をテーマにした歌なんかいくらでもある。
テレビをつければ愛について語り、ラジオをつければ失恋した心が溢れ出す。
そんな現代において、恋を歌う女の子の話を聞かされたとしてその話を僕が聞き流したことを誰が責められよう。
少なくともその話を聞いてから半年は過ぎていたと思う。
それだけの時間が経ち、今までそ

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